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出歯亀(でばがめもしくはでばかめ)とは、明治時代に発生した殺人事件の犯人として捕らえられた男性のあだ名、もしくはこのあだ名から転じて窃視(のぞき行為)やこれを趣味とするもの、窃視症のように病的な状態にあるものを指す。英語では「ピーピング・トム(Peeping Tom)」という言葉がおおむねこれにあたる。 単に好色な男性を指してもこのように呼ぶが、事件当時は流行語となって様々な意味を含んだ関連語も生まれた(後述)。 == 語源・派生語 == 出歯亀という言葉の語源は、1908年(明治41年)に遡る。この年の3月22日、豊多摩郡西大久保村54(現在の東京都新宿区大久保)の藤の湯近くで銭湯帰りの27歳の女性が殺害され、手ぬぐいを口に押し込まれた状態で発見された。被害者の幸田ゑん子が妊娠中であったこと、大蔵官吏・野口米次郎(同名の詩人とは別人)の元妻であり、下谷電話交換局長・幸田恭の新妻であったことから注目され、事件発生当初より大々的に紙誌で報道される中、以前にも女湯ののぞき行為を行っていた「出歯の亀吉」こと植木職人の池田亀太郎(当時35歳)が強姦殺人の犯人として逮捕された〔『日本擬人名辞典』33頁 〕。(なお、彼は当初は犯行を認めていたが、公判では否認に転じた〔新聞集成明治編年史第十三卷437頁 〕。判決は無期徒刑だったが、控訴した〔新聞集成明治編年史第十三卷514頁 〕。) 衆目を集める事件であったために、新聞は捜査の当初から詳細に報道しており、逮捕時には大見出しが紙面を飾った。また、池田が出っ歯という身体的特徴を持っていたことから彼は周囲から出歯亀と呼ばれていた〔(明治・大正・昭和歴史資料全集. 犯罪篇 下卷P.16)〕こともあって、当時の新聞が逮捕2日後の報道でもこのあだ名を見出しや記事に用いたため、その語は彼を指す言葉として定着したという〔。また、事件の弁護人が法廷でそのように呼んだことが契機であるとの説もある。(なお、明治当時から出歯亀の語源ははっきりとは確定していない〔新聞集成明治編年史第十三卷438-439頁 〕。)このセンセーショナルな事件は「出歯亀事件」として同時代人の心に焼き付き、池田のあだ名である「出歯亀」は転じて好色な男性を指す蔑称として扱われ〔日本国語大辞典(小学館)第二版第九巻〕、あるいはのぞき常習者や強姦などに及ぶ変質者・色情狂などの意味で使われるようになっていった〔weblio「出歯亀」 (複数辞書横断検索)〕。 さらにこの当時「出歯亀」の語は流行し、様々に転用されている。森鴎外も小説『ヰタ・セクスアリス』の中で当時真実暴露と称してしばしば性的描写を行った自然主義(自然主義文学など)の別称として揶揄する意図で「出歯亀主義」なる表現が用いられたり、「出歯る」という動詞がうまれ流行したことに言及している〔〔朝日日本歴史人物事典/池田亀太郎 〕。この「出歯る」という動詞に転じた語も変態的な行為や婦女に暴行するという意味にも用いられ、怪しい挙動を指して出歯ると洒落て呼ぶこともあった〔。この当時の流行語を乱用する学生の間では必ずしも性欲の遂行を条件とせずに「まごまごすると出歯るぞ」などという冗談にも用いられもしている〔日本隠語大辞典(皓星社)Weblio「でばる」 〕。こういった時流の中で前述の「出歯亀主義」も既成道徳を否定した社会主義や無政府主義にまで用いられるようになった〔。ただ2010年代の現代において出歯亀という語は国語辞典〔『広辞苑』第五版参照〕のうえで窃視趣味やその窃視行動を指す語として残り、強姦や婦女子への暴行といった意味は薄れ、出歯亀主義や出歯るなどの関連する語は姿を消している。いずれにせよ池田亀太郎のあだ名は不名誉な蔑称として現代にまで残される結果となった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「出歯亀」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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