|
アプト式(Abt system)とはラック式鉄道の方式の一つである。カール・ローマン・アプトが1882年に特許を取得した方式で、「アプト式」の名称は開発者の名前にちなむ。「Abt」のドイツ語発声に近い片仮名であるが、日本では過去にアブトと表記されたこともあった〔アブトは英語式の発音とされ、長らく用いられてきたが、1953年頃から語源にもとづいてアプトに変わった(『鉄道ピクトリアル』377号、49頁)。〕。 日本の営業用路線ではこの方式によるラック式鉄道しか存在しなかったため、ラック式鉄道そのものを「アプト式」と誤解して呼ぶことがある。なおラック式鉄道にはアプト式の他にマーシュ、リッゲンバッハ、シュトループ、ロヒャー、フォンロールの各方式があり、いずれも現存している。 == アプト式ラックレール == 種々あるラック式鉄道のうち「アプト式」とは、2枚または3枚のラックレール(Rack-rail)およびピニオンギア(Pinion-gear)を位相をずらして設置する方式を指す。複数の歯の位相をずらすことにより駆動力の円滑化および歯の長寿命化を図るとともに、常にピニオンのいずれかの歯がラックレールと深く噛み合っていることにより安全性の向上が図られている。 登山鉄道はもとより亜幹線鉄道にも世界各地で広く採用され、特にスイスを中心とした欧州の鉄道に多く存在している。日本では、信越本線の碓氷峠では3組のラックピニオンを120度ずらして使用していた。大井川鐵道井川線も3組のラックピニオンを使用している。2組のラックピニオンを180度ずらして使用している例としては、スイスの氷河急行で有名なマッターホルン・ゴッタルド鉄道や蒸気機関車で有名なブリエンツ・ロートホルン鉄道などがある。 日本の鉄道では以下の路線・区間で採用されている。 * 1893年~1963年 国鉄信越本線横川駅~軽井沢駅間 * 1990年~ 大井川鐵道井川線アプトいちしろ駅~長島ダム駅間 碓氷峠はラックレールの位置が左右のレールより高く、大井川鐵道井川線は低いという相違がある。このため碓氷峠はキハ58系など一部の車両が通過できず、逆に大井川鐵道井川線は通過車両に制約がないものの分岐器がピニオンを避けるために特殊な構造となっている。 なお信越本線横川~軽井沢間が廃線になった後、碓氷峠鉄道文化むらが開設され鉄道資料館などでアプト式の展示を行っている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「アプト式」の詳細全文を読む スポンサード リンク
|