|
Barr body =========================== ・ ー : [ちょうおん] (n) long vowel mark (usually only used in katakana)
X染色体の不活性化(エックスせんしょくたいのふかっせいか、英語:X-inactivation)とは哺乳類の性染色体であるX染色体が、1本を除いて、残りのX染色体で遺伝子発現が抑制される構造に変化することをいう。この現象はライオニゼーション(lyonization)とも呼ばれ、不活性化された染色体をバー小体(バーしょうたい、英語:Barr body)ともいう。 X染色体の不活性化は、X染色体のほぼ全領域(例外は擬似常染色体領域)がヘテロクロマチン構造をとることで起きる。この不活性化は遺伝子量補償のために起きると考えられている。つまり、雄では1本しかないX染色体で生存に必要な遺伝子を発現させているが、雌では2本のX染色体からの過剰な量の遺伝子の発現を避けるために片方のX染色体を不活性化している〔XY型またはXO型の性決定機構を持つ生物の遺伝子量補償については、「X染色体の不活性化」以外の方式をとる場合もある。詳細は遺伝子量補償または「」を参照。〕。どちらのX染色体が不活性化されるかはマウスやヒトのような真獣下綱動物においては無作為に決まるが、いったん不活性化が起こるとそのX染色体の不活性化状態は変化しない。これに対して有袋類においては父親由来のX染色体が選択的に不活性化される〔デイヴィッド・ベインブリッジ『X染色体:男と女を決めるもの』196-197ページ。〕。 真獣下綱動物の雌では胚発生時に各細胞で不活性化されるX染色体が決定され、それぞれの子孫となる細胞にもその不活性化状態が引き継がれる。そのため、X染色体上の遺伝子座の遺伝子型がヘテロ接合型の場合、細胞によって異なった対立遺伝子が発現するモザイク状態となる。三毛猫は、この状態の代表例として知られている。 また、X染色体に座乗し伴性遺伝をする遺伝子疾患は、ヘテロ接合型の雌()では疾患遺伝子が不活性化されていない細胞で発症している場合があり、モザイクの分布に依存して軽症から重症まで様々となる。同じ理由で、真獣下綱動物の雌のクローン(一卵性双生児など)は先天的な遺伝子型は一致するが、器官各部で発現する対立遺伝子が異なる場合があり、完全に同じ発育をするとは限らない(遺伝子疾患の病状が異なる一卵性双生児の女性の例も存在する〔『X染色体:男と女を決めるもの』202-210ページ。原著論文は。〕)。一方、X染色体不活性化が起きない真獣下綱動物の雄、もしくは父方X染色体が不活性化される有袋類の雌などでは、クローン間でのこのような違いは生じない。 == 歴史 == ドイツの生物学者ヘルマン・ヘンキングが、細胞分裂のときに他の染色体とは異なり相同染色体とのペアを作らない特殊な染色体をカメムシ(ホシカメムシ)の精巣細胞で見つけたのは、1890年であった〔『X染色体:男と女を決めるもの』12-15ページ。原著論文は Henking, H(1891). ''L. Zeit. Wiss. Zool.'' 51.〕。彼はこの染色体をXと命名したに過ぎなかったが、染色体研究が進展した1900年代に、この染色体が雌雄で存在する数が異なる性染色体であることが判明した〔『X染色体:男と女を決めるもの』21-28ページ。原著論文は McLung CE(1902) ''Biological Bulletin'' 3: 43; McLung CE(1901) ''Anatomischer Anzeinger'' 20: 220; Steven NM(1905). ''Journal of Experimental Zoology'' 2: 371; Wilson EB(1905). ''Science'' 22: 500.〕。 ホシカメムシは、雌が2本のX染色体(XX)を持ち、雄には1本のX染色体(XO)しかないXO型の性決定機構を持つ昆虫であった。類似の性決定機構は哺乳類でも観察され、それに関わる染色体は昆虫と同様にX染色体と呼ばれるようになった。性染色体による性決定機構には、XO型の他にXY型・ZW型・ZO型などがあり、哺乳類はほとんどがXY型に属している〔ネズミ上科には、XO型の性決定機構を持つ動物が含まれる。その例としてハタネズミ亜科モグラレミングの一部がある(『X染色体:男と女を決めるもの』80-83ページ)。〕。 1949年にカナダの神経生物学者マレー・バーは、ネコの神経細胞において細胞分裂を起こしていない細胞核中に濃く染まる構造物を見つけた。彼は、細胞当たり各1個含まれているこの構造物が雌特異的であることから、これを「性染色質(sex chromatin)」と命名した。この「性染色質」は一般に「バー小体」と呼ばれることとなり、性別の判定検査で利用されるようになった〔『X染色体:男と女を決めるもの』182-185ページ。〕。 1959年に大野乾は哺乳類の雌の2つのX染色体が、1つは常染色体のように見え、他方は凝集してヘテロクロマチン状に見えることを示し、1960年にはバー小体が雌の2本のX染色体のうちの片方であることを示した〔『X染色体:男と女を決めるもの』185ページ。原著論文は〕。この発見を受けて、1961年にイギリスのメアリー・ライアンは、X染色体がバー小体に構造変化すること(=不活性化)について仮説を提唱した。それはバー小体が存在する理由と、X染色体がバー小体に変化することの影響に関して説明を試みるものであり、毛皮がまだら模様となる哺乳類(マウス)の雌の説明も含まれていた。この仮説では、胚発生の初期に2本のX染色体の片方が無作為にバー小体化(不活性化)され、その後その胚はX染色体に関してモザイク状のまま発育するとするものであった〔『X染色体:男と女を決めるもの』185-188ページ。〕。ライアンの仮説は、雌の細胞のX染色体の1本が非常に凝集しているという発見と、X染色体が1本だけのマウスが生殖能力を持つ雌に発育することを、考慮に入れていた。この仮説は三毛猫を使った実験で正しいことが立証された。 グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損についてヘテロ接合型女性の研究を行っていた Ernest Beutlerも独立に、ヘテロ接合型女性には欠損型と正常型の両方の赤血球があることを報告した。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「X染色体の不活性化」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 X-inactivation 」があります。
=========================== 「 バー小体 」を含む部分一致用語の検索リンク( 2 件 ) Xクロマチン(バー小体) バー小体 スポンサード リンク
|