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ヴリトラ(, Vritra)は、『リグ・ヴェーダ』などで伝えられる巨大な蛇の怪物。その名は「障害」、もしくは「宇宙を塞ぐ者」を意味する。インド神話のアスラのひとり。一説ではインダス人の神であったとも言われる。 旱魃を起こす怪物。カシュヤパが神に対抗できる生き物を授かるために儀式を行い、その結果、炎の中から誕生したのがヴリトラである。 神々や人間を含む全ての生物を憎む彼は、その巨大な体で天から流れる川の水を塞き止め、地上の7つの川を占領し、太陽を暗黒に包んで地上を飢饉におとしいれ、さらに雨を呼ぶ「雲の牛」を捕らえて旱魃を起こし、地上の人間達を苦しめた。 彼はインドラ神を倒すために生まれ、インドラの目前で巨大な蛇に変身して戦う。インドラは1度ヴリトラに飲み込まれてしまうが、インドラは諸天の助けで、ヴリトラがあくびをしたところで逃げ出してくる。そこでヴィシュヌ神の仲介により、和平条約が結ばれた。この時ヴリトラは「木、石、鉄、乾いた物、湿った物のいずれによっても傷つかず、インドラは昼も夜も自分を攻めることができない」という条件を勝ち取った。インドラはこの蛇を倒すため木、石、鉄、乾いた物、湿った物のいずれでもない聖仙・ダディーチャの骨からヴァジュラ(金剛杵)という武器を作り、それを使って昼でも夜でもない夕暮れ時に唯一の弱点である口を攻撃し、ヴリトラを撃退した。 この功績により、インドラはヴリトラハン(ヴリトラ殺し)の異名をもつ〔ヴリトラハンは、イランの勝利の神ウルスラグナに対応するから、武勇神インドラの崇拝はインド・イラン共同時代に遡る。上村勝彦(2003)『インド神話 マハーバーラタの神々』19頁。〕。 ヴリトラが倒されると、宇宙の塞がれていた穴が開いて、さらに雲の牛が奪還された事によって地に大雨が降り注いだという。 しかしその後もヴリトラは毎年甦るので、この戦いも毎年行われ続けている。この戦いは自然現象を神格化したものとされ、乾季(インドでは10月~3月)の象徴がヴリトラであり、それを倒すインドラは雨季(同6月~9月)の象徴である。 雨季は雨や雷や雷雨を伴うので、インドラは雨や雷の象徴でもあり、それらを司る天候神・雷神である。 叙事詩『マハーバーラタ』では漆黒の肌と黄色い目、白い牙を持ち、手に剣を持った人型の神とされ、ここでもインドラに殺されている。 ==脚注== 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ヴリトラ」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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