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EU排出量取引制度 : ウィキペディア日本語版
欧州連合域内排出量取引制度[おうしゅうれんごういきないはいしゅつりょうとりひきせいど]
欧州連合域内排出量取引制度(おうしゅうれんごういきないはいしゅつりょうとりひきせいど、European Union Emission Trading Scheme 略称:EU ETS)とは、欧州連合 (EU) 域内における二酸化炭素についての、複数の国による世界最大の排出量取引制度〔The European Union Emissions Trading Scheme Review of Environmental Economics and Policy 2007〕。EUの気候変動に対する政策の柱となっている。EU ETSでは、合計でEUの二酸化炭素排出量の半分に迫る量、温室効果ガス排出量合計の40%となるエネルギー部門や工業部門の1万を超える施設を対象としている〔 Questions and Answers on the Commission's proposal to revise the EU Emissions Trading System EUプレスリリース MEMO/08/35, Brussels 2008年1月23日
〕。
EU ETSのもとでは、EU域内の二酸化炭素大量排出者は自身の二酸化炭素排出量を計測し、毎年その量を報告しなければならない。そのうえで1年ごとに二酸化炭素排出量と同量の排出許容量をいったん政府に返上することが義務付けられる。排出施設は無償で一定の排出許容量を政府から取得し、または他の排出施設やトレーダー、政府から排出許容量を購入することになる。ある排出施設が必要量以上の排出許容量を取得した場合、その施設は排出許容量を転売することができる〔 。
2008年1月、欧州委員会は排出量取引制度の大幅な変更を提唱しており、それによると国ごとで決めている排出量の割当決定作業を集中して行うこと、また無償で付与している排出許容割当量を抑えて、全体の60%以上の割合を競売制にすること、さらに対象となる温室効果ガスに亜酸化窒素パーフルオロカーボンを追加することが盛り込まれている。このほか対象となっている施設の温室効果ガス排出制限量を2020年に対2005年比21%削減することを提案している。
== メカニズム ==
EUの制度は京都議定書マラケシュ合意でうたわれたメカニズムを専らモデルにしており、前年に運用が開始され、参加者が自主的に加わったイギリスでの排出量取引制度での経験が生かされている〔UK Emissions Trading Scheme イギリス環境・食糧・地方省(英語)〕 。
その後EU加盟国政府は国別の排出量制限に合意し、工業施設運営者に対する許容量を割り当て、実際の排出量が定められた割当排出量の範囲内であるか計測・認定し、毎年度末後に排出許容量の放棄を求めている。ETSの対象となっている施設運営者は以下のような方法で排出許容量の譲渡を求め、また売買を行うことができる。
* 企業内部において独自に、異なる国に所在している施設間での排出許容量を移転する。
* 店頭取引において、ブローカーを介して買い手と売り手を引き合わせる取引を行う。
* 欧州気候取引所などのヨーロッパにある気候取引所のスポット市場において売買する。ほかの金融商品と同様に、売買は取引所の参加者間での買い手と売り手の注文の一致で成り立ち、約定価格で排出許容量が決済される。また多くの株式市場と同じく、企業や民間の個人は取引所の会員となっているブローカーを介して売買を行うことができる。
排出許容量の保有権の異動が提起されたとき、その取引が認証されるために各国の登録機関および欧州委員会に通知がなされる。EU ETSのフェーズ II の期間においては、気候変動枠組条約 (UNFCCC) 事務局も各国の割当計画の範囲内で分配量の変更を認証することになっている。
京都議定書における売買制度と同じようにEUの制度では、制限対象となっている施設運営者が義務を履行するために排出削減単位 (ERU) の形態となっている炭素クレジットを利用することが認められている。UNFCCCのクリーン開発メカニズム理事会または共同実施プロジェクトのホスト国のそれぞれによって認証されたカーボンプロジェクトが策定した認証排出削減量 (CER) 単位はEUによって同等の価値があるものとして受け入れられている。
1EU排出枠単位 (EAU) は二酸化炭素1トンに相当し、これは京都議定書で定義された二酸化炭素初期割当量 (AAU) に等しいものである。そのため京都CERとEU-EAUとを同等とすることを受け入れる決定がEUでなされ、EAUとUNFCCCが認証したCERを同じシステムで対等の取引を行うことができる。ただしEUは、この制度の運用は国際連合のシステムとの接続関連での技術的問題を解決するまで稼働しないということを明らかにしている〔 ITL link, EU ETS review key for 2008 prices Carbon Finance 2008年1月9日〕。
EU ETSのフェーズ II 期間中、UNFCCCが「撤退」するまで加盟国内の施設運営者はEUによる査察のために排出許容量を返上しなければならない。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「欧州連合域内排出量取引制度」の詳細全文を読む

英語版ウィキペディアに対照対訳語「 European Union Emission Trading Scheme 」があります。



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