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アメリカ艦隊総軍 : ウィキペディア日本語版
アメリカ艦隊総軍[あめりかかんたいそうぐん]

アメリカ艦隊総軍(アメリカかんたいそうぐん、United States Fleet Forces Command、略称:USFLTFORCOM)は、アメリカ海軍の組織の1つ。部隊管理系統では海軍作戦本部(OPNAV)の、作戦系統ではアメリカ北方軍(USNORTHCOM、以下「北方軍」)の指揮をそれぞれ受ける。司令部はバージニア州ノーフォークに所在し、司令官には大将(4つ星)が充てられている。
== 沿革 ==
艦隊総軍は、その起源を大西洋艦隊(U.S. Atlantic Fleet、略称:USLANTFLT)に有する部隊である。2001年10月、当時の海軍作戦部長であるヴァーン・クラーク大将〔第27代海軍作戦部長。2000年7月21日から2005年7月22日まで、5年間(日数にして1827日間、アーレイ・バーク大将の約6年(2176日間)に次ぐ史上2位の長期)にわたり作戦部長職を務めた。後述する初代艦隊総軍司令官、ロバート・ナッター大将の前任者でもある。〕は、大西洋艦隊の下に、同艦隊と並列する組織として新たに「艦隊総軍」(U.S. Fleet Forces Command)を創設し〔“A Brief History Of U.S. Fleet Forces Command” 艦隊総軍公式サイトに設けられている、艦隊総軍の歴史を紹介するページ。艦隊総軍は大西洋艦隊に起源を持つということで、1906年の大西洋艦隊創設からの歴史が紹介されている。〕、その司令官には大西洋艦隊司令長官(Commander-in-Chief, Atlantic Fleet、略称:CINCLANTFLT)を「艦隊総軍司令官」(Commander, Fleet Forces Command)の職名を付与し兼任させる旨を決定した〔。この決定に伴い、当時の大西洋艦隊司令長官であるロバート・ナッター大将が、同日付で初代艦隊総軍司令官に就任した〔。
艦隊総軍の任務・役割については、「大西洋艦隊および太平洋艦隊の両艦隊につき、その隷下部隊の(展開期間の合間の)訓練期間中における人員・装備・訓練等に関する諸要求・政策を統括的に調整・設定・実施すること」とされ〔、主として部隊の訓練・錬成に関する業務を担当すること(後述する「フォース・プロバイダー」としての役割の付与)、直接の起源となった大西洋艦隊だけでなく太平洋艦隊についても影響を及ぼすこと(後述する管理・指揮命令系統の問題)といった、現在に至るまでの艦隊総軍の基本的性格・位置付けが決定された。また、司令部については、1948年よりバージニア州ノーフォークに置かれていた大西洋艦隊の司令部に併設された。指揮命令・管理系統については、訓練・錬成部隊としての性格と、旧大西洋軍(U.S. Atlantic Command、略称:USACOM〔1993年までは、USLANTCOMという略称を使用していた。〕)以来の流れ〔大西洋艦隊は、かつては大西洋地域を担当する地域別統合軍である大西洋軍(USLANTCOM、のち略称変更によりUSACOM)の隷下に置かれており、大西洋軍はキューバ危機を契機に隷下に陸軍や空軍の部隊を置くようになったものの(その経緯は統合参謀本部の統合歴史室が刊行している''“The History of the Unified Command Plan 1946-1993” '' に詳しい)、その主力戦力は創設以来一貫して大西洋艦隊隷下の海上部隊であった。また、陸軍部隊の司令官(大西洋陸軍司令長官、CINCARLANT)や空軍部隊の司令官(大西洋空軍司令長官、CINCAFLANT)がともに専任でなかったこともあり、専任かつ主力戦力の司令官であるCINCLANTFLTがCINCARLANT、CINCAFLANTに比して重要度の高いポストとして扱われた。このような背景から、1947年の大西洋軍創設以来、1985年10月に改められるまでの約40年間にわたり、大西洋軍司令長官(Commander-in-Chief, U.S. Atlantic Command)が大西洋艦隊司令長官、さらにはNATO大西洋連合軍最高司令官SACLANT)を兼ねるという人事が採られてきた。1985年10月をもって、大西洋軍司令長官職と大西洋艦隊司令長官職の兼任人事は廃され、大西洋艦隊司令長官は新たに大西洋軍副司令長官(Deputy Commander-in-Chief, U.S. Atlantic Command)を兼ねることとされた。ただし、その兼任人事も1986年9月に1年足らずで廃されている。〕を組んで統合戦力軍(USJFCOM)を引き続き上級部隊としたほか、艦隊総軍創設と同日の2002年10月1日付で、それまで統合戦力軍が担っていた本土防衛任務が2001年同時多発テロ事件の教訓をもとに新設された北方軍(USNORTHCOM)に移管されたことから〔''“A Short History of UNITED STATES NORTHERN COMMAND”'' 北方軍の公式サイトにて公開されている、北方軍の歴史・沿革をまとめた資料。〕、北方軍エリアにおける海軍部隊を要する作戦・訓練に関しては北方軍の指揮・管理も受けることとされた〔。
その後短い期間を経て、大西洋艦隊司令長官兼艦隊総軍司令官のポストは再び役職名変更を受けることになる。艦隊総軍創設と同日の2002年10月1日、当時のドナルド・ラムズフェルド国防長官は、「''“Commander-in-Chief”''という称号は、軍の最高司令官である合衆国大統領だけに称することが許されたものである。」として、序数艦隊(番号付き艦隊、ナンバード・フリート)の「司令官」(''Commander'')と区別する意味合いで長らく「司令長官」(''Commander-in-Chief'')と呼ばれていた太平洋艦隊司令長官、大西洋艦隊司令長官、在欧合衆国海軍部隊司令長官の3つの司令官ポストにつき、「司令長官」から「司令官」へと呼称を変更するよう通達を発した。この通達は同年10月24日付で有効となり、これに従い「大西洋艦隊司令長官兼艦隊総軍司令官」職は「大西洋艦隊司令官兼艦隊総軍司令官」へと呼称が変更された〔。
2003年よりアメリカ海軍は、前年10月にクラーク海軍作戦部長が発表した新世紀の海軍戦略構想「シー・パワー21」(“''Sea Power 21''”)〔“''Sea Power 21''” ''By Admiral Vern Clark, U.S. Navy'' (Proceedings, October 2002) 〕を実行段階へと移行させた。この「シー・パワー21」に基づく諸政策の実施により、艦隊総軍はその重要性を大きく増すことになる。「シー・パワー21」は、「シー・ストライク」(Sea Strike)〔下平拓哉「シー・ベーシングの将来」(海上自衛隊幹部学校『海幹校戦略研究』第2巻第1号(通巻第3号、2012年5月刊)、109-125頁)では「海上打撃力」と訳されている。〕〔“Sea Power 21”の原文および前掲・下平(2012)によれば、「シー・ストライク」の目指すところは「統合作戦における決定的かつ持続的な戦力の投射」であり、情報・偵察・監視(ISR)能力などの情報収集・情報支配に必要な諸能力、より多様な戦力オプションを備えることで、前者で得た情報に基づき後者による圧倒的・持続的かつ精密な攻撃を行うというものである。敵による聖域化を拒否する能力を期待したものとされる。〕、「シー・シールド」(Sea Shield)〔前掲・下平(2012)では「海上防楯」と訳されている。〕〔打撃力・攻撃力に焦点を置いた「シー・ストライク」と対をなす、防御力に焦点を置いたコンセプト。本土防衛能力、沿岸域における優越的能力(紛争地域の沿岸域へのアクセス能力)、ミサイル防衛能力といった諸能力により、制海権や前方プレゼンスなどを確保し、地球規模での防衛力を確保することを目指す。特に、敵による作戦区域に対する支配を拒否する能力を期待したものとされる。〕、「シー・ベーシング」(Sea Basing)〔前掲・下平(2012)では定訳は与えられていない。〕〔前掲・下平(2012)では、「シー・ベーシング」の定義を「不明確」とする。そのうえで、「シー・ベーシング」とは「シー・ストライク」「シー・シールド」に要するパワーを投射するうえで、防御力・抗堪力の面で劣る陸上基地の脆弱性を減じるため、より安全かつ機動的でネットワーク化された海上作戦拠点(シー・ベース)の構築を目指すもの、と捉えている。〕の3つを実現・獲得すべき目標の柱とし〔、それらを具現化するため「シー・エンタープライズ」(Sea Enterprise)〔前掲・下平(2012)では「艦隊への資源配分」と訳される。〕、「シー・ウォリアー」(Sea Warrior)〔前掲・下平(2012)では「兵士への投資」と訳される。〕、「シー・トライアル」(Sea Trial)〔前掲・下平(2012)では「革新プロセス」と訳される。〕の3つの政策を掲げた。このうち、様々な試験やウォー・ゲーミング、演習を通じてスピーディな技術革新を図ろうとする「シー・トライアル」は、艦隊レベルで実施を主導し、艦隊総軍司令官がこれを統括するものとされた〔。さらに「シー・トライアル」実現をサポートするための組織として、海軍大学校の下に置かれていた海軍戦闘開発コマンド(NWDC)が艦隊総軍隷下に移管された。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「アメリカ艦隊総軍」の詳細全文を読む



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