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美術商[びじゅつしょう]

美術商(びじゅつしょう)、またはアートディーラー(Art Dealer)とは、美術家から美術品を仕入れ、それをコレクターなどの顧客に販売する業者である。また、他の業者やコレクター、オークションなどから美術品を買い取って、さらに他業者への転売も行う者もある。規模は百貨店の美術部や商社系ギャラリーなど大きなものから、先祖代々続く古美術商、美術愛好家やビルオーナーなど個人が営業するギャラリーまで、大小さまざまである。
絵画を扱う美術商は画商ともいう。また、美術商が自前の作品展示・販売スペース(ギャラリー)を持っている場合は画廊ギャラリー、あるいはギャラリスト(Gallerist)などと呼ばれることもある(かつて日本では、自前の店を持つ美術商のことを、画廊を持たない美術商である「旗師」に対し、「箱師」という俗称で呼んだ)。ギャラリスト(画廊主)は、自前のスペースを持ち、自ら見出した契約作家を育成しギャラリーで最高の状態で展示するというリスクを抱えながら、美術家をプロモートし美術家と共に歩んで美術を育成する存在であり、単に作品を安く買い高く転売することを目的とするブローカーディーラーとは区別すべき存在である。ギャラリストは、いい美術品を求める顧客と美術品を売りたい作家を仲立ちし、結果、社会と美術界をともに発展させる仕事といえる。
それぞれの美術商には分野や時代、地域などの専門分野があり、たとえば古美術を扱う美術商や、現存作家や物故作家など比較的最近の作品を扱う美術商などがいる。茶道具と現代美術といった異なる分野を同時に扱う美術商はめったにいない。質や専門性、信頼性を保つためには、画廊としての専門分野や取り扱い作家や見識を決め、それに沿った企画展示をすることで顧客に訴えることも重要である。
美術商は、価値を見抜くために、すぐれた美術を数多く見て「見る眼」を鍛えておくこと〔佐谷和彦 pp.11-16〕、また、見る眼と資金を持つ顧客といった良質の販売ルートを抑えることが望ましい。
== 作品の入手 ==

=== 古美術商・物故作家 ===
古美術商の場合、古美術品を手に入れる機会は販売依頼、発掘、鑑定、転売などである。これは数千年前の発掘品から、数年前など比較的最近に亡くなった物故作家の作品の場合も同じである。美術品を手に入れる場合はコレクターや名家などから伝来の品の売却を依頼され真贋や価値を鑑定し値をつけ、売却できた場合代金から手数料を受け取ることとなる。(また、鑑定自体にも手数料があり、美術商の重要な収入源である。)しかし古美術品を手放す人はそう多くはないため、極端な場合は旧家の解体現場に居合わせて蔵から出てきた物をより分けたり、没落した家から二束三文で買い取ったりする場合すらある。偽造贋作作成、盗掘盗難は古美術入手の手段としては論外であるが、こういった話は後を絶たない。
古美術品を手に入れる場合、美術品が本物かどうか、どの程度で売れるのかを鑑定することは死活的に重要である。このため、美術商には作品の細部や良し悪しを判断する「眼」、美術品や美術史の知識、茶道ほか当該分野の美意識、美術市場の価格動向、美術品の過去の所有者の来歴や美術品を持ち込んだ者の人物に対する調査や判断(盗品や担保品を売りさばく人物もいる)が必要である。特に、本物を見抜く眼や良い作品を選ぶ感覚を養うため、良い作品や本物をいかに多く見るかが重要だ、といったことが美術関係者の間では言われる〔三杉隆敏 pp.124-133〕。ある人物が作品を一見しただけでほれ込むような場合でも、その背後にはそれまで彼が体験した多くの作品鑑賞やそこから培った彼なりの美意識がある。そのため美術商は、多くの実物の作品に触れる経験を持つために他の美術商のもとで働いてから独立することが多い。
また、数百年前の古美術といえども21世紀の今も評価は定まっておらず、たとえば19世紀になって再発見されたヨハネス・フェルメール20世紀になって再発見されたジョルジュ・ド・ラ・トゥール1970年辻惟雄の『奇想の系譜』が出版されて俄然再評価された伊藤若冲長沢芦雪曾我蕭白などの例もあるため、未知の作家の発掘なども、目利きとしての美術商の重要な役割である。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「美術商」の詳細全文を読む

英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Art dealer 」があります。



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