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源氏物語の類(げんじものがたりのるい)とは、源氏物語などの専門家である国文学者の稲賀敬二が平安時代末期から鎌倉時代ころまでにかけての源氏物語の受容の実態に関連して唱えた概念のことである。 == 概要 == 現在、源氏物語とは、桐壺から始まり夢浮橋で終わる全体で54帖から構成される物語であるとされており、それぞれの巻の順序も一定しており人によって異なるということはない。 1000年前後に成立したと見られる源氏物語が、成立した時点で全体で何巻から構成されていたのか等どのようなものであったのかを記録した文書は存在していない。しかし源氏物語が成立してからそれほどの時間が経過していない1020年ころの源氏物語の愛読者であった菅原孝標女は更級日記の記すところによれば「五十余巻」〔光源氏物語本事に記録された異文によると「五四まき」〕からなる夕顔と浮舟が描かれている源氏物語を読んでおり、宇治十帖までを含んだ54帖からなる現在一般に見られる源氏物語ほぼ同じものを読んでいたと考えられる。 しかしながら『伊勢物語』・『竹取物語』・『平中物語』・『うつほ物語』・『落窪物語』・『住吉物語』といった平安時代の物語の多くには「改作本」・「増補本」などが存在している。このような状況を前提にして阿部秋生は、「そもそも、当時の『物語』は、ひとりの作者が作り上げたものがそのまま後世に伝えられるというのはむしろ例外であり、ほとんどの場合は別人の手が加わった形のものが伝えられており、何らかの形で別人の手が加わって後世に伝わっていくのが物語にとって当たり前の姿である」ことに注意を払うべきであるとの見解を示している〔阿部秋生「物語の増補・改訂」『岩波セミナーブックス41 源氏物語入門』岩波書店、1992年(平成4年)9月7日、pp.. 137-140。 ISBN 4-00-004211-4 〕。 平安時代末期から鎌倉時代にかけての源氏物語に関連するさまざまな文献に含まれている記述を調べると、人によって、あるいは文献によってもさまざまに異なっているものの、現在見られるような54帖からなる確定した範囲と巻序を持つ巻だけから構成されるのではなく、 *「紫式部の作ではない、またはそのような可能性のある巻」 *「真正な源氏物語であるといえるかどうか疑問のある巻」 *「真正な源氏物語との間に矛盾点を含む巻」 *「人によっては源氏物語としては受け入れていない巻」 といった外伝的な巻々までを含めたより広い範囲の巻々を含んでいると見られることがしばしばあり、当時の人々にとって源氏物語とは、このようなものまでを含んだ存在であると考えられる。 稲賀敬二はこのような「外伝的な巻々までを含んだ形の源氏物語」を『源氏物語の類』と呼び、「そのような外伝的な巻々までを含んだ形での源氏物語の受容が当時としては一般的な源氏物語の受け取り方であった」としている。「○○の類」の呼称は源氏物語以上に巻名や巻序の異同の激しいうつほ物語について、枕草子の「物語は」の章段(能因本第195段)〔三巻本の該当箇所は「すみよし。うつぼ、とのうつり。くにゆづりはにくし」と在り「うつぼの類」との記述は見えない。「殿移り」は、執筆当時に通用していたうつほ物語の巻(「蔵開き」か)の別名ではないかとされる。〕に「物語は、すみよし、うつぼの類」などとあることに着想を得たものである。藤村潔は、ほぼ同じ概念を「広本源氏物語」と名付けている〔藤村潔「広本源氏物語と巻名の異名」『文学』第50巻第11号(特集 源氏物語-3-)、岩波書店、1982年(昭和57年)11月、pp.. 46-56。 〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「源氏物語の類」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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