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アフリカ美術 : ウィキペディア日本語版
アフリカ美術[あふりかびじゅつ]

アフリカ美術(アフリカびじゅつ)とはアフリカにおける美術、視覚文化を指す。アフリカ大陸における美術や物質文化は、地球上で最も多様で創造性に富む芸術的遺産の1つである。たとえ気楽な観察者たちの多くが「伝統的な」アフリカ美術を一般化しがちであろうとも、実際にその大陸は多数の民族、社会および文明であふれており、それぞれに独特の視覚文化を有している。
信じられないほどの多様性にもかかわらず、アフリカ大陸の視覚文化を全体として考えるとき、何かしら統一的な美術上のテーマが確かにあるように思われる。
''形式の革新'' - 美術作品が厳格な表象の規範に従って生産される傾向にある「西洋」社会と違い、多くのアフリカ社会ではアーティストに対して様式・形式の革新と創造を促している。この革新と多様性は、大きな歴史的・地理的ひろがりの間にだけでなく、村と村との間にさえ見られるものである。
''視覚的抽象'' - アフリカの美術作品は自然主義的な再現よりも視覚的抽象を好む傾向にある。これは多くのアフリカ美術の作品が、メディウムによらず、対象や概念を描写するよりも表象する傾向にあるからである (もちろんここには例外があり、最も著しいものでは古代エジプトの美術品に加えてイレ・イフェのヨルバ市の頭部肖像がある)。
''彫刻の重視'' - アフリカのアーティストは2次元の作品よりも3次元の作品を好む傾向にある。多くのアフリカ絵画や布の作品でさえ、3次元的に体験されるよう意図されている。家屋に描かれた絵画はしばしば家を取り囲む連続したデザインとして見られ、その全体を体験するためには作品の周りを巡ってみなければならない;また装飾された布は装飾的または儀式的な衣装として身に着けられ、着る人を生きた彫刻に変える。
''パフォーマンスの重視'' - アフリカ美術は静的な文脈よりもパフォーマンスの文脈で用いられる傾向がある。よく知られたアフリカの仮面を挙げてみよう。ほとんどのアフリカ社会ではそのマスクに名前があるが、その一つの名前は彫刻にだけ組み込まれているのではなく、仮面のもつ意味、それに関連するダンス、そしてそこに宿る精霊にも組み込まれているのである。アフリカの思考においては、これらは切り離すことのできないものであり、どのような形のものであれアフリカ美術を研究する際にはこれを考慮することが重要である。
''意味の多重性'' - 最後に、前述の点と関連して、アフリカ美術は意味を多重に持つ傾向があり、これは多くの西洋の観察者にとって混乱の元となっている。あるアフリカ美術作品の意味についての特定の説明を探索する作業は、1点の作品に含まれうる様々な用途、意味、社会的文脈によって、すぐに際限なく混乱してしまうだろう。
==範囲==
「アフリカ美術」という用語には長く、意外なほど物議をかもした歴史がある。近年に至るまで、通常「アフリカの」との指定は「ブラック・アフリカ」、つまりサハラ以南のアフリカの文化とそこに暮らす人々の美術に対してだけ使われてきた。古代エジプト美術と同様に、北アフリカ、地中海沿岸、エチオピアの美術は「アフリカ美術」とは言われなかったのである。最近では、アフリカ美術史やその他の学者たちの間には、これらの地域の文化は実際にアフリカ大陸の地理的境界の内側に起こったものであるという理由から、そうした地域の視覚文化を「アフリカ美術」という用語に含めようという動きがある。全てのアフリカ文化とその視覚文化を「アフリカ美術」という用語に含めることによって、サハラ砂漠の南北両側の大陸に存在し、またかつて存在した文化の多様性について、専門家でない人々がより良い理解を得られるだろうという発想である。アフリカ、イスラム、地中海の文化はしばしば合流したため、イスラムと古代エジプト、地中海および伝統的なアフリカ社会の間に明確に線引きをしてもあまり意味がないということに学者たちは気付いたのである。最後に、ブラジル西インド諸島、合衆国南東部に広まっているアフリカのディアスポラの人々の美術は、追放されたアフリカの諸民族と、彼らと新しい世界や文化との出会いの産物として「アフリカ美術」研究に含まれ始めている。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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