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ベンゾジアゼピン(benzodiazepine、時に口語的にベンゾ)は、縮合したベンゼン環とジアゼピン環が中心となる化学構造をもつ、向精神薬である。よくBZDと略記される。初のこうした薬であるクロルジアゼポキシドは、1955年にレオ・スターンバックにより偶然発見され、1960年にホフマン・ラ・ロシュにより作り変えられたジアゼパムもまた1963年以来販売されている。 同種の効用を持つ以前の医薬品は、バルビツール酸系薬や非バルビツール酸系薬であり、1960年代にはベンゾジアゼピン系のクロルジアゼポキシド(日本ではコントールやバランスとして知られる)が登場し、以前の薬剤の危険性から置き換えられて用いられる様になった。以上3種の薬剤は、1950年代~1960年代にかけてトランキライザー(精神安定剤)として市販され、乱用および自殺に用いられた経緯があり、現在では1971年の国際条約である向精神薬に関する条約において、乱用の懸念のため国際的に厳重な管理下にあり処方は医師によってのみ行われる。各国は条約に批准するため、多くのベンゾジアゼピン系薬は日本の麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)における第三種向精神薬に指定され、また別個で、時に麻薬取締法と重複して日本の薬事法における習慣性医薬品に指定されているものがある。後に催眠用途では、非ベンゾジアゼピン系が登場している。不安障害においても第一選択はSSRI系抗うつ薬であり、ベンゾジアゼピン系薬の位置づけは低下している。 ベンゾジアゼピンは、GABAA受容体における神経伝達物質のγ-アミノ酪酸(GABA)の作用を強め、鎮静、催眠 ()、抗不安、陶酔、抗けいれん、筋弛緩の特性がある。また、多くの短時間型ベンゾジアゼピンの高用量における応用薬理として、健忘-解離作用がある。〔これらの特性は、不安、不眠症、、発作、 けいれん、の治療や、医療的あるいは歯科的処置のに役立っている。〔ベンゾジアゼピンは、短時間型、中間型、長時間型の作用に分類される。短時間と中間型作用のベンゾジアゼピンは不眠症の治療に望ましい。長時間型のベンゾジアゼピンは、不安の治療のために推奨されている。〔 一般に短期間での使用は安全で有効であるが、時に認知障害と攻撃性や行動脱抑制のような奇異反応が生じる〔。少数では、通常予想されるのとは反対の反応を示す。例えば、パニックの状態が、ベンゾジアゼピンを服用することでかなり悪化する場合がある。〔長期間の使用は、有害な精神的、身体的影響に関する懸念のため議論がある。ベンゾジアゼピン系には耐性、身体依存、また長期間の使用の後に断薬した場合に離脱症状を生じさせる傾向があるために、有効性に対する疑問が増加している〔〔。ベンゾジアゼピン系の長期間の使用に伴う有害作用のため、ベンゾジアゼピンからの離脱により、改善された身体や精神の健康につながることがよくある。〔〔高齢者では、短期間また長期間の薬物有害反応に苦しむリスクが高く〔〔、認知症のリスクの約50%の増加にも結びついている。さらに離脱症状が生じることが繰り返されれば、次第にキンドリング現象により、離脱時の不安感の増加や発作の閾値が低下するなど離脱症状が重篤化していく。ベンゾジアゼピン系薬(またバルビツール酸系、アルコール)の離脱症状は、振戦せん妄(DT)により致命的となる可能性があるため、振戦せん妄の兆候の診断が必要である。 妊娠中のベンゾジアゼピン系の使用には、安全性についての懸念のため議論がある。催奇性は大きくないが、少数の乳児において口唇口蓋裂の原因になるかや、胎児期の曝露の結果として神経行動学的影響が発生するかどうかは不明である。また、の原因になることが知られている。ベンゾジアゼピンは、過量服薬によって危険な昏睡の原因になる。しかし、以前のバルビツール酸系よりもはるかに毒性が低く、単独で服用された場合の死亡は稀である。アルコールやオピエートのような他の中枢神経系の抑制剤と併用された場合には、毒性と致命的な過量服薬は増加する。ベンゾジアゼピン系は、他の乱用薬物との併用で摂取されていることも一般的である。さらに、すべてのベンゾジアゼピン系はビアーズ基準〔高齢者に望ましくない医薬品一覧〕に含まれており、臨床業務において重要である。 == 医療用途 == ベンゾジアゼピンは、鎮静、催眠、抗不安、抗てんかん、筋弛緩、健忘作用を有し、アルコール依存症、発作、不安、パニック、興奮、また不眠症のような様々な適応がある。一般的に経口投与される。しかしまた点滴、筋肉注射、直腸からの形で投与される。 一般的に、ベンゾジアゼピン系は、幅広い症状に対して短期間において、忍容性が良好で安全で有効な薬剤である。それらの作用に対して耐性が形成され、依存症のリスクもあり、断薬により離脱症状が生じることがある。精神運動、認知、あるいは記憶障害のような、長期的に使用した場合に起こりうる他の作用と相まったこれらの要因は、長期的な使用の妥当性を制限する。長期的な使用による影響や乱用は、、うつ病や、不安を引き起こしたり、悪化させる傾向がある。乱用リスクがあるため、よく知らない外来患者に処方すべきではない〔。 アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ベンゾジアゼピンを長期間の使用に対しては承認しておらず、特定の条件で短期間にのみ適応がある〔〔。ロシュ社では、同社の製品であるバリウム(ジアゼパム)の添付文章にて、ベンゾジアゼピンを精神病の治療に推奨していない。ベンゾジアゼピンは自殺の可能性があるため、不安の治療に単独で使用してはならないとしている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ベンゾジアゼピン」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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