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「サセックスの吸血鬼」(サセックスのきゅうけつき、''The Adventure of the Sussex Vampire'')は、イギリスの小説家アーサー・コナン・ドイルによる短編小説。シャーロック・ホームズシリーズの一つで、56ある短編小説のうち48番目に発表された作品である。イギリスの『ストランド・マガジン』1924年1月号、アメリカの『ハースツ・インターナショナル』1924年1月号に発表され、1927年発行の第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』(''The Case-Book of Sherlock Holmes'') に収録された〔ジャック・トレイシー『シャーロック・ホームズ大百科事典』日暮雅通訳、河出書房新社、2002年、135頁〕。 日本語版では訳者により、「吸血鬼」と短縮された題名なども使用される。 == あらすじ == 私立諮問探偵のシャーロック・ホームズと、伝記作家で医師のジョン・H・ワトスンが共同生活を送るロンドンのベーカー街221Bへ、「吸血鬼」に関する調査依頼が持ち込まれる。依頼人のロバート・ファーガスンはワトスンの旧友だった。再婚した南米ペルー出身の妻が、自分が産んだ赤ん坊の首に噛み付き血を吸っている場面を、2度も目撃されているのだという。 ファーガスンは、妻との関係は良好だったが、吸血の場面を見られた妻は理由も話さず寝室に閉じこもってしまったと説明する。また、前妻の息子で15歳になるジャックと妻との仲は険悪で、妻がジャックに体罰を加えたこともあるという。ジャックは子どものころの事故で体が不自由になっていて、そのぶんファーガスンは溺愛しているらしい。 ホームズとワトスンは、サセックスにあるファーガスンの館を訪問する。館には多くの装飾品があり、妻が南米から持ってきた様々な道具や武器が飾られている。ホームズは、後ろ足が麻痺している飼犬のスパニエルに目を留めた。しばらく前に突然麻痺の症状が出たというが、原因は分かっていない。 妻は寝室に閉じこもったままで、医者であるワトスンだけを室内に入れる。妻はワトスンに、夫は自分を愛しているし自分も夫を愛していると語るが、吸血や体罰の理由は説明しない。ジャックは父親の帰宅を喜ぶが、ホームズとワトスンには敵意のこもった視線を向けた。ホームズは傷口を調べるため赤ん坊を呼び、ファーガスンは赤ん坊を抱きかかえてあやしはじめる。そのときワトスンは、ホームズが庭に面した窓に視線を向け非常に集中した表情をしていることに気づく。 ジャックが部屋を出て行くと、ホームズは結論に辿り着いたとファーガスンに言う。実はベーカー街を発つ前から真相を推理していて、この館での調査で確信したのである。ホームズが短いメモを寝室の妻に届けさせると、閉じこもっていた妻は、夫にもホームズにも会うと答えた。ホームズは夫婦の前で、推理の展開を話す。吸血鬼など存在しないという前提に立つと、妻が唇に血をつけて赤ん坊の側にいたという事実には、血を吸うためではなく別の意味があったと考えられる。それは、女王の伝承にあるような、傷口から毒を吸いだすための行為だったのではないか。ホームズは、妻が南米出身であるところから、クラーレなどの毒が塗られた武器が館にあると推理したのである。 館でホームズは装飾品の中に空の矢筒を見つけ、麻痺を起こした犬も見つける。これらの観察から、犯人が毒の塗られた矢を使ったこと、赤ん坊に毒を用いる前に犬で実験したことを確信する。そして、妻が何も話そうとしないのは、ファーガスンが溺愛しているジャックが犯人であるからに他ならない、と真相を見抜いたのだった。ファーガスンが赤ん坊をあやしていた時、ホームズは窓に映っていたジャックの赤ん坊に対する憎悪の表情を見ていた。ジャックは自分と違って健康な赤ん坊へ憎悪をつのらせていたのである。 妻がジャックに体罰を加えたのは、赤ん坊へ危害を加えたジャックが許せなかったからだが、ファーガスンが傷つくことをおそれ、自分の口から説明することはできなかった。そこへホームズから全てを承知しているというメモが届いたのである。ホームズは、ジャックを1年ほど海で過ごさせてはどうかと対処法を提案し、ワトスンと共に館を立ち去るのだった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「サセックスの吸血鬼」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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