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ガイガー・カウンター : ウィキペディア日本語版
ガイガー=ミュラー計数管[がいがー=みゅらーけいすうかん]

ガイガー=ミュラー計数管(ガイガー=ミュラーけいすうかん、Geiger-Müller counter)は、1928年ドイツハンス・ガイガーヴァルター・ミュラーが開発したガイガー=ミュラー管(Geiger-Müller tube)を応用した放射線量計測器である。
ガイガー・カウンター(Geiger counter)あるいはGM計数管とも呼ばれる。
==概要==
ガイガー=ミュラー計数管(GM管)は、主に放射線測定装置に用いられる部品。電離放射線を検知し、その回数をカウントできる〔高度情報科学技術研究機構RIST 〕〔神奈川歯科大 〕。カウント数はポアソン分布に従い、十分計数が多い場合は平均=分散とおいたガウス分布で近似できる。
不活性ガスを封入した筒の中心部に電極を取付け陰陽両極に高電圧を掛けるが、通電はしていない。筒中を放射線が通過すると不活性ガスが電離され、陰極陽極の間にパルス電流が流れるのでこの通電回数を数える。この回数が多いほどに高い線量と言うことになる。
非常に利得が高く〔GM 計数管の特性 一般の電気計測器に比較して桁違いに高い感度:東京理科大学理学部 物理学科 〕強い信号を得られる半面、一回の電離で生じた電子が次々と電離を引き起こすため放射線の持つエネルギーと出力信号の強さは比例関係にはならないので、パルス電流が流れた回数の計測 (つまり線量(=放射線の回数)の測定) のみに使用され、放射線の持つエネルギー(電子ボルト)量を測定すること (つまり核種の同定) には用いられない。この装置を用いた線量計は、カウント数からベクレルもしくはシーベルトへの換算表(機種ごとに固有の係数)が添付されている。放射線のエネルギーを知るためには比例計数管などが必要である。
このようにGM管では放射線のエネルギーがわからないため、吸収線量であるシーベルト(J/kgとエネルギーの単位であるジュールが入っている)は直接測定することはできない。しかしながらコバルト60やセシウム137のガンマ線を用いて、シーベルトがわかる測定器と同条件で測定し、あるシーベルトで何カウント(例えば1μSv/hで120cpm)かを対応させておく実験(校正という)をしておけば、シーベルトに換算することができる。しかしながらこれは校正に用いた核種のガンマ線のみをカウントしたときの被ばく線量であり、他の核種や線種まではわからないため注意が必要である。ベクレル(Bq/m2、Bq/m3など)も同様にして校正しておけば求められるが、これも校正しておいた核種しかなかったと仮定してのベクレルであり、他の核種の存在はわからない。
当該装置の発明からすでに80年近くの時間を経ているが、今日でもメジャーな線量測定装置である。ただしGM管にはその設計原理上、いくつかの固有の限界、弱点がある (徐々にカウント欠落が増える、特に高線量計測において顕著、等。一部後述)ため、実装は安価な測定器に限定され、表面線量を目安程度に計測するプライベートもしくは補助的な用途にとどまっている。
空間線量や積算線量の計測、学術・産業・業務・公的など実用的な線量計測用途にはより高価なシンチレーション検出器が使用される(これにも数種ある〔http://www.mikage.to/radiation/detector.html 放射線測定器の種類〕)。これは放射線などの帯電素粒子を樹脂などに通過させ、この瞬時の現象を光学的に連続検出する装置であり、電離パルス回数を計測するGM管より計測結果が様々な使用条件において高精度である〔シンチレータの原理 〕。GM管ではアルファ線やベータ線などの荷電粒子はほぼ100%検出できるものの、X線、ガンマ線といった電磁放射線に対する計数効率(いわゆる感度)は0.1〜1%にすぎない。
たとえば1μSv/hで約100cpmの感度とすれば、ガンマ線の重荷計数は1であるから1Sv=1J/kgであり、1μSvでは10-6J/kgの計算になる。一方で1本のガンマ線のエネルギーを1MeVとすれば、1eV=1.6×10-19であるので1MeVは約10-13J/kgのエネルギーを持つ。100cpmは1時間には6000カウントであるが、1MeVのガンマ線が6000回カウントされたとすれば、エネルギー総量は6×10-10J/kgであり、一方で1μSvでは10-6J/kgなため明らかに3〜4桁の差がある計算になる。これがGM管の感度の差であるといえ、1μSvの1%〜0.1%程度の感度と計算すればうなずける。
その一方でシンチレーション検出器では電磁放射線に対する感度は非常に優れているため〔によればNaI(Tl)で100%の感度を誇る〕、ガンマ線のみを測定するのであればそちらを用いたほうが良いわけである。シンチレーション検出器であればエネルギーがわかる機種も存在し、後述の半導体検出器には劣るものの線量の精密な測定やある程度の核種の分析なども行える。
特にガンマ線のさらに高度な分析、放射能(ベクレル)・エネルギー(スペクトル)・核種の同定の精密な計測には、素材にゲルマニウムなどを用いた半導体検出器が用いられるが、これは運用が非常に難しくコストもかかる。アルファ線やベータ線、中性子線などの測定には、ガンマ線専用とは違った素子を用いたそれぞれの線種に対応した専用のシンチレーション検出器などが用いられる。GM管でこれらを弁別するにはGM管を紙(アルファ線遮蔽)やアルミニウムやアクリル(ベータ線遮蔽)などで覆うことによってアルファ線、ベータ線を遮蔽することによって、これらの差分をとることにより、アルファ線やベータ線の有無が判別出来る程度であり、アルファ線やベータ線を放出する核種やベクレルを精密に測定したい場合はそれぞれの線種に対応した専用の測定器を用いる必要性がある。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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