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MADムービー(マッドムービー)とは、既存の音声・ゲーム・画像・動画・アニメーションなどを個人が編集・合成し、再構成したもの。単に「MAD」と呼ばれることも多く、ネットコミュニティにおいてはもっぱらこの呼称が主流となっている。ただしパソコンやCGソフトが普及した21世紀初頭には「手書き(描き)MAD」(後述)という用語が出現するなど意味の拡散がみられる。主にファン活動の一環として行われる。「MAD」とは「狂っている、ばかげている」の意。 == 流通と社会の対応 == MADムービーの前身は、1970年代末ごろから大学のサークルなどで制作されていたMADテープ(初期はキチガイテープとも呼ばれていた)である。これらは音声MADをカセットテープに収録し、同人誌と同様の経路で流布していた。 優良な作品の登場などによりMADテープは人気を呼び急速に全国に広まったが、流通経路の問題から漫研・アニ研・自主上映会など、特定コミュニティとの関わりがない層にはそれほど認知されていなかった。 そんな折『タモリのオールナイトニッポン』において、1980年11月からNHKニュースのアナウンサーの声を合成したものを流す「つぎはぎニュース」のコーナーが放送され、ニュース特有の抑揚が少ない(加工しやすい)無機質な口調で脈絡のないことを話し続けるというギャップが生む面白さで話題になった。ニュース番組を使ったMADは後にマッドニュースと呼ばれるようになった。これらの作品の一部は、現在動画投稿サイトで視聴することができ、新作も製作されている。その後NHKからクレームがついたため2か月ほどでこのコーナーは終了したが、この番組によりコラージュ作品そのものの認知度が上がり、制作者層や流通の幅が広がった。 やがてビデオテープを用いたMADビデオが作られるようになる。 初期の頃は特撮やロボットアニメのセリフを強引に改変する、曲を差し替えるなどといった作品が主流であった。現在でも、アニメのキャラクターのセリフを差し替えるなどといったMADムービーはメジャーな改変として作られ続けている。 21世紀初頭にはインターネット環境の整備や、各種編集ツールがフリーウェアで普及したこと、パソコンの性能向上により、インターネットを通じて爆発的に流通、作成されるようになった。これには「あめぞう」などのいわゆるアンダーグラウンドサイトの登場や、WinnyやWinMXといったP2P技術の発展が大きく貢献している。特にP2PはMADムービーの製作に欠かせない「素材」の流通を加速させた。それそのものが「裏」であったとも言える、黎明期のインターネットと本来秘匿されるべきであるMADムービーの性質、そして担い手たちであった当時の「オタク」が持っていた気質が噛みあった結果である。そしてこの時期には、動画を簡単に制作が出来るFlashを利用したムービーやゲーム形式のMAD作品が多数普及し始め、Flash職人と呼ばれる制作者が増加し、一時代を築いた。 しかし、当然ながら著作権の侵害である事には変わりがなく、JASRACから削除要請による削除が相次いだことや、のまネコ問題など商業化による批判、そして、後述するYouTubeなどの登場により、徐々にFLASHブームは衰退して行く事となる。 そして、2005年に登場したYouTube、2007年に登場したニコニコ動画に代表される動画共有サイトの登場により状況は一変する。先述のように「裏」としての側面が強かったMADムービーは、YouTubeなどメジャーなサイトにアップロードされることで、さらなる盛り上がりを呼ぶと同時に、メディアでも取り上げられていくうちにその違法性が大きくクローズアップされることとなった。 素材となる作品との関係上、著作権者に無断で制作・配布されることがほとんどで、無断改編による同一性保持権の侵害ともいえるMADムービーの違法性が取り沙汰される中、著作権侵害に対する権利者の対応は様々であった。商業コンテンツを題材とした多くのMADムービーは権利者の申し立てを受けて削除されたが、一部の権利者は半ば黙認した〔。これはMADムービーの流通量が無視できない規模まで拡大したことの他に、ヒットした場合に大きな広告宣伝効果が見込まれることが関係している(バンダイナムコのゲーム、アイドルマスターを素材としたMADムービーの例など)〔。 中にはMADムービーの制作におけるガイドラインを規定した権利者も現れた。 また角川グループは、2008年1月25日に同社の著作物を使用した作品に対して公開を許可する含みを持たせたコメント〔AV Watch 2008年1月25日 〕を発表した。 その後、同グループの角川デジックスにより、youtubeにアップロードされたMADムービーの一部に正式に許諾を与える対応方針が発表され、実際に幾つかの動画に公認マークが付与されている。 (Sham.Studio.の例〔Sham.Studio. FAQ 〕など。) 対応の差が生まれた要因の一つとして、一度リリースされたMADムービーは権利者が公開を取りやめさせたとしても、作品を入手した第三者がまた配布を始めるという性質から、根絶は不可能という認識が広まったため(それに加え、企業イメージの向上戦略)とも考えられる。 いくつかの権利者の中ではMADムービーを参考にしたり強く意識した作品を制作するなど、MADムービー制作者と権利者間でのビジネスが行われるケースも見られるようになった。 また、公式によるMADムービーも存在しており、例えばコナミのビデオゲーム「メタルギアソリッド3」では開発者がゲーム内のシーンを改変したショートフィルムの公開などを行った(ただしこれは本来の意味の「MADムービー」とは多少異なる。)。 さらに、関連事象としてエコカー補助金終了直後に放映されたダイハツ工業のキャンペーンCMに関して、ダイハツ公式サイト内に「権利者自らが製作したMADムービー」であるような事を匂わせるコメントが掲載されている。〔テレビCM、ムーヴコンテ「減税は続く」篇(ダイハツ公式 archive.todayキャッシュ) 〕 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「MADムービー」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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