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キャヴェンディッシュの実験(キャヴェンディッシュのじっけん、英語: Cavendish experiment)とは、イギリスの科学者であるヘンリー・キャヴェンディッシュによって1797年から1798年にかけて行われた、実験室内の質量間に働く万有引力の測定〔Boys 1894 p.355〕 と地球の比重の測定を目的とした実験である。なお、本実験は今日の重要な物理定数である万有引力定数と地球の質量の計測を目的としたものではなかった〔Encyclopaedia Britannica 1910 p.385「キャヴェンディッシュのような実験の目的は地球の質量や...その平均密度あるいは万有引力定数 G を決定するものとみなされるだろう。キャヴェンディッシュの実験は今日では G の測定として記述されている (Clotfelter 1987 p.210)〕〔 を例として多くの情報源ではこれが最初の G (あるいは地球の密度) の測定であると誤報している。それ以前には、特に1740年のボウガー (Bouguer) や1774年のマスカリン (Maskelyne) の実験があるが、彼らの実験はかなり精度の悪いものであった (Poynting 1894 )(Encyclopedia Britannica 1910 ).〕 が、後年それらの値が本実験の測定値に基づいて高精度計算されたことはキャヴェンディッシュの直接的な功績ではないものの特筆すべき事項である〔Clotfelter 1987, p.210〕。 この実験方法の原理〔McCormmach & Jungnickel 1996 , p.336: キャヴェンディッシュからミッチェルに1783年に発信した手紙では『世界(地球)の質量計測の最初の試み』と書かれているが、『最初の試み』がキャヴェンディッシュとミッチェルのどちらを指すのかは明確ではない。〕 は1783年より少し前、天文学者ジョン・ミッチェルによって考案〔Cavendish 1798 , p.59 キャヴェンディッシュは実験法の発明の帰属をミッチェルに与えた。〕 されたものであり、キャヴェンディッシュの実験に使用されたねじり天秤装置 (en) は彼が作成したものである。しかし、1783年にミッチェルがその仕事を成し遂げることなく他界した後、ねじり天秤装置はフランシス・ウォラストン (Francis John Hyde Wollaston) を経てキャヴェンディッシュの手に渡った。キャヴェンディッシュはその装置をミッチェルの当初計画にできるだけ忠実に再組立てした。キャヴェンディッシュはその装置による一連の実験結果を1798年にロンドン王立協会発行の学術論文誌フィロソフィカル・トランザクションズで報告した〔Cavendish, H. 'Experiments to determine the Density of the Earth', ''Philosophical Transactions of the Royal Society of London'', (part II) 88 p.469-526 (21 June 1798), reprinted in Cavendish 1798 〕。 ==実験== キャヴェンディッシュによって組み立てられた装置はワイヤーで吊り下げられた の木製の天秤棒でできたねじり天秤であり、 直径 で質量 の鉛でできた球 (以下、小鉛球) が天秤棒の両端に取り付けられている。 その小鉛球の近くに、二つの直径 で質量 の鉛球 (以下、大鉛球) が独立した吊り下げ機構によって約 隔てられて設置されている〔Cavendish 1798 , p.59〕。 この実験は、小鉛球と大鉛球の間に働く相互作用としての微小な引力を測定するものである。 二つの大鉛球は水平木製天秤棒の両端に設置されている。大鉛球と小鉛球の相互作用により天秤棒は回転し、天秤棒を支持しているワイヤーが捻れる。ワイヤーの捻れ力と大小の鉛球の間に働く複合引力が釣り合う所で天秤棒の回転は停止する。天秤棒の変位角を測定し、その角度におけるワイヤーのねじり力 (トルク) が分かれば、二組の質量対に働く力を決定することができる。小鉛球にかかる地球の引力は、その質量を量ることによって直接に計測できるので、その二つの力の比からニュートンの万有引力の法則を用いて地球の密度を計算することが可能となる。 この実験では地球の密度が水の密度の 5.448 ± 0.033 倍 (すなわち比重) であることが見いだされた。1821年、F. Baily により、キャヴェンディッシュの論文に記されている 5.48 ± 0.038 という値は単純な計算ミスによる誤りであることが確認・訂正されている〔Poynting 1894 , p.45〕。 ワイヤーのねじりバネとしてのばね定数、すなわちねじれによる変位角が与えられたときのワイヤーの持つトルクを得るために、天秤棒が時計回りあるい反時計回りでゆっくり回転する際のねじりバネの共振周期が計測された。その周期は約 7 分であった。ねじりバネ定数はこの周期と天秤の質量、寸法から計算できる。実際には天秤棒は静止することはないので、天秤棒の変位角をそれが振動している間に計測する必要があった〔Cavendish 1798 , p.64〕。 キャヴェンディッシュの実験装置は時間に対して非常に敏感であった〔。ねじり天秤のねじりによる力は大変に小さく、1.47 × 10−7 であり〔Boys 1894 p.357〕、およそ小鉛球の質量の 1/50,000,000 〔Cavendish 1798 p. 60〕 すなわち粗い砂粒の質量程度である〔直径2mmの砂の質量は約13mg。〕。測定における空気流と温度変化の悪影響を抑えるため、キャヴェンディッシュは装置全体を奥行き 、高さ 、幅 の木箱に入れ、彼の自宅敷地に外部遮断した小屋内に設置した。ねじり天秤の水平天秤棒の動きを観測するために、小屋の壁に開けられた二つの穴を通した望遠鏡を使用した。天秤棒の動きはおよそ であった〔Cavendish 1798 , p. 99, Result table, (scale graduations = 1/20 in ? 1.3 mm) 「ねじれ天秤棒の両端の大鉛球による変位の比較のため、ほとんどの試行における変位量はこの2倍として記されている。」〕。この実験装置では天秤棒の両端に取り付けられたバーニヤ目盛を用いることによってこの微小な変位を1インチの百分の一よりも精度よく計測することができた〔Cavendish 1798 , p.63〕。 キャヴェンディッシュの実験は1838年のライヒ (Reich)、1843年のベイリー (Baily)、1878年のコルニュとベイル (Cornu & Baille) らなど、多くの追実験が行われた。しかし1895年のチャールズ・バーノン・ボーイズによる追実験まで、キャヴェンディッシュによる実験の測定精度は97年間超えられることはなかった。その後、ミッチェルのねじり天秤の原理は万有引力定数の測定においては主要な技術となり、今日の殆どの測定で原理的に同じ装置が使用されている〔McCormmach & Jungnickel 1996 , p.341〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「キャヴェンディッシュの実験」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Cavendish experiment 」があります。 スポンサード リンク
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