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軽空母(けいくうぼ、Light aircraft carrier)は、正規空母と比較し、小型の航空母艦の事。歴史的には大型の正規空母に比べて小型で搭載する航空機も少なく、装甲など防御能力も低い空母を指した。ただし速力は正規空母と同等、あるいは準ずることで艦隊行動をおこなって海上戦闘作戦に参加できる能力を備えているものを指し、低速の護衛空母とは区別される。当時、高速力を発揮し艦隊行動に追随しうる空母は、艦の規模、搭載機数に関わらず艦隊空母(Fleet Aircraft Carrier)と分類されていた。現代では主に短距離離着陸機(STOVL機)を運用する航空母艦のことを指す。 軽空母とヘリ空母は元来別の艦種である。ヘリ空母を広義の軽空母に含める文献もあるが、ヘリコプターとSTOVL機の運用においては支援設備が異なるため、STOVL空母をヘリ空母として運用することはできても、ヘリ空母をSTOVL空母として運用するには困難が存在する。 == 軽空母の定義の変遷 == 水上機から発達した航空母艦において、排水量、搭載機、速力、防御が劣位にあるものを、より大型のそれと比較して軽空母と呼ばれたことに端を発する。空母の黎明期において実験艦的性格をもった日米英の「鳳翔」、「ラングレー」、「ハーミーズ 」は1万トン前後の排水量とワシントン海軍軍縮条約によって空母への転用を認められた「赤城」、「レキシントン」と比較して小型であったが、この時点では軽空母という概念はない。第二次世界大戦の勃発まで、海軍国の空母建造は、条約で割り当てられた排水量の範囲内でどう割り振るのかという部分に終始するため、比較的小型、比較的大型、あるいはその間をとった設計だから中型、というあいまいな定義しかなく、艦隊と行動する前提で設計されたのであれば防御が弱くても、速力が30ノットを割っても、あるいは雷撃機のための航空魚雷の調整・運用ができないものであっても単に空母として遇されていた。 軍縮条約が終わり、第二次大戦が始まると空母戦力の大拡張が行われるが、このときに建造に時間と費用がかかる正規空母と並行して計画されたのが護衛空母と軽空母である。護衛空母が船団護衛を主眼としたのに対し、軽空母は艦隊戦力の補助を意図していた。護衛空母より高性能であるが正規空母よりも安価で建造期間が短いことが求められ、一部は巡洋艦や民間船舶の船体を利用したり、改装されたりした。日本の「瑞鳳」、「祥鳳」、「龍鳳」、「千歳」、「千代田」、「伊吹」。アメリカのインディペンデンス級、サイパン級。イギリスのコロッサス級、セントー級が当時の軽空母に分類される。伊独も合計3隻の空母を着工し、客船改造の「スパルヴィエロ」などいずれも日米の主力空母に比べて搭載予定機数が少なく、航空戦力としては軽空母クラスであった。これらは完成には至らず、ソ連の空母は研究段階にとどまり、戦局に寄与することはなかった。 大型高価な正規空母の補助としてそれなりの数が計画、建造された軽空母であるが、第二次大戦の終結後は急速建造という最大の利点が無くなり、また肝心の搭載機そのものがジェット化とともに急速に大型化、大重量化したことから第一線機の運用能力を失い、対潜任務や強襲揚陸艦に転向したものの他は、ほとんどが1970年代までに退役することとなった。コロッサス級は例外的にジェット機対応改装により一部の海軍で長期の運用がなされ、アルゼンチンでは「ベインティシンコ・デ・マヨ」を1997年まで、ブラジルでは「ミナス・ジェライス」を2001年まで運用していたので、第二次世界大戦における定義にあてはまる軽空母は2001年まで存在したこととなる。 洋上で航空戦力を展開するには、大型高価な正規空母とその固定翼艦載機に頼るしかない状況にあったが、その費用負担に耐えかねたイギリスはこれを全廃する措置を採った。しかし全通甲板型対潜巡洋艦とSTOVL機ハリアー、そしてスキージャンプ台を組み合わせることで限定的ながら、比較的安価に洋上航空戦力を整える方策を編み出すことになる。インヴィンシブル級とそれに先立つ各種実験を担当した「ハーミーズ(2代目)」はフォークランド紛争で実績をあげ、これが有効であることを示す。以後、イタリアがこれに続き、またアメリカも洋上防空とは別のアプローチ、すなわち強襲揚陸を行う海兵隊への近接航空支援のため、強襲揚陸艦とハリアーの組み合わせを採用する。 アメリカ海軍もまた大型空母の運用費用に苦慮していたことから「安価で柔軟性に富んだ航空機運用プラットフォーム」としてのSCS(Sea Control Ship、制海艦)を研究するものの、アメリカ海軍の複雑な要求を満たすことができず頓挫する。しかしこの研究はイギリスに先立ちハリアーの艦上運用を開始したスペインにおいて結実することとなる。 現在の軽空母とは、カタパルトや着艦拘束装置、あるいはそれを配置するに足る広大な飛行甲板面積を必要としない、搭載機にハリアーを採用した空母、と言い換えることもできる。軽空母が俗に「ハリアー空母」とも呼ばれる所以でもある。冷戦崩壊によってソ連のYak-38がキエフ級とともに運用を停止して以降、STOVLが可能な固定翼艦載機はハリアーのみであり、F-35のSTOVL型であるF-35Bが配備されるまでは、軽空母イコール搭載機はハリアーという状況が続く。 F-35Bの搭載を前提としたより大型のSTOVL空母あるいは強襲揚陸艦は、排水量が3万トンに達する。またこれに先立つ1960年代において、当時のソビエトで排水量5万トンの空母を「軽防空空母」と呼称し、またYak38を搭載したキエフ級は4万トンを超えていた。また専門誌において5万5,000トンの「アドミラル・クズネツォフ」が、艦載機の発艦重量に制限を受けるSTOBARの採用を理由とした運用能力の限界から軽空母と解説されたこともあり、さらには輸送、揚陸などの複合任務に供される艦もあることから、軽空母という語に関して、現代においては各国共通の定義は存在していないと言える。 2017年にはイギリス海軍のクイーン・エリザベス級が就役予定であるが、クイーン・エリザベス級はフランスの原子力空母「シャルル・ド・ゴール」よりも遥かに大型の艦型であるにもかかわらず艦載機としてF-35B STOVL機を運用する予定であったことから軽空母の定義が揺らぐ事になるであろうと当初考えられてもいた。しかし2011年末現在F-35Bの開発が難航し空軍・海軍がCTOL型のF-35Cの取得に方針を変更するも、C型の実戦配備が2023年まで遅れる見込みのため2012年5月10日再度B型に変更すると発表。今後の動きが注目されている。 なお空母運用国の中で公式な分類に「軽空母」を「正規空母」と区別していた国は、アメリカ(正規空母CV・軽空母CVL)、カナダ(正規空母は保有したことがないがアメリカに準じた船体符号で軽空母にCVLを使用)、ブラジル(正規空母NAe・軽空母NAeL)の3国のみであり、他の運用国は軽空母と正規空母の区別をしていない。したがって運用国によって公式に軽空母と分類されたのはアメリカのインディペンデンス級とサイパン級、カナダとブラジルのコロッサス級となる。コロッサス級は建造国のイギリスでは軽空母に分類されなかったが貸与・売却先で軽空母に分類されたこととなる。 また、現代における軽空母と呼べるSTOVL空母については、その先駆者であるイギリスのインヴィンシブル級は、イギリス海軍の公式サイトにおいてはCVS(対潜空母、支援空母とも)と称されている。なおアメリカ海軍は、1952年から1972年まで対潜空母にCVSという識別符号を用いていたが、こちらはS-2艦上哨戒機などを搭載したエセックス級に対する分類であった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「軽空母」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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