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アメリカン・ニュー・シネマ : ウィキペディア日本語版
アメリカン・ニューシネマ
アメリカン・ニューシネマ()は、1960年代後半から1970年代にかけてアメリカで製作された、反体制的な人間(主に若者)の心情を綴った映画作品群を指す日本での名称。ニューヨークを中心としたムーヴメントである「''New American Cinema''」とはまったくの別物である。米国では、この時代を「Hollywood Renaissance」と呼称する。
1967年12月8日付『タイム』誌は『俺たちに明日はない』を大特集し、「ニューシネマ 暴力…セックス…芸術! 自由に目覚めたハリウッド映画」という派手な見出しの記事の中で、この新しい米国映画の動向をレポートした。
== 誕生とその特徴 ==
1940年代までの黄金時代のハリウッド映画は、「観客に夢と希望を与える」ことに主眼が置かれ、英雄の一大叙事詩や、夢のような恋物語が主流でありハッピー・エンドが多くを占めていた。1950年代以降、スタジオ・システムの崩壊やテレビの影響などにより、ハリウッドは製作本数も産業としての規模も凋落の一途を辿り、また「赤狩り」が残した爪痕などにより黄金時代には考えられなかった暗いムードをもった作品も少なからず現れた。アルフレッド・ヒッチコックチャールズ・チャップリンフリッツ・ラングウィリアム・ディターレダグラス・サークといった戦前戦後を通じてヨーロッパから移住、亡命してきた映画作家たちや、ニコラス・レイアンソニー・マンサミュエル・フラージョセフ・H・リュイスらいわゆる「B級映画(''B movie'')」とよばれる中小製作会社の低予算映画作家のなかにその萌芽はあった。
一方、ヨーロッパにおいては、戦後イタリアのネオレアリズモシネマ・ヴェリテの手法が各国の若者に深い影響を与え、1950年代中期ロンドンフリー・シネマに始まり、1950年代末期から、パリヌーヴェルヴァーグリスボンノヴォ・シネマ、ロンドンのブリティッシュ・ニュー・ウェイヴプラハチェコ・ヌーヴェルヴァーグオーバーハウゼンで始まるニュー・ジャーマン・シネマウッチおよびワルシャワポーランド派ジュネーヴの「グループ5」を台風の目とするヌーヴォー・シネマ・スイス、そして南米ブラジルシネマ・ノーヴォニューヨークニュー・アメリカン・シネマ、はるか東京増村保造羽仁進大島渚ら)まで飛び火し、世界を覆う空前のニューシネマ運動が起きていた。
いずれも若い監督による新しい感覚や手法を特徴としている。当時ニューヨークには、ヨーロッパからの移民であったジョナス・メカスD・A・ペネベイカーリチャード・リーコックらのドキュメンタリー作家や、現代美術作家アンディ・ウォーホルスタン・ブラッケージジャック・スミスマイケル・スノウホリス・フランプトンら実験映画作家、ネオレアリズモの影響を色濃く受けたジョン・カサヴェテスらがそれに呼応していた。またカリフォルニア州にも、10代にしてビアリッツの「呪われた映画祭」(1949年)に参加したケネス・アンガーなどの実験映画作家がいた。
ベトナム戦争への軍事的介入を目の当たりにすることで、国民の自国への信頼感は音を立てて崩れた。以来、懐疑的になった国民は、アメリカの内包していた暗い矛盾点(若者の無気力化・無軌道化、人種差別、ドラッグ、エスカレートしていく暴力性など)にも目を向けることになる。そして、それを招いた元凶は、政治の腐敗というところに帰結し、アメリカの各地で糾弾運動が巻き起こった。アメリカン・ニューシネマはこのような当時のアメリカの世相を投影していたと言われる。
ニューシネマと言われる作品は、反体制的な人物(若者であることが多い)が体制に敢然と闘いを挑む、もしくは刹那的な出来事に情熱を傾けるなどするのだが、最後には体制側に圧殺されるか、あるいは個人の無力さを思い知らされ、幕を閉じるものが多い。つまりアンチ・ヒーロー、アンチ・ハッピーエンドが一連の作品の特徴と言えるのだが、それは上記のような鬱屈した世相を反映していると同時に、映画だけでなく小説や演劇の世界でも流行していたサルトルの提唱する実存主義を理論的な背景とした「不条理」が根底にあるとも言われる。
低予算映画の流れにはロジャー・コーマンらがおり、アメリカン・ニューシネマの底辺部を、彼ら独立系の映画作家、映画プロデューサーが支えた。そこにはモンテ・ヘルマンピーター・ボグダノヴィッチジョナサン・デミデニス・ホッパージャック・ニコルソンピーター・フォンダロバート・デ・ニーロマーティン・スコセッシフランシス・フォード・コッポラらがいた。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「アメリカン・ニューシネマ」の詳細全文を読む

英語版ウィキペディアに対照対訳語「 New Hollywood 」があります。



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