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イヌの起源 : ウィキペディア日本語版
イヌの起源[いぬのきげん]
イヌの起源(イヌのきげん)では、イヌ科家畜種であるイエイヌ学名 ''Canis familiaris'' または ''Canis lupus familiaris'' 、以下イヌ)の起源、すなわち、イヌがその祖先となった動物から、いつ、どこで、どのようにして分かれ、イヌとなったかについて解説する。
イヌは、リンネ(1758年)以来、伝統的に独立種 ''Canis familiaris'' とされてきたが、D. E. Wilson and D. A. M. Reeder の Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (1993年版)において、その分類上の位置づけはタイリクオオカミ(''Canis lupus''、以下オオカミ)の亜種とされ、学名も ''C. lupus familiaris'' に改められた。最近ではこの分類と学名が受容されつつあるが、依然、独立種 ''C. familiaris'' としている研究者も少なくない〔生物学論文データベースPubMed で、検索をかけると2009年時点でも複数の論文が''C. familiaris''表記を採用していることが分かる(検索欄に"Canis familiaris"・ダブルクオーテーション込みのキーワード入力して検索実行)。〕。
== 遺伝的に見たイヌの起源 ==


イヌの直接の祖先が現生のどの動物であるかという説は、後述するとおり複数のものがあった。
1990年代以降に急速に発展した分子系統学の知見に基づき、2000年代の時点では、イヌの祖先はオオカミとする説が一般的である〔猪熊壽(著), 林良博・佐藤英明(編), 2001.『イヌの動物学』東京大学出版会: pp.15-20.〕〔スティーブン・ブディアンスキー(著)、渡植貞一郎(訳) 2004. 『犬の科学 ほんとうの性格・行動・歴史を知る』築地書館: pp.27-31.〕〔田名部雄一, 2007. イヌの起源と日本犬の成立. 生物の科学 遺伝. Vol.61 No.4: pp.55-61.〕。つまり、人間がオオカミを家畜化(=馴化)し、人間の好む性質を持つ個体を人為的選択することで、イヌという動物が成立したと考えられている〔村山美穂, 2007. オオカミからイヌへ. 生物の科学 遺伝. Vol.61, No.4: pp.66-69.
〕。
イヌ属にはイヌ・オオカミ(''C. lupus'')の他に、野生化したイヌであるディンゴ(''C. lupus dingo'')、独立種として複数のジャッカル(''C. aureus'', ''C. mesomelas'', ''C. simensis'')とコヨーテ(''C. latrans'')、交雑種アメリカアカオオカミ(''C. lupus × latrans'')が含まれる。これらの間には地理的あるいは生態的な要因によって生殖的隔離が見られるが、人為的には相互に交雑が可能であり、子孫も繁殖力を持つ〔猪熊壽ら,2001. pp.10-11.〕。
このことから、かつてはオオカミ起原説のほかに、オオカミとジャッカル(あるいはコヨーテ)が混じっているとする説や、イヌの祖先として(すでに絶滅したパリア犬や、オーストラリアに現生するディンゴのような)「野生犬」の存在を仮定する説などがあった〔。チャールズ・ダーウィンも、これら複数のイヌ属動物にイヌの祖先を求めたが、確定することはできなかった〔猪熊壽ら,2001. pp.17-20.〕。しかしながら、2000年代までの分子系統学・動物行動学など生物学緒分野の発展は、オオカミ以外のイヌ属動物の遺伝子の関与は小さく、イヌの祖先はオオカミであるという説を支持する結果をもたらしている〔。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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