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ほんやら洞のべんさん : ウィキペディア日本語版
ほんやら洞のべんさん[ほんやらどうのべんさん]

ほんやら洞のべんさん』(ほんやらどうのべんさん)は、つげ義春1968年6月ガロに発表した短編漫画作品。
== 概要 ==
いわゆるつげの「旅もの」の系譜に属する作品。小千谷地方の錦鯉養殖農家の多い農村が舞台になっている。
1968年には『長八の宿』、『二岐渓谷』、「オンドル小屋』、『ねじ式』、『ゲンセンカン主人』、『もっきりやの少女』などの作品を立て続けに発表した充実した年であるが、作品としての完成は『ねじ式』の後になるがその3ヶ月前に着想されていた。舞台となった新潟には1968年の2月に旅しているが、その前にストーリーはできていたという。当時の『ガロ』編集者であった権藤晋が原稿を受け取ったのは、「ねじ式」の一週間後である。権藤は、その瞬間、つげの想像力のダイナミズムにあらためて感動するとともに作家の表現者としてのバランス感覚の見事さに言葉を失ったという〔「ねじ式」夜話 〕。
つげは舞台設定をする目的で厳寒期に実際に雪国を見るために出かけている。この際に、権藤晋に教わり湯宿温泉を訪問し、ほんやら洞(雪洞のこと)を見学するために織物で有名な新潟県の十日町市に立ち寄ったものの、時期違いでかなわなかった上、雪が深すぎ身動きもとれずやむを得ず十日町の駅前旅館に宿を取ったため作品に描かれたような農村地帯は見学できなかった。錦鯉の養殖風景も写真に撮りたいと考えていたが断念した。このため、純粋にイメージだけで作品が構成されたことで、むしろつげ独自の心象風景が余すところなく描かれることになった。
つげ自身は「主人公の寂しい気持ちをオーバーにならないように描きたかった」と述懐する。作中のべんさんの言葉「なぜ旅にきたのかね、なんとなくじゃわからん、お前さまは寂しいんじゃないかね」が印象的だ。べんさんの複雑な家庭環境、鬱屈した感情と主人公の気持ちがうまくかみ合っており、起承転結も見事である。権藤晋は完成度の高さでつげの最高傑作に上げているが、つげ自身はまとまり過ぎが欠点であると考えている(以上、つげ義春漫画術 下巻より)。この作品をめぐっては、作品の「リアリティ」をめぐって、つげと権藤との熱い議論が「つげ義春漫画術」(下巻)にて戦わされている。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「ほんやら洞のべんさん」の詳細全文を読む



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