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インキピット(ラテン語:Incipit)とは、詩歌や記録などで文書の冒頭の数語を指す言葉。書物の題名という概念が発達していなかった時代、ある書物をさすために冒頭の数語を用いてこれに変えるのが通例であった。これがインキピットである。インキピットとはラテン語で「ここに始まる」という意味で、書物の冒頭に出る慣用句であった。たとえば「Incipit carmen Virgilis arma virumque cano」という文書は「アルマ・ウィルムクェ・カノーで始まるウェルギリウスの詩」という意味である。 中世、文章中でインキピットにあたる部分は他と区別するため、異なった字体や色で書かれて強調された。 ==歴史== インキピットという言葉自体はラテン語だが、同様の習慣はその数千年前までさかのぼることができる。たとえばシュメール人の残した粘土板の中には文書の一覧表があるが、その中で文書の題名はすでに冒頭の数語で表されている。一覧表は書記たちの利用に供するために作られたと考えられているが、粘土板の大きさが限られていたことから、長い文書は書くことができず、結果的に冒頭の数語で特定の書物を表すことになった。中東古代史の研究者ラーナー(Frederick Andrew Lerner)は自著においてシュメール人の文書リストにおけるインキピットの例として以下のようなものをあげている。 *高貴な戦士たち *羊の所在 *野生の牛の所在 *われわれの都市においての *過ぎ去った日々の 旧約聖書の元々の書名もほとんどがインキピットである。たとえば『哀歌』はヘブライ語では「エイカー」と呼ばれるが、これは本文冒頭の「いかに」という言葉をそのままとったものである。旧約聖書がギリシア語に訳された時、初めて『哀しい歌』を表す「スレノイ」(Threnoi)という題名がつけられ、近代以降これに沿って各国語に訳された。 また、東洋では、『論語』の各篇の題名が冒頭の数文字(おもに2文字)を題名としている(ほかに『孫子』のように著者名を題名にする例もある)。一説に、当時の書物は木簡や竹簡を用いた大変かさばるものであったから、さらにかさを増やしてまで表題などを加えようとは考えなかったのだ、とされる。紙が普及しても、書法文化の興隆とともに、能筆家の手紙などが珍重されると、それらにも『喪乱帖』や『風信帖』のように冒頭の文字を題名にするインキピットの手法が使用された。 近代に入って図書館の制度が発達すると、本を題名によって分類する方法が一般化した。書物に特定の題名をつけず冒頭の数語でこれを呼ぶという慣習は印刷技術の発展で表紙にタイトルをつけることが一般化したことで廃れていった。冒頭の数語に関係なく、本に題名をつける習慣が広まり、国際標準書誌記述(ISBD)として確立したことでインキピットは完全に過去のものとなった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「インキピット」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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