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数学における K-理論(Kりろん、)は、大まかには、大きな行列の不変量を研究することのひとつであり、位相空間やスキーム上で定義されたベクトル束で生成される環の研究に端を発する。代数トポロジーにおける K-理論は、位相的 K-理論と呼ばれる一種のである。代数学や代数幾何学における K-理論は代数的 K-理論と呼ばれる。また、K-理論は作用素環論においてもいくつかの応用を持つ。 K-理論は、位相空間やスキームから付帯する環への写像である K-函手の族を構成することを意味する。これらの環は、元の空間やスキームの構造のいくつかの側面を反映している。代数トポロジーにおける群への函手のように、この函手的な写像の利点は、元の空間やスキームからよりも写像された環からのほうが位相的な性質を容易に計算することができることが多いことである。K-理論のアプローチから得られる結果の例としては、(Bott periodicity)やアティヤ=シンガーの指数定理や(Adams operation)がある。 高エネルギー物理学では、K-理論、特に(twisted K-theory)は、II-型弦理論に現れる。そこでは、K-理論が、Dブレーンや(Ramond–Ramond field)の強さ、一般化された複素多様体上のスピノルを分類すると予想されている。物性物理学では、K-理論は、トポロジカル絶縁体、超伝導や安定フェルミ面を分類することに使われる。詳細は(K-theory (physics))の項を参照。 == 黎明期 == この主要な問題は、アレクサンドル・グロタンディークが(Grothendieck–Riemann–Roch theorem)を定式化することに、K-理論を用いた に始まる。名称は「類」を意味するドイツ語 "Klasse" の頭文字をとった〔Karoubi, 2006〕。グロタンディークは、代数多様体 X 上の連接層をうまく扱う必要とし、層自体を直接扱うのではなく、層の(isomorphism class)を群の生成系として、それらの和を備える二つの層の拡大を同一視することによる基本関係で一つの群を定義した。局所自由層のみを用いて考えると、こうして得られた群は K(X) と書かれ、任意の連接層を用いるときは G(X) と書かれつのだが、いづれもグロタンディーク群と呼ばれる。K(X) はコホモロジー的であり、G(X) はホモロジー的に振る舞う。 X が滑らかな代数多様体のとき、この二つのグロタンディーク群は一致する。X が滑らかなアフィン代数多様体ならば、局所自由層の任意の拡大は分裂するので、別な方法でグロタンディーク群を定義することもできる。 トポロジーでは、ベクトル束に同じ構成を適用することにより、 は 位相空間 X に対する K(X) を定義し、(Bott periodicity theorem)用いてある(extraordinary cohomology theory)の基底を与えた。これは指数定理の別証明 (circa 1962) において重要な役割を果たす。さらにこのアプローチはC *-環に対する非可換 ''K''-理論を導く。 1955年にはすでにジャン=ピエール・セールは、ベクトル束のアナロジーとして射影加群を用いて「多項式環上の任意の有限生成射影加群が自由加群である」ことを言う(Serre's conjecture)を定式化していたが、これが肯定的に解かれたのは20年を経た後のことであった(スワンの定理(Swan's theorem)はこのアナロジーのもうひとつの側面である)。
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