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ひだる神 : ウィキペディア日本語版
ヒダル神[ひだるがみ]

ヒダル神(ヒダルがみ)は、人間に空腹感をもたらす憑き物で、行逢神または餓鬼憑きの一種。主に西日本に伝わっている。北九州一帯ではダラシと呼ばれ、三重県宇治山田和歌山県日高高知県ではダリ徳島県那賀郡奈良県十津川地方ではダルなどと呼ばれる。
== 概要 ==
山道などを歩いている人間に空腹感をもたらす悪霊の類をいう。これに憑かれると、歩いている最中に突然にして激しい空腹感、飢餓感、疲労を覚え、手足が痺れたり体の自由を奪われたりし、その場から一歩も進めなくなり、ひどいときにはそのまま死んでしまうこともあるという〔。
これに憑かれるとされる場所は大抵決まっており、山道、峠、四辻、行き倒れのあった場所などが多い。土地によっては火葬場や磯でも憑かれるという〔。和歌山県では、熊野の大雲取小雲取(現・東牟婁郡新宮市那智勝浦町の間)という二つの山のあたりに餓鬼穴という深い穴があり、そこを覗くと必ずヒダル神に遭ったという。
三重県では人間のみならず、牛までヒダル神に憑かれたという〔。また滋賀県甲賀市から伊賀(現・三重県西部)西山に続く御斎峠(おときとうげ)では、まだ朝もやの晴れない時刻に、ヒダル神が異様に腹の膨らんだ餓鬼の姿で現れ、旅人の前に腹を突き出して「茶漬けを食べたか」と尋ね、旅人が「食べた」と答えると襲いかかり、その腹を裂いてその中のわずかの飯粒を貪り食ったという。そのためにかつては徳川家康も、本能寺の変の際にこの峠を通るのは命がけだったという。
ヒダル神に憑かれたときには、すぐに何かを食べ物を食べれば身動きできなくなることはないとされ、ヒダル神を防ぐためには前もって十分な量の食糧を持ち歩くと良いという。そのために弁当を持って山道を行く際には、その弁当を食べ尽さずに一口分は残すという心得が伝わっている。僅かの食べ物の持ち合わせもないときには、道端に生えている草を口にすればどうにか助かることができるといい、草すら無いときには掌に指で「米」と書いて舐めても良いという〔。また土地によっては、食べ物を近くの藪に捨てる、身につけている衣類を後ろに投げるという方法も伝わっている〔。愛知県和歌山県では、木の葉でもいいから口に含むと助かるともいう〔。
また高知県長崎県鹿児島県などでは「柴折様(しばおりさま)」と呼ばれる祠が峠や路傍に祀られており、ここに折った柴を供えて行くと、その場所を通る人はヒダル神を避けられるといわれている。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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