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ウラン濃縮(ウランのうしゅく)とは、核分裂性のウラン235の濃度を高めるために行う同位体分離である。 ==概要== 天然ウランには、核分裂を起こさないウラン238(238U)が99.3%、核分裂を起こすウラン235(235U)が0.7%含まれている。 ウラン238とウラン235は、中性子3個分のわずかな質量差によって区別することができるが、化学的性質等にほとんど差異は無い。そこで、ガス拡散法や遠心分離といった質量差を利用した同位体分離技術が一般に用いられる。他にも、レーザー法、ノズル法、化学法(イオン交換法)などがある。 ウラン濃縮の行程から得られる生成物は、ウラン235の割合が高められた濃縮ウランと、ウラン235の割合が減じられた減損ウランに分けられる。天然ウラン中のウラン235の濃度 (0.7%) を超え、20%以下の生成物を低濃縮ウラン、濃度が20%を超える生成物を高濃縮ウランという。また、天然ウランよりもウラン235の濃度が低いウランを減損ウランといい、特にウラン235をほとんど含まないウランを劣化ウランという。 ウラン濃縮を行う意義は、ウラン燃料をより臨界させやすい状態に加工することにある。天然ウランを核燃料として利用できる原子炉は、黒鉛炉や重水炉に限られる。この炉型の原子力発電所は、ウラン原産国や重水生産国によって運転されている場合がほとんどで、基数にして全体の2割ほどしか建設されていない。低濃縮ウラン燃料を必要とするのは、主に軽水炉と呼ばれる原子炉である。中性子吸収が大きい軽水を減速材として用いるため、核分裂を維持するには濃縮度3%から5%程度のウラン燃料が必要になる。この炉型の原子力発電所は、安全性や経済性で総合的に有利になる場合が多いため、積極的に建設する国が増えている。従って、原子力産業における低濃縮ウランの需要は極めて高い。 ウラン濃縮における運用上の問題点は、核拡散の懸念である。原子力発電所で用いる低濃縮ウラン燃料と、原子爆弾に用いる高濃縮ウラン燃料の製造工程が原理的に同じであるため、ウラン濃縮に関わる物資や技術のみならず、運営そのものが厳しい監視下に置かれている。ウラン濃縮を行うには、高度な技術力と膨大な資金が必要なほか、多くの国際的な規制が伴うため、国家権力の下で行われるのが一般的である。しかしこれまでに、ウラン、フッ素、濃縮設備の設計図と部品など、ウラン濃縮に関連した物資の密輸ルートが複数確認されており、それらがある共通のネットワークの一部である可能性も示唆されている。これらの流通ルートには国家が介入している疑いが濃厚であるとされ、核拡散に関わる国際的な問題となっている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ウラン濃縮」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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