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「出世花」(しゅっせばな)は、高田郁による日本の時代小説。小説家としての高田のデビュー作である。全2巻。 2007年、本作で第2回小説NON短編時代小説賞奨励賞を受賞〔高田郁「出世花」祥伝社文庫、あとがき及び解説。〕し、2008年6月に祥伝社文庫より刊行された。2011年5月にハルキ文庫より若干の加筆・修正の上新版として刊行された。 2015年6月、ハルキ文庫より続編で完結作〔高田郁「蓮花の契り 出世花」あとがきに、本巻が完結作であることが記されている。〕である「蓮花の契り 出世花」(れんかのちぎり しゅっせばな)が刊行された。 == あらすじ == === 第1巻 === ;出世花 :主人公の縁(艶、正縁)が9歳から16歳までの話。妻敵討ちを願う父矢萩源九郎に同行して各地を放浪していた艶は、空腹のために食べた野草に混じっていた毒草によって行き倒れる。二人は近くの青泉寺(せいせんじ)の僧侶たちによって発見されるが、看病の甲斐なく源九郎は亡くなってしまう。そして、回復した艶は縁という新たな名を与えられて、青泉寺で育てられ、やがて湯灌の手伝いをするようになる。 :成長して13歳になった縁は、桜花堂夫婦に気に入られて養女となるよう求められる。その時は、息子夫婦の反対によって先延ばしと決まったが、縁が15歳のときに再び養女縁組みを求められる。しかし、妻に裏切られ、妻敵討ちの旅を続けて苦しみ抜いた父が、青泉寺の人々の手によって湯灌され、死に装束となったとき、穏やかな顔に変えられたことを思い起こした縁は、自分にとっての善き人生とは何かを悟り、桜花堂夫婦の申し出を断って、三昧聖(さんまいひじり)として湯灌の仕事を続けたいと願う。そして、それが正真に認められ、正縁と名付けられる。 :桜花堂主人の佐平が強盗に殺された後、後妻の香は正縁に、「自分があなたを産んだ母だ」と告白する。謝罪する香に向かって、正縁は許すとも許さぬとも答えなかったが、ふと香が死ぬときには、きっと「父母に十二の恩あり」から始まる仏説孝子経を唱えるだろうと思い、涙する。 ;落合蛍 :正縁が17歳のときの話。江戸や上方では、女性の髷がいつの間にか切り取られる「髪切り魔」の事件が頻発している。被害者の中には自殺する娘もいて、正縁もその湯灌を担当することがある。 :そんなとき、正縁は棺桶作りの職人である岩吉と仲良くなる。その風貌故に人に侮られることが多く、人と親しく交わることを避けていた岩吉だったが、死人にも心を込めて向き合う正縁には心を開き、幾度か危難から救ってもくれる。 :岩吉は、新宿小町と呼ばれる紋に恋い焦がれていたが、紋からは全く相手にされず、遠くから姿を眺めるばかりである。その岩吉が、紋の髷を切った髪切り魔として捕縛される。紋の証言に基づくものだったが、正縁は捕縛した同心の窪田に、紋の狂言ではないかと語る。 :後に分かったことだが、紋は手代の左舷太と好き合っていたが、蛍狩りの夜にお忍びの大名に見初められ、側室になることを求められた。その要求を断ることなどできないため、髷を自分で切り取って、側室話を破談にしようとしたのである。しかし、窪田の尋問に思わず岩吉が犯人だと言ってしまった。 :窪田は正縁の推理に納得し、岩吉が入れられている牢に出向いて、「紋の狂言が明らかになるまでもう少し辛抱するように」と励ます。ところが、それを聞いた岩吉は、翌朝自分が髪切り魔だと嘘の自白をしてしまう。その結果、百叩きとなった岩吉は、釈放後に衰弱死してしまう。正縁は、生前の岩吉との約束通り、心を込めて湯灌を行ない、見送る。そして、岩吉が愛する紋を助けるために罪をかぶったのだと知った正縁は、かつて足をくじいた自分を岩吉が助けてくれた場所で、1人涙を流す。 ;偽り時雨 :正縁が18歳のときの話。ある日、神田明神門前にある女郎宿「かがり屋」で客を取る、てまりという女が青泉寺にやってくる。姉さん女郎のおみのが心臓の病で死にかけていて、自分が死んだら下落合の三昧聖に湯灌をしてもらいたいと訴えているという。そこで、ひとまず正縁と正念がてまりに同行してかがり屋に向かうことになる。 :その道中、正念がどことなく急いでおり、しかも道に迷うことなく進んでいくこと、また妙に昌平坂学問所に対して懐かしさを示したこと、神田界隈の事物に詳しいことなどが正縁の心に引っかかる。その理由は、次話「見返り坂暮色」で明らかになる。 :おみのに挨拶した後、正念は寺に戻ったが、正縁は俗世に触れる機会を持つべきだという理由で、おみのの長屋に残ることになる。すると、おみのは次第に元気を取り戻し始める。 :そんなある日、貸本屋の万蔵が死んだ事件の犯人として、てまりが捕縛された。正縁が自身番に出向いて潔白を証明したために、てまりはすぐに釈放されるが、同心の新藤は正縁に事件解決に協力するよう求める。その話を聞いたおみのは、正縁に事件についてあれこれと訪ね、自分の意見を語るようになる。 :ついに、正縁の推理によって事件のあらましが判明するが、正縁は自分の推理がすべておみのの誘導によるものだと気づく。その日、おみのは自分が武家娘でないことと、かつて自分を騙し、てまりのことも騙そうとしている菊次を殺したことを正縁に告白し、自ら毒を飲んで死んでしまう。おみのを病死として届け、湯灌を行なった正縁は、菊次の遺体をそのままにしておいて良いのかと悩みながらも、結局自分一人の胸に止めておくことを決意する。 ;見返り坂暮色 :正縁が19歳のときの話。この享和3年(1803年)の春、武家の隠居が正念を訪ねてくる。水澤重之進と名乗った老人は、正念を若と呼び、宣則(のぶのり)と呼ぶ。そして、母の咲也が危篤だから、すぐに同行するように求める。ところが、正念は頑として聞き入れない。翌日は、異母妹のあや女と名乗る女性が訪ねてきたが、またも正念は同行を拒否する。 :傷心のまま立ち去るあや女を見送ろうとした正縁に、あや女は正縁が湯灌に関わるようになったわけを尋ね、さらに正念の正体について語る。正念は、さる藩主が側室である咲也との間にもうけた8男宣則だという。宣則が国元で水澤の屋敷で養育されていた間に、咲也は眼病により視力を失って、あや女の父尾嶋多聞に下げ渡されて再婚し、あや女が誕生した。その後、国元から嫡男のお控えさま〔嫡男に何かあったとき、代わりに嫡男にするための男子。〕として江戸藩邸に呼び戻された宣則は、母が再婚して娘までもうけたことを恨み、咲也との面会を拒否するなど、ひどく冷たく当たった。今回見舞いを拒否したのも、未だに母を恨んでいるせいだとあや女は言う。 :あや女の話を聞いた正縁は、昨年かがり屋に向かう途中で正念が妙に急いだのは、あのあたりに自分の藩の上屋敷があったためであり、昌平坂学問所や神田の事物に詳しいのも、かつて学問所で学んだ経験があったからだと思い当たる。 :正念との面会が実現しないまま、咲也は亡くなる。あや女の希望に添って湯灌を引き受けた正縁は、正念の同行を願う。最初、正念は最初は拒否したが、正縁の必死の説得と正真の勧めに従って、尾嶋家の菩提寺を訪れ、正縁と共に咲也の湯灌を行なう。 :納棺の後、重之進と多聞は、宣則は咲也の尾嶋家での暮らしを守るために、あえて実母との不仲を演出し、出家までしたのだと正縁とあや女に語る。そして、咲也も宣則の意図を正しく理解していたのだと。 :青泉寺に戻る見返り坂で、正縁は「正念さまは良い師を選ばれた」という重之進の言葉と、「遠くにいらっしゃればいらっしゃるほど、守られる幸せを感じます」という、多聞が聞いた咲也の言葉を正念に伝える。そうかと頷いた正念の示す先には、母子花と呼ばれる御形が人の足跡のように見えている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「出世花」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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