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キニーネ(またはキニン、)は、キナ(機那)の樹皮に含まれる分子式C20H24N2O2のアルカロイドである。 IUPAC名は(6-Methoxyquinolin-4-yl)-(R)-methanol。 1820年にキナの樹皮から単離、命名され、1908年に平面構造が決定し、1944年に絶対立体配置も決定された。 また1944年にロバート・バーンズ・ウッドワードらが全合成を達成した。 ただしウッドワードらの全合成の成否については後述の通り議論がある。 マラリア原虫に特異的に毒性を示すため、マラリアの特効薬としてヨーロッパ列強によるアフリカ進出を助けた帝国主義時代から第二次世界大戦頃までは極めて重要な位置づけにあった。 その後、キニーネの構造を元にクロロキンやメフロキンなどの人工的な抗マラリア薬が開発され、副作用が強いキニーネそのものは代替されてあまり用いられなくなっていった。 しかし、東南アジアおよび南アジア、アフリカ、南アメリカ中北部といった赤道直下の地域において熱帯熱マラリアにクロロキンやメフロキンに対して耐性を持つものが多くみられるようになったため、現在ではその治療に利用される。 また強い苦味を持つ物質として知られている。そのため、トニックウォーターに苦味剤として添加される。 日本では、劇薬に指定されている。 == 発見 == キナ属の植物は南米のアンデス山脈に自生する植物であり、原住民のインディオはキナの樹皮を解熱剤として用いていた。 マラリアはアメリカ大陸にはもともと存在しなかったが、後にヨーロッパ人の渡来とともに拡散したと推定されている。 その後偶然にキナ皮にマラリアを治療する効果が発見され、1640年頃にヨーロッパに医薬品として輸入されるようになったと思われる。この点に関しては、1640年、伯爵夫人Cinchon氏が、ペルーからキナ皮をヨーロッパに 輸入し、マラリアに対するキニーネ療法が始まったという説が、明治35年頃の日本では、信じられていた。 このキナ皮から活性成分を単離しようとする試みは18世紀中ごろから行われた。 キナ皮の需要の増加につれて品質の悪いものやニセモノが出回るようになったため、品質評価のために活性成分を定量分析する方法が必要になったのである。 1790年にはフランスのアントワーヌ・フールクロア(Antoine François Fourcroy)がキナ皮をアルコールや酸、アルカリなどで抽出する試みを行っている。 このとき彼はキナ皮を抽出した水相がアルカリ性になることに気が付いていた。 しかし、それ以上の研究を行わなかった。 1811年にポルトガルの軍医ベルナルディーノ・アントニオ・ゴメスはキナ皮をエタノールで抽出し、そこに水と少量の水酸化カリウムを添加すると微量の結晶が生じることに気がつき、これにシンコニンと命名した。 1817年にドイツでモルヒネが単離された。 このとき用いられた方法は酸によってモルヒネの塩を作り、それを単離するというものであった。 この方法に興味を持ったジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックは同僚のピエール・ジャン・ロビケにこの方法を紹介した。 ロビケの元で働いていたピエール・ジョセフ・ペルティエとジョセフ・ベイネミ・カヴァントゥはこの方法を用いて多くのアルカロイドを単離した。 1820年に彼らはゴメスが単離した結晶が単一物質ではなく、2つの物質、キニーネとシンコニンからなることを発見し、これらの分離に成功した。 この2つの物質のうち、キニーネのみが抗マラリア活性を持つことが分かった。 なお、彼らの単離したキニーネはロンドンのサイエンス・ミュージアムに展示されている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「キニーネ」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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