|
thrombotest ===========================
トロンボテスト(英:thrombotest)とは、血液検体の凝固因子活性を総合的に測定する検査薬のひとつである。凝固第II因子、第VII因子および第X因子を含めた外因系凝固活性に相関し、凝固系の外因系を総合的に評価できる検査薬である。ワルファリンという抗凝固薬の服用中の薬効評価(モニタリング)に用いられ、検査値としては凝固活性(%)あるいはINR(International Normarized Ratio:国際感度指標)が用いられる。ワルファリンのモニタリングにはスクリーニング用途として利用されているPT試薬も用いられるが、検査上の測定原理と測定精度の信頼性の側面から、トロンボテスト(TT)の方がワルファリンの出血リスクあるいは治療効果の実態を正確に反映することができる凝固検査法である。なお、北米や論文においては、PT-INRというプロトロンビン時間(PT)による表記法のひとつの単位が用いられているが、トロンボテストにおいてもINR表記法は適用され、北欧(スカンジナビア地方)、ノルウェイ、スウェーデン、フィンランド、ベネルクス三国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)やデンマーク、ロシアの一部、オーストリアと北イタリア、日本で普及しているワルファリン抗凝固薬剤のモニタリングに適した凝固検査試薬である。 なお、トロンボテスト(欧州では、Owren PT法として普及している。北米はPTのみ。)は、PT検査の欠点を補った改良された定量性の高い血液凝固検査法である。 しかしながら、イギリスのPollerらにより、非常に検査法としての特異性に乏しく、検査結果のバラツキや誤報告が多いことが問題となっていた安価な Quick-PT 法に焦点を置き、論文による臨床エビデンスの蓄積で普及が広まった。結果として、PTによる検査も日本へも導入されているのが実態である。当初、欧州から日本に導入されてきたトロンボテストはWHOが推奨するトロンボプラスチン製剤の1つであり、当然、INR単位を適用できる定量性の高い凝固検査である。 ※下記の参考文献に欧州でのOwren PT (TT) 法の概要を記載する。 PT-INRは、プロトロンビン時間測定(PT)で検査された場合のINRという検査結果である。プロトロンビン(第Ⅱ因子)を測定するという意味に捉えられるが、Quick一段法(1935年)が開発された当時は、凝固第I因子、第Ⅱ因子、そして第Ⅲ因子の存在しか知られていなかったため、PT測定という呼び名が今日でも残っている。なお、PT測定はプロトロンビン(第Ⅱ因子)だけではなく、第Ⅶ因子、第X因子、そして、ワルファリン投与によって影響を受けない第V因子とフィブリノゲン(第I因子)までを測定する、いわば外因系凝固スクリーニング検査法である。一方、後述するようにトロンボテスト(TT)は、ワルファリンによって影響を受けるビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、X)だけを特異的に検査値として反映することができるPT測定より特異性の高い検査であり、PT検査の欠点を補った改良された定量性の高い血液凝固検査法である。 (引用)家庭の医学(第13版)時事通信社 細田瑳一ら監修 * 家庭の医学(第13版)時事通信社 トロンボテストは以下の臨床検査の実施料(日本)となる。スクリーニング検査であるPTよりも保険点数が高く、ワルファリンのモニタリングにおける測定精度と信頼性が高い検査である。 しかし、ワーファリン錠剤(0.5mg、1mg、5mg)の包装を間違うと、2008年8月に発生したような出血事故につながる。きちんと、トロンボテスト(INR)で患者が見落とし無く投与してワーファリンの抗凝固の効果と出血リスクをモニタリングする必要がある。 □ トロンボテストの検査項目名および実施料: ・複合凝固因子検査: 保険点数18点 (2010年度・薬価改定より適用) 出血・凝固検査 区分D006 7 ※ワルファリンのモニタリング(ビタミンK依存性タンパク質:Ⅱ、Ⅶ、X)に特異性が高く、下記のプロトロンビン時間測定(PT)欠点を補って改良された定量性の高い検査法である。 (引用) 「家庭の医学」(時事通信社) 細田瑳一ら監修より (参考) □ PTの検査項目名および実施料: ・プロトロンビン時間測定 保険点数18点 (2010年度・薬価改定より適用) 出血・凝固検査 区分D006 1 == 検査法の歴史 == 診断薬の開発の歴史においては、1959年ポール・オーレン(Paul Owren:ノルウェイ)により開発された。 INRにおける診断法においては、国際血栓止血学会の科学標準化委員会におけるトロンボプラスチン製剤の標準化により、動物あるいはヒト由来原材料を利用したPT測定のINR表記が普及してきている。PT測定による単位としてのINR表記であり、PT-INR測定法という診断法ではないことに留意すべきである。 日本、北欧やオーストリアなどの欧州では、トロンボテストによるワルファリンのモニタリングが検査法として利用されている。近年、Owren-Type PT 試薬として一般的に普及している。その理由は、ワルファリンをモニタリングする検査薬の測定精度という観点で、トロンボテストの方がPT測定法よりも、ワルファリン投与によって生ずるビタミンK依存性凝固タンパク質(第Ⅱ因子、第Ⅶ因子、第X因子)を正確に測定できるというアッセイ原理になっているからである。Quick一段法とも呼ばれているPT測定は、第Ⅱ因子、第Ⅶ因子、第X因子だけではなく、フィブリノゲン(第I因子)および第V因子の影響を含めた凝固活性としてINRに影響を及ぼすことを考慮する必要がある。 INRとTT(%)の関係は一般的に以下となる。 INR 1.0 = TT 100% INR 2.0 = TT 17% INR 3.0 = TT 9% 。 ※下記の参考文献に欧州でのOwren PT (TT) 法の概要を記載する。 ワルファリンを投与するとビタミンKサイクルにおいて、Glaドメインを欠いたビタミンK依存性血液凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、X、PC、PS、PZなど)が不活性化されて、PIVKA を生じる。古くから、1970年代にはDensonやHemkerらにより、組織因子(TF)の種差(ヒト、ウサギ、ウシなど)の影響により、PIVKAに対する感受性 あるいは PIVKAによる阻止反応、あるいはPIVKAを含んで測定される、という理解があった。しかしながら、1980年代に始まった、WHOによる国際標準化においては、このPIVKAの存在によるIRP(International Reference Preparation)の違いやISI値への影響は、全く言及されていないことに着目しなければならない。したがって、今日のPTおよびTT測定においては、PIVKAの存在によりINRへの影響が無いという理論を前提にISI/INRシステムが成り立っている。 被検者のクエン酸加ナトリウム全血あるいは血漿を採取する。近年では血漿を検体に用いる事が一般的である。血漿(30μL)を試験管に採取し、予め37℃加温されたトロンボテスト試薬(250μL)を添加して凝固するまでの時間を測定する。トロンボテスト試薬の成分は、ウシ大脳由来の組織因子(英名:Tissue Factor)、ウシ吸着血漿およびカルシウムからなる生物製剤である。近年、遺伝子組換え技術による遺伝子組換えウシ組織因子を用いる事により、BSE(狂牛病)のリスクが回避できる凝固検査薬が開発されており、今後も動物由来原料に依存せず、均質かつ安定的な凝固検査試薬が継続的に供給される時代になってきた。 <プレスリリース> <日経バイオ> 上述したISI/INRシステムの歴史およびトロンボプラスチン製剤の混乱と標準化の経緯は参考文献を参照してください。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「トロンボテスト」の詳細全文を読む スポンサード リンク
|