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ベータマックス(βマックス、Betamax)は、ソニーが販売していた家庭向けビデオテープレコーダおよびその規格である。規格全体を指す名称としては、東芝や三洋電機などが参画した時点から「ベータフォーマット」や「ベータ規格」、「ベータ方式」を用いていた。Hi-Band ベータ(ハイバンドベータ)やEDベータ(Extented Definition Beta、ED Beta)もベータマックスの記録フォーマットの一種である。この項では規格および製品について詳述する。 == 概要 == VHSと共に本格的家庭用規格として大々的に販売されたカセット型ビデオテープレコーダ(VTR)規格である。1号機(SL-6300)は、1975年4月16日に発表され、同年5月10日に発売された。これ以前の家庭用VTR規格はいずれも本格的な普及を見なかったが、ベータマックスのヒットにより家庭用VTR市場が開拓され、その初期段階では相応のシェアを占めていた。しかし後の熾烈な販売競争でVTRの世帯普及率が高まる中ではシェアを拡大できず、2002年に規格主幹のソニーも生産を終了し、市場から姿を消した。ソニー製ベータマックスVTRは日本国内で累計約400万台(全世界で累計約1,800万台以上)が生産され、ビデオカセットはピーク時(1984年度)には年間約5000万巻が出荷されていた〔ソニーベータマックスVTRをご愛用のお客様へ 、ソニー、2002年8月27日〕〔ベータビデオカセットおよびマイクロMVカセットテープ出荷終了のお知らせ 、ソニー、2015年11月10日〕。 業界を二分したVHSとの激しい市場競争(ビデオ戦争)の中でBeta hi-fiでは音声FM記録による音質向上を図り、Hi-Band BetaではFMキャリアを高周波数化することによる解像度向上を図った。カメラ一体型VTR、メタルテープ使用の超高画質新規格であるEDベータ規格といった新技術をVHS陣営に先駆けて投入したが、どれも決定的な差別化とはならなかった。 ソニー自身が1988年にVHSビデオデッキの製造販売に参入して以降も新規機種の開発・生産・販売を継続していたが、2002年8月27日、構成部品の調達が困難になったこともあり生産終了を発表し、新品は市場から姿を消した〔。 ベータ規格の代名詞とも言える「ベータマックス」という名称はソニーの商標として登録されており〔「BETAMAX」は1974年9月6日出願、1979年11月30日登録(第1398683号)。〕、東芝、三洋電機、アイワ、日本電気ホームエレクトロニクス(NEC)、ゼネラル(現・富士通ゼネラル)、パイオニアなどが参入した時点でシステム全体の名称は「ベータ方式」「ベータフォーマット」などとされていた。自社で開発・製造を行っていたのはソニー・東芝・NEC・三洋電機・アイワの計5社で、他各社はOEM供給による販売となっていた。日本国外ではSearsやZenith、RadioShack、TATUNG(台湾の大同公司)、大宇電子といったメーカー・ブランドでもベータ方式に参入し販売されていた。ソニー以外の各社は1986年までにVHSの生産・販売に移行した。オーディオメーカーの日本マランツも三洋電機からのOEM供給により日本国外でベータフォーマットのデッキを販売した実績がある。 VHS規格と比較した特徴として、 * カセットが小さい。ソニーの社員手帳(文庫本)サイズ〔。 * テープとヘッドの相対速度が大きく、画質面で有利(VHSの5.8m/sに対し、βI:6.973 m/s、βII:6.993 m/s)。 * 初期の機種でも特殊再生が行えた。 * テープが常にヘッドドラムへ巻き付けられているフルローディング(Uローディング)が基本とされ、初期の機械でも動作が俊敏でリニアタイムカウンターが搭載できた。 * SL-HF300以降のソニー機種では解像感を高める映像チューニングを行っていた。 * 常用の標準画質録画(βIIとVHS標準モード)において、L-830テープで200分録画できた。 * 長年VHSの最長テープはT-160(標準モードで160分)だったため、βの数少ない、最末期に至るまで残されたアドバンテージのひとつだった。ソニー撤退から更に下り、VHS自身も終焉の見え始めた頃になってT-210が発売され、ようやく覆された。 * 長時間録画モード(βIIIとVHS3倍モード)では、録画時間ではVHSに分があった(βIIIの録画時間はβIIの1.5倍に過ぎない)が、画質では遥かに有利だった。VHSの3倍モードの画質は、1990年代に入って抜本的な改良を受けるまでは実用に耐えるレベルではなかったため、βのアドバンテージであった。 といった特徴を持つ。 性能的には優れたものだったが、VHSより部品点数が多く調整箇所も高い精度を要求される構造により、家電メーカーにとって家庭用ビデオの普及期に廉価機の投入が難しかったという欠点も持ち合わせていた。東芝や三洋電機からは思い切って機能を省いた廉価機も初期から発売されていたとはいえ、規格主幹のソニーが性能重視の姿勢で廉価機の開発が出遅れたこともあってシェアを伸ばせなかった。それゆえに「性能が優れているものが普及するとは限らない例」として、初期のレコードの例〔蓄音機が初めて開発されたときは筒状の記録媒体が使われていたが、量産が困難なために平面で円形のレコードになった。しかし、こうすることにより内側と外側で走行速度の差による音質、特に高音域再現性の差異が生じることになった。〕とともによく引き合いに出される。 しかし、ベータ方式を基にした放送業務用フォーマット機器・ベータカムは、20年以上に渡り業界標準(デファクトスタンダード)ともいえる存在となっており、デジタルベータカムやHDCAMなど再生互換性を持つ製品バリエーションを増やしながら、2015年現在も生産を続けている〔プロフェッショナル/業務用製品情報 HDCAM VTRラインアップ 、ソニービジネスソリューション〕。また、ベータ方式の録画用ビデオテープもソニーマーケティングが運営するソニーストアで注文可能である〔ベータビデオカセットの一覧 、ソニーストア〕。しかしこの録画用ビデオテープも2016年3月をもって出荷終了することがアナウンスされた〔。 2009年、「VHS方式VTRとの技術競争を通じて、世界の記録技術の進歩に大きく貢献した機種として重要である。」として、家庭用ベータ方式VTR1号機「SL-6300」が国立科学博物館の定めた重要科学技術史資料(未来技術遺産)として登録された〔ベータ方式VTR、デジタルカメラ試作機他、22件の重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)の登録と登録証授与式について 、国立科学博物館、2009年10月1日〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ベータマックス」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Betamax 」があります。 スポンサード リンク
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