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アダマンタン (adamantane) は、10個の炭素がダイヤモンドの構造と同様に配置されている、かご型の分子である。化学式はC10H16、分子量は136.23。融点は270 。CAS登録番号は 。名称はダイヤモンドに相当するギリシャ語の "adamas" から名づけられたものである。単体は無色透明の結晶性固体で、樟脳様の臭気を有する。各炭素の結合角がsp3炭素の本来の角度(約109.5度)を成しているため全くひずみのない構造で、このため極めて安定である。対称性が高いため融点が高く、長らく炭化水素の高融点記録を保持していた。 1933年、チェコスロバキア産の原油から発見された。発見前の1924年にはデッカーにより存在の可能性が示唆されており、彼はこの物質を「デカテルペン (decaterpene)」と呼んでいた。 ジシクロペンタジエンから合成され、アダマンタン誘導体はフォトレジストや医薬品などの用途がある。 == 合成 == 分子式C10H16を持ち、ダイアモンドに構造の似た炭化水素分子が存在する可能性は、 によって1924年の学術会議で提案されていた。デッカーはこの分子を「デカテルペン」と呼び、いまだ合成されていないことを突然に示した。 アダマンタンの合成は難航した。実験室での合成を最初に試みたのは1924年のドイツの化学者で、ピペリジン存在下でホルムアルデヒドとマロン酸ジエチルを反応させたが、1,3,5,7-テトラカルボメトキシビシクロノナン-2,6-ジオン (1) を得るにとどまった。この化合物はのちに「メールワインエステル」と名づけられ、アダマンタンやその誘導体の合成に使われた。その後、もう一人のドイツ人化学者ベトガー (D. Böttger) がメールワインエステルを使ってアダマンタン合成を試みたがこれも成功せず、得られたのはトリシクロデカン環を持つアダマンタンの誘導体であった。 他にも、フロログルシノールやシクロヘキサノンの誘導体を使ってアダマンタンの合成を試みた研究者はいたが、いずれも失敗に終わっていた〔。 最初にアダマンタンの合成に成功したのは1941年、ウラジミール・プレローグで、メールワインエステル 1 を出発物質とした。合成過程は複雑で、五つの段階を含み、全過程の収率はおよそ0.16%に過ぎなかった。しかしながらこの方法は、アダマンタンの特定の誘導体を合成するのに、その後もときどき使われた〔。プレローグの方法は1956年に改善され、脱炭酸の収率がハインスデッカーの経路を採用することにより11%に増えるとともに、収率24%のホフマン反応により、総収率は6.5%となったが、この方法はまだ複雑すぎるものであった。 1957年にが、より簡便な方法を偶然発見した。すなわち、ジシクロペンタジエンを触媒(酸化白金など)の存在下で水素化して C10H16 の分子式を持つ炭化水素(テトラヒドロジシクロペンタジエン)とし、これを塩化アルミニウムなどのルイス酸と加熱することによりヒドリドを引き抜き、発生したカルボカチオンが次々と転位を起こすことによって最終的に最も安定なアダマンタン骨格を得る、というものである。この方法は収率を30%-40%に増加し、アダマンタンの効率的な供給法を提供することとなった。これによりアダマンタンの性質の解明が進展した。現在でも実験室的製法として用いられている。その後アダマンタン合成の収率は60%まで伸び、こんにちでは1グラムあたり1ドル程度の価格で購入できる化合物となっている。この合成法では反応後に多量のタールと塩化アルミニウムの混合物が発生するため日本国内では工業化できず、中国で合成されている。出光興産はゼオライトを触媒に用いる新たなアダマンタン合成プロセスを開発した〔ゼオライト触媒によるアダマンタン製造プロセスを開発 、出光興産株式会社、2004年6月21日〕。このプロセスでは処理の困難な廃棄物が出ず、環境負荷が大幅に低減されており、プラントは山口県に建設され、2008年1月に商業運転を開始した。 これらの合成方法ではいずれも、アダマンタンは多結晶質の粉末として得られる。この粉末から、溶融法や溶液法、などの気相法で単結晶を作ることができる。溶融法ではモザイク状でX線回折が約1°の質の悪い結晶ができる。最も良い結晶は溶液法で得られるが、成長が遅く、数箇月かかって5-10ミリメートルの結晶ができる程度である。気相法は速さと質の両方に優れ〔、炉の中に置いた石英管中でアダマンタンの昇華が行われる。炉には1センチあたり約 10 °C の温度勾配がかかるように加熱機が備えられており、管の一端はアダマンタンの融点近くに温度が保たれていて、ここで結晶化が起こる。温度勾配を維持しながら管全体をゆっくり冷ますと、結晶化の起こる位置が徐々にずれていき(1時間に2ミリ程度)、単結晶のブールが得られる〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「アダマンタン」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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