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『カンビュセスの籤』(カンビュセスのくじ)は、藤子・F・不二雄(発表時は藤子不二雄名義)による日本の漫画。『別冊問題小説』(徳間書店)1977年1月号に掲載された。本作品を表題とする中央公論社の愛蔵版『SF全短篇』第1巻、または『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』第4巻などのSF短編集に収録。 1991年にOVA化された。終末戦争後の世界に身を置かれた男女の姿を通して、人間が生きることの意味を問う作品。 == あらすじ == 紀元前500年頃、ペルシア王カンビュセスは5万の軍勢でエチオピア〔史実ではクシュと伝えられる、エチオピアとは当時のアフリカの広範囲の地域を指す言葉〕遠征を企てたが、やがて食糧が尽き、乗馬も草木も食べ尽くした兵士達が生きるために選んだ手段は、10人が1組となって籤(くじ)を引き、当たった1人を糧食とする残酷なものだった。 籤に当たった兵士・サルクは逃亡し、霧のかかった地で追っ手を撒くが、霧から抜け出た時、そこには不毛の沙漠が広がっていた。やがてサルクは遠くに建物らしきものを見つけ、助けを求めて中に入ると、そこは見たこともない空間が広がり、言葉の通じないエステルという少女がいた。力尽きたサルクは意識を失って倒れる。 気が付くと、サルクは小さな部屋のベッドの上に寝ており、見たこともない服に着替えさせられた上に、生やしていた顎鬚も綺麗に剃られていた。そこにエステルが食料と水を持って入ってきたが、その少なさに不満を抱く。後で勝手に食料を持ち出そうとするがエステルに見つかり、理不尽なほどに激怒される。サルクは足枷を嵌められ、行動を制限されてしまう。隙を見て逃げ出すこともできず、決まった時間に水と食料を供給される。「自分は何のためにここにいるのか」サルクは解らないまま月日が経過していった。やがてその食料も最後の分となり、エステルは次の「冬眠」の時が来たと告げた。そのためにはサルクの協力が必要で、互いの意思の疎通を図るために、エステルは壊れていた翻訳の機械の修理を急いだ。 翌日、翻訳の機械が直り、ようやく会話が出来るようになる。サルクの事情を聞いたエステルは、今度は自分の身に起こったことをサルクに語り始めた。ここは23万年後の未来の地球で、人間同士の終末戦争で荒れ果てて、植物も育たない状況だという。生き残った人類だけでシェルターに身を潜めており、シェルターでは全員が限度1万年の人工冬眠装置に入り、その間に宇宙に向けて救援信号を送っていた。しかし、1万年の間何の返答もなく、食料は底をつく。次なる1万年間の冬眠をとるには、食料を摂取し、体を休養させる必要があった。そこで、冬眠のたびに籤で1人を選び、食料(ミートキューブ)にして生き延びるという手段をとってきたのだ。それを続けた結果、エステルが最後の1人になってしまった。 この話を聞いたサルクは、自分が食べたミートキューブが人間であると知り、愕然とする。エステルは2本の籤を差し出し、どちらが食料になるか籤引きで決めると言い、「籤を引いて」とサルクに詰め寄る。サルクは、ためらいながら籤を引くが、「何故そこまでして生き延びなければならないのか」と言い放ち、引いた籤も見ずに投げ捨てて、まだどこかに食料があるかも知れないと、外の世界に飛び出す。エステルはサルクを呼び止めようとし、「私達には生き延びる義務があるの」と彼の背後から必死に語り続けた。 数時間後、やはり外には不毛の沙漠しかないと悟ったサルクは、食料になる決心をしてシェルターに戻ってくる。しかし、待っていたエステルは、サルクの引いた籤はハズレの籤で、食料になるのは自分だと話した。サルクはそれを咎めるが、「籤は絶対」とエステルは自分がサルクの食料になることに何の抵抗も示さなかった。淡々とミートキューブの作り方を話すエステルを前に、サルクはただ途方に暮れるばかりだった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「カンビュセスの籤」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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