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低酸素誘導因子(ていさんそゆうどういんし、英:Hypoxia Inducible Factor、HIF)とは細胞に対する酸素供給が不足状態に陥った際に誘導されてくるタンパク質であり、転写因子として機能する。癌の病巣においては栄養不足や細胞外pHの低下、血流不足による酸素供給不足(低酸素)状態が認められるが、癌細胞が生き延びるためには新たに血管網を形成することにより病巣への血流を増加し、低酸素状態を脱する必要がある(血流の増加は転移経路の確保にもつながっている)。そのための機能を担うべく低酸素条件下おいて誘導される転写因子がHIFであり、種々の遺伝子の転写を亢進させる。HIF-αにはHIF-1α、HIF-2α、HIF-3αが存在するが、これらはいずれも細胞内に構成的に発現しているHIF-1βとヘテロ二量体と結合する能力を持つ。HIF-1αは正常酸素圧下でも産生はされるがタンパク質分解酵素複合体である26Sプロテアソームにより分解されてしまうため機能しない。 == HIF-1 == HIF-1αは通常の酸素圧下において細胞内発現量が減少するが、HIF-1αタンパク質自体の産生量が低下しているわけではなくユビキチン-プロテアソーム系を介したタンパク質分解によりその機能が負に制御されており、その分解過程にはユビキチンリガーゼ(タンパク質のユビキチン化の一端を担う酵素)複合体の基質認識サブユニットとして機能するフォンヒッペル・リンダウ遺伝子産物(pVHL)が関与している〔Iwai K, Yamanaka K, Kamura T, Minato N, Conaway RC, Conaway JW, Klausner RD and Pause A.(1999)"Identification of the von Hippel-lindau tumor-suppressor protein as part of an active E3 ubiquitin ligase complex."''Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.'' 96,12436-41. PMID 10535940〕〔Lisztwan J, Imbert G, Wirbelauer C, Gstaiger M and Krek W.(1999)"The von Hippel-Lindau tumor suppressor protein is a component of an E3 ubiquitin-protein ligase activity."''Genes Dev.'' 13,1822-33. PMID 10421634〕。pVHLによるタンパク質の認識にはヒドロキシル化が関与しているが、HIF-1αはPHDドメインを保有する酵素によってアミノ基末端側から402番目および564番目のプロリン(Pro)残基がヒドロキシル化を受け、これらのアミノ酸残基はHIF-2αにおいても保存されている。しかしPHDの活性は酸素濃度に依存するため、低酸素状態においてはプロテアソーム依存的なHIFの分解は生じにくく、正常酸素圧下で盛んに行われる。分解を免れたHIF-1αは核内へ移行した後にHIF-1βとのヘテロ二量体の形成やCBP/p300などのヒストンアセチル化酵素との結合が行われ〔Yamashita K, Discher DJ, Hu J, Bishopric NH and Webster KA.(2001)"Molecular regulation of the endothelin-1 gene by hypoxia. Contributions of hypoxia-inducible factor-1, activator protein-1, GATA-2, AND p300/CBP."''J.Biol.Chem.'' 276 12645-53. PMID 11278891〕、これらの複合体はDNA上の低酸素応答性領域(Hypoxia Responsive Element、HRE)と呼ばれる応答エレメント(5'-ACGTG-3')に結合する。 また、HIF-1αの低酸素以外の要因による誘導経路として増殖因子が細胞膜上に存在するチロシンキナーゼ関連型受容体に結合することによるシグナルが挙げられる。具体的には受容体(HER2など)にリガンドが結合するとPI3キナーゼ-Akt経路やMAPキナーゼ経路が活性化され、HIF-1αの転写を促進する。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「低酸素誘導因子」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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