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「インディアン・マスコット」は、アメリカ合衆国のプロ・アマのスポーツ団体が使用する、インディアン民族を意匠化したチーム名や、応援マスコットの総称。 ==概略== 合衆国の白人社会では、白人が黒人に扮した「ミンストレル・ショー」と同様に、すでに18世紀から、白人の催しなどで白人がインディアンに扮する歴史があった。20世紀に入り、プロ・アマのスポーツ競技が盛んになるにつれ、全米のスポーツチームがこぞってインディアンをイメージした意匠を採り入れるようになった。インディアンのスポーツマスコットには、次のようなものがある。 #「チーフス」、「インディアンズ」、「レッド・スキンズ」、「ウォリアー」、「ブレーブス」などといった、インディアン民族をイメージしたチーム名 #インディアン男性の顔などを意匠化したチームマーク #試合の合間に登場して応援を盛り上げるインディアンのマスコットキャラクター プロ・アマのフットボールや野球の試合では、これらの「インディアン・マスコット」を基に、白人の観客たちが顔を「インディアン風」にペイントし、「インディアン風」の羽根飾りを被ったり、デタラメな太鼓演奏を行い、トマホーク型の応援バットを振り回す(「トマホーク・チョップ」という)、といった試合応援が行われている。現在もインディアン民族や識者からの「人種差別である」との批判と抗議を受けながらも、小中高から大学、プロのスポーツチームで、なおこの「インディアン・マスコット」の使用を継続している団体は多い。 スーザン・ショーン・ハルジョやシャーリーン・テッタース、ヴァーノン・ベルコートといった反「インディアン・マスコット」運動家たちは、「インディアン・マスコット」の問題点として、チーム名として使用される単語が「サベージズ」だとか「ブレーブス」、「ファイティング・○○」といった、「野蛮さ」を強調するものであり、部族名がそのままチーム名にされるなど、そのこと自体がインディアン民族に対する攻撃であり、組織的な人種差別である、としている。「ワシントン・レッドスキンズ」の「レッドスキンズ」(赤い肌)は、インディアンに対する蔑称であるだけでなく、白人によるインディアン虐殺を象徴する単語である。レッドスキンズのチーム・ロゴは「インディアンの頭」を意匠化しているが、「レッドスキンズ」は「インディアンの生首」を意味していた時代もあった。 また、「ワフー酋長」、「イリニウェク酋長」、「オセオーラ酋長」など、有名な「インディアン・マスコット」の姿がインディアンの文化とはかけ離れたデタラメなものであることもインディアンの怒りを買っている。ワフーやイリニウェクが着けている赤い鷲の羽は戦傷者に贈られるもので、本来頭に着けるものではない。イリニウェクやオセオーラは白人が演じており、その顔のペイントも羽根飾りも踊りも全くデタラメなものである。「イリニウェク酋長」や「オセオーラ酋長」は、試合の合間で選手を鼓舞し、楽団を率いるようなパフォーマンスを行うが、これは本来のインディアンの酋長の姿ではない。インディアンの酋長は、部族を率いたり戦いを指導するような立場ではない。 すべては白人のイメージする「インディアン」像に基づいており、そのすべてが本来のインディアンとは全くかけ離れたものである。インディアン団体は、「こういったイメージは、19世紀に米軍によって破壊されたインディアンの文化について、学ぶ時間をとらなかった白人たちによって作られた、ステレオタイプである」と述べている。 「AIM」代表のクライド・ベルコートは、「インディアン・マスコット」について、次のように述べている〔『New Jersey State Bar Foundation』(「Native American Mascots: Racial Slur or Cherished Tradition? 」、2003年)〕。 また、「インディアン・マスコット」を囲む問題構図として、これらのキャラクター意匠が、球団や大学の白人ファンに強く支持されていることが挙げられる。「インディアン・マスコット」を擁護する白人や関係者の多くが、「インディアン・マスコット」のデタラメさを無視し、「インディアン・マスコットを支持することはインディアン民族の文化を守ることになり、敬意を表すことになる」と主張しているのである。「ワシントン・レッドスキンズ」球団は、「レッドスキンズ」のチーム名が「インディアン民族に栄誉を与えるものである」としている。全米の、「インディアン・マスコット」を使用している高校や大学が、同じことを主張している。 イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のキャロル・スピンデル教授は、「インディアン・マスコットを使用している学校は、大学対抗試合の中では、そのイメージの扱いを制御できない」と述べている。大学対抗の試合前のキャンパス集会の間に、白人学生たちはしばしばインディアンの人形を絞首刑にしたり、火炙りにする。そして「下卑た悪魔」として、頭の皮を剥がれ首を斬り落とされたインディアンの姿がガラス窓に描かれる。 多方面からの抗議と批判に関わらず、多くのプロスポーツ球団が「インディアン・マスコット」の使用を継続する最大の理由として、その経済効果が指摘されている。実際に「クリーブランド・インディアンズ」の「インディアンズ」や「ワフー酋長」の意匠を使用したキャラクターグッズの売り上げは、年間で2000万ドル以上と見積もられているのである。 さらに、多数のインディアン団体・個人の抗議にもかかわらず、この「インディアン・マスコット」を容認する部族が少なからずあり、全米に見られる「インディアン・マスコット」についての地元のインディアン部族の対応がまちまちであることも問題を根深いものとしている。「一体、インディアンたちがこのインディアン・マスコットをどうとらえているのか」、という肝心な点については、投票すら一致していない。『スポーツ・イラストレイテッド』誌は2002年に実施した調査によって、伝統的なインディアン保留地の外で生活しているインディアンの81%と、保留地に住むインディアンの53%が、「インディアン・マスコットのイメージが差別的であるかどうかわからない」と答えた、としている。 この1年後に、『Indian Country Today』紙が実施した世論調査は、まったく正反対の結果となった〔『Washington Post』(「Indian Mascots: Matter of Pride or Prejudice?」By Darryl Fears、2005)〕。回答者の81%が、「インディアン・マスコットのイメージが、アメリカインディアンを侮蔑するものである」と答えたのである。調査員はまた、回答者の75%が、「インディアン・マスコットが合衆国の反差別法を侵犯している」と答えたと報告しているのである。 他者起因の問題によってインディアンたちの意見が二分され、またインディアンの容認意見を後ろ盾に、あくまで「インディアン・マスコット」を使い続けている白人側の姿勢、これを人種差別とする一連の論争、これらそのものを、インディアンの識者の多くが「インディアン戦争」であると位置付けている〔『Sports Talk (A Longman Topics Reader) 』(Chapter 4:OF POLLS AND RACE PREJUDICE Sports Illustrated "Errant 'Indian Wars'",Longman 2008年) 〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「インディアン・マスコット」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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