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V.[ぶい]
『V.』(ブイ)は、トマス・ピンチョンによる処女長編小説。メタフィクション。1963年発表。フォークナー賞を受けるが、ピンチョンはマスコミを避けて遠くの山までバスで逃げだしたという。通常ポストモダン文学に分類されるものの、あらゆる分類を拒否するような複雑怪奇な物語はいかなる形容も困難である。 == 物語 == 物語には大きく分けて二つのパートが交互に出現する。 一つは現代(1955年 - 1956年)のニューヨークを舞台とした、元海軍兵の放浪者ベニー・プロフェインのアンチヒーロー物語である。彼は非人間的な「物」の一切と相容れることができず、また数多くの女性と関係を持つが常に女性の向こう側にみえる「物」性を恐れている。このパートは過去から未来へと進行する伝統的な小説形態を取り、また文体的にも特筆すべき部分はない。しかし物語に筋らしい筋はなく、コミック的に誇張され混沌とした現代風景がひたすら進行していく。 もう一つはハーバード・ステンシル(彼自身はプロフェインと同時制の人物)が収集した「Vの女」についての順不同の挿話群である。Vは歴史の影の存在として目されており、エジプト・カイロのヴィクトリア、極南の地ヴェイシュー、ヴェネズエラ人の暴動計画、「ヴィーナスの誕生」略奪事件、マルタ島のヴェロニカなど、Vのイニシャルを共通項とし「女性性」「破壊的な力」「人工世界の侵攻」などのイメージをまとって出現する。しかし読者が確定した事実と判断できるのは、父シドニー・ステンシルがVの女についての記述を手帳に残したというステンシル自身の語りと、父が死の直前にVの女と再会したという(ステンシルが入手していない)過去時制の物語だけであり、それ以外はステンシルが入手した情報に彼自身の想像・妄想が入り交じった真偽不明の断片に過ぎない。ただし、過去の物語との統合性から全ての情報が部分的には真実であることを示しており、単なる幻視の物語として受け流すことも許されない。このパートは文体的にも「スパイ小説」「告白小説」「ゴシック小説(「ソドム百二十日あるいは淫蕩学校」のパロディ)」など多様な技法を用いて記述されている。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「V.」の詳細全文を読む
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