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抽象代数学において必ずしも単位元を持たない環 (rng) あるいは擬環(ぎかん、)、非単位的環(ひたんいてきかん、)は、乗法単位元の存在以外の環の公理をすべて満たすような代数的構造を言う。英語では少しおどけて、「単位元」(identity, これをしばしば 1 で表す)の無い「環」 (ring) だからということで、「rng」と呼称することもある。 環の公理に乗法単位元の存在を含めない文献もあり、この文脈では本項に云う概念は単に「環」と呼称される〔, 〕。また、修飾辞「非単位的」は「必ずしも単位的でない」という意味で用いられるが、本項ではその意味では専ら「擬環」を(あるいは直接的に「必ずしも」を付けて)用い、単独の「単位的」・「非単位的」を単位元の有無を強調する意味でのみ用いる(つまり、非単位的であるといった場合には実際に単位元を持たない)。 == 厳密な定義 == きちんと述べれば、必ずしも単位的でない環とは、集合 ''R'' に二つの二項演算、加法 "+" と乗法 "∗" が定義されていて、 * (''R'', +) はアーベル群、 * (''R'', ∗) は半群、 * 乗法は加法に対して分配的である という条件を満足するものである。必ずしも単位的でない環としての準同型(擬環準同型)は、単位的環準同型と同様だが、単位元を保つという条件 "''f''(1) = 1" を要求しない。つまり、必ずしも単位的でない環の間の(擬)環準同型 ''f'': ''R'' → ''S'' とは、''R'' の任意の元 ''x'', ''y'' に対して * ''f''(''x'' + ''y'') = ''f''(''x'') + ''f''(''y'') * ''f''(''xy'') = ''f''(''x'')''f''(''y'') を満たすものを言う。 しかし、''R'', ''S'' が単位元を持つ環のとき、擬環準同型 ''f'': ''R'' → ''S'' が ''R'' の単位元 1 を ''S'' の単元 ''s'' へ写すならば、''s'' = 1 となることは示せる。さらにこのとき、擬環準同型が ''R'' の任意の非零元を非零因子へ写すことは、1 が 1 に写ることから従う。系として、「擬環準同型が単元を単元へ写すならば、''R'' の単位元は ''S'' の単位元へ写る」ことを得る。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「擬環」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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