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ブラック企業(ブラックきぎょう)またはブラック会社(ブラックがいしゃ)とは、広義としては暴力団などの反社会的団体との繋がりを持つなど違法行為を常態化させた会社を指し、狭義には新興産業において若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使いつぶし、次々と離職に追い込む成長大企業を指す〔「説明会や就活サイトより「ブラック企業」見抜けるアイテム」 〕。英語圏でのスウェットショップ()や中国語圏での血汗工場()の問題とはまた異なり、ブラック企業問題の被害の対象は主に正社員であったのだが、近年では非正規社員が被害者となるブラックバイトという派生語も登場している。対義語はホワイト企業。 将来設計が立たない賃金(貧困、ワーキングプア)で私生活が崩壊するような長時間労働を強い、なおかつ若者を「使い捨て」るところに「ブラック」といわれるゆえんがある〔今野晴貴『ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪』文春新書、2012年、187頁〕。 ブラック企業は突如として現れたのではなく、日本型雇用が変容する過程で台頭してきた〔2013年7月5日産経新聞記事「「ブラック企業」広まった背景は 社会問題に“成長”したスラング」 〕。従来の日本型雇用においては、単身赴任や長時間労働にみられる企業の強大な指揮命令が労働者に課される一方で、年功賃金や長期雇用、企業福祉が保障されてきた。しかし、ブラック企業では見かえりとしての長期雇用保障や手厚い企業福祉がないにもかかわらず指揮命令の強さが残っており〔2013年12月18日朝日新聞社説「ブラック企業 根絶のために行動を」 〕、それによって若者の使いつぶすような働かせ方が可能となっている。 つまり、「強大な鞭とそれに見合った大きな飴」だった日本の労働から「飴」だけがなくなってしまった状態がブラック企業ということである。 企業側が指揮命令をする際になんのルールも課されない状態、すなわち「労使関係の喪失状態」にある〔今野晴貴『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』星海社新書、2013年、207頁〕とする指摘がある。 == 概要 == 元々は、暴力団などの反社会的団体との繋がりを持ち、違法行為を繰り返す会社を指していたが、近年では労働基準法を無視、あるいは法の網や不備を悪用して従業員に長時間労働を強制する企業を主に指す。 1991年のバブル景気崩壊・失われた20年の始まり以降、企業の経営体制は「なるべく無駄を省く」として「コスト削減」に比重を置いてきた。そうしたことからブルーカラー・ホワイトカラーや正規雇用・非正規雇用を問わず、末端の従業員に過重な心身の負担や極端な長時間の労働など劣悪な労働環境での勤務を強いて改善しない企業を指すようになっている。すなわち、入社を勧められない企業、早期の転職が推奨されるような体質の企業がブラック企業と総称される。 (従業員の扱いや待遇の問題を別として)、事業所の周辺環境や地元への環境・経済面への配慮・貢献、消費者のニーズ・アフターケアに対する考慮が薄い企業や、サービスと質が劣悪である場合、債務超過の場合または産業構造の転換によって斜陽産業となり創造的破壊もなされずゾンビ企業化している場合、または悪徳商法をいとわない場合(詐欺、ボッタクリなど)にも使われることがある。 また、この言葉の元々の意味もあり、経営者の怠慢や不適切ないわゆる“黒い交際”によって反社会的勢力やそれに関連する人物の会社組織への侵入や干渉を許し、組織下層部の従業員に大きな精神的負担を強いている企業をブラック企業の範疇に含めることもあるため、少なくとも以下の要件が当てはまればブラック企業と総称される(2点以上あてはまる企業も存在しうる)。 * 企業および経営者の負うべき責任を明確にしていない場合(組織的に責任を免れようとする企業) * コンプライアンス(CSR)の精神が欠如した企業 * 従業員や公害病などの被害者(およびその親族)からの訴訟(損害賠償など)を免れようとする企業 * 末端の従業員(平社員、アルバイト、パート)および待遇を軽視している企業 * 消費者や地域への貢献度が低い企業(商品・サービスの質に劣る) 言葉の由来には求人広告業界の隠語や、パソコン通信時代のネットワークコミュニティからなど諸説ある。なお2008年には書籍『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』が出版され、翌2009年に映画化、2013年には「ブラック企業」が新語・流行語大賞を受賞し、NPO法人POSSE代表で一橋大学大学院生の今野晴貴が授賞式に出席した。 ブラック企業には、その業種に対する経験・知識が全くない者や、中卒・高校中退など学歴の低い者でも勤まるような労働集約型産業的な体質の企業が多く、そういう意味ではとにかく多くの人手を必要としているため、正規・非正規雇用のいずれにしても一般的な企業に比べて入社は比較的容易であり内定・採用も早い。だが、裏を返せば労働集約的な体質の企業においてそれは「代わりはいくらでも入ってくる」ということであり、末端の従業員とは(短期間での離職を前提とした)使い捨ての消耗品も同然の存在でしかなく、常に新人を募集し続けている。入社後には厳しいノルマや長時間労働、サービス残業などの一方的な企業利益を求められ、人のやりたがらない仕事・割に合わない仕事や理不尽な仕打ち、不可解な人事考課、手柄の横取り、低賃金などに苦しめられ、やがて肉体・精神ともに疲弊し破綻をきたし、最後には企業にとっては用済みの人材として自己都合退職に追い込まれる。平均勤続年数が短い上に短期間での離職率も高く、ハローワークや求人誌・求人サイト・新聞の求人広告/採用広告の“常連”と化し多額の広告費を人材募集に費やすなど、人員計画や従業員マネジメントがなおざりにされたいわゆる「人の出入りが激しい」企業体質であることを自ら露呈していることも多い。 従業員は非熟練者でもそれなりに務まる労働に従事させられるため、従業員教育のシステムは乏しく、社外でも通用する実用性の高い専門技能や資格を身に付けるシステムもほとんどなく、技術系であっても熟練労働者や専門家と呼ばれるには不相応な低水準のスキルしか身に付かない。そのような状況下で従業員は組織の下層でキャリアアップの機会も得られないまま長時間の激務や過大なノルマを強いられるだけになる。そのため、国家資格などの客観的な能力の証明よりも、転職回数の少なさと業務や熟練労働にまつわる職務履歴とその期間の長さが絶対視される日本社会・日本企業においては、ブラック企業とは就職・転職活動において大きな禁忌とされる「経歴を荒ませる」「履歴書を汚す」だけの存在であり、特に内情に通じる同一業界での転職活動ではブラック企業に勤務したという事実自体が採用選考で大きなマイナス要素として作用するなど、労働者にとってはその後の再就職活動においても総じて不利な状況に追い込まれる要因でしかない。また、激務や過重なストレスが主因となり健康や精神を害し後遺症が残るなど、労働者にとっては退職したとしてもその後の生涯にわたって影を落とすような問題も発生してくる。 このようにブラック企業はそれと知らず入ってきた人材の能力・技術・時間・心身を薄給で浪費させて次々と食い潰し、経歴を汚すことによってのみ成り立っている。バブル景気の頃に言われ流行語となった「3K」の概念は主に技能系やブルーカラーの肉体・環境的に厳しい労働を指したものであったが、末端の従業員全般を消耗品同然に扱い心身を毀損するブラック企業は現代の超3K職場とでもいうべきものである。 現在、外国人留学生、外国人労働者の受け入れ制度として1954年に創設された国費外国人留学生制度、1981年の外国人研修制度による在留資格創設、1989年日本の出入国管理法改正による日系ブラジル人就労者の受け入れ、1993年の 技能実習制度による在留資格創設、経済連携協定締結による介護士・看護師の受け入れで2008年にインドネシア、2009年にフィリピンから受け入れ開始などがあり。これらの制度を利用して来日した外国人がブラック企業で働く事例もある。 日本以外にもブラック企業は存在し、行政機関である労働基準監督署や労働組合、NPO法人などが対策に当たっている〔NHK ドキュメンタリーWAVE - “ブラック企業”と闘う 〜非正規雇用の労働者たち〜〕〔NHKドキュメンタリー - ドキュメンタリーWAVE▽“ブラック企業”と闘うアメリカ非正規雇用の労働者達 〕。 このようなブラック企業の体質や内情は社会問題・民事訴訟・労災申請・労働基準法違反・事件(侮辱罪・暴行罪・傷害罪・背任罪)などの形で表面化することもあるが、悪質な法令違反が露呈し経営者の逮捕などが起きない限り、社名やその実態が公に報道されることはほぼない。例えば、合理的理由のないリストラ、不当懲戒処分や名ばかり管理職、サービス残業強要、パワーハラスメント、偽装請負、過労死〔『ブラック企業の闇』〕、社会保険の保険料逃れ、派遣切り、不当労働行為、遺族による公害病・労災の認定を求める訴訟およびその責任を免れる行為などがある。 労働問題以外に企業統治や法令遵守、企業の社会的責任にまつわる諸問題が取り沙汰される場合もあり、一般的な企業と比べればコンプライアンス全般について著しく軽視する傾向がある。また、現在ではコンプライアンス違反の発覚が発端となり最終的に企業が経営危機や破綻にまで追い込まれるケースが増えており〔東京商工リサーチ、2011年度「コンプライアンス違反」企業の倒産動向を発表 日経プレスリリース 2012年4月9日〕、ブラック企業においては、マスコミ媒体への広告や製品サンプルの提供などの手段で企業が露呈を食い止めていた企業体質や労働環境の問題が、コンプライアンス違反の発覚をきっかけに一気に世間へと噴出し、経営そのものが不安定になり、最終的に倒産までには至らなくても売上減による人員整理など従業員の雇用に悪影響を与えるケースも少なくない。また、企業間競争に打ち勝つため、現場社員の人間力に頼る施策に勝る経営手法が乏しい環境の中で、法規制等により問題化する長時間労働という課題を乗り越えようとする際に起きる結果論もある。その上、企業にまつわるクレーマーの存在がブラック企業を助長させているという側面を持ち合わせている。 とはいえ、ブラック企業であると名指しされるだけで倒産や経営危機に追い込まれるケースはほとんどない。エシカルの観点から不買運動、ボイコットが起こる事もあるが、ブラック企業の多さや情報の非対称性の問題もある。特に大企業の場合は、違法な形で人件費を節約する代わりに低価格で消費者にサービスを提供し、そのニーズに応えることができている企業であるケースが多い。他面、ブラック企業であるとする風評が人員の確保に悪影響を及ぼすことはあるが、熟練者を確保する必要性がない業界の場合、生活保護受給者など「ブラック企業であろうと就職することがやむを得ない」状態になっている者を確保すればよいため、悪影響も軽微である。従って、ブラック企業を市場によって淘汰することは困難であるし、またブラック企業がブラック状態を止めることも、(同業他社のブラック企業が淘汰されず上記のような「消費者にとっては」いい企業であった場合)消費者離れを招くためできない、という現象が起こってくる。 市場による淘汰が困難である以上、ブラック企業に対する対処としては労働基準監督署などによる、公的な介入が不可欠であり、一部の違法行為に対しては犯罪として刑罰をもって臨むことも法制度上は可能である。ところが、労働基準監督署も慢性的な人手不足などの理由から介入には及び腰であり、またハローワークでも、こうしたブラック企業の求人でも受理されている。このように、ブラック企業への公的な統制が十分に働いているとは言い難いのが実情である。 悪影響は家庭にまで及ぶ。過重なストレスは夫婦間の不仲や家庭内暴力、離婚の一因となり、そのような環境は子供の人格に悪影響を及ぼし、子供の非行や無気力化(不登校や学力低下など)、最悪の場合犯罪の要因となり得る。これらは世代を経ても同じことが繰り返される可能性が高く、そしてそれは同時にブラック企業が淘汰されず存続し続けることも意味する。 ブラック企業は基本的に日本の企業・経営者が慢性的に抱える体質・慣習に根ざした問題であるが、風説・通説に基づいたレッテル貼りという一面も全否定はできず、「会社を解雇になった人間や就職活動で採用されず会社で働いたことすらない人間が腹いせに流布しているだけに過ぎない」という批判も存在する。しかし、従業員や就職希望者にとってのブラック企業の存在とは単に自身の経歴や履歴書の評価を貶める脅威のみならず、健康や人生設計、そして最悪生命までをも破壊されかねない大きなリスク要因であり、例え不景気のような悪環境下であってもそのような企業への就職を避けようとインターネットなどでは活発な議論・情報交換は広範に行われており、その中で情報は分析され、「腹いせ」や「出まかせ」で書き込まれた情報は一律に偽物とみなされる。〔。したがって、「会社を解雇になった人間や就職活動で採用されず会社で働いたことすらない人間が腹いせに流布しているだけに過ぎない」という批判がそのまま対抗言論として成り立っているとは言いがたい。 人数が少ない中小企業は情報自体が出てこない、労働基準監督署が指導を行ったことや裁判で労災認定判決が出たことといった、客観的な法令違反など問題行為が外部に漏れることはほとんどないため、対策を取れないのが現状である。 また、退職後も退職の経緯が「自己都合」と「会社都合」退職に比べれば、失業保険が給付されない(またはごく少額しかない)といった問題が発生する。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ブラック企業」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Sweatshop 」があります。 スポンサード リンク
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