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ザミーンダーリー制 : ウィキペディア日本語版
ザミーンダーリー制度[ざみーんだーりーせいど]
ザミーンダーリー制度(Zamindari Settlement)とは、イギリス統治下の北インドを中心に実施されていた土地所有・徴税制度である。制度の名前は、イギリス支配以前の北インドに存在していた(Zamindar、徴税請負人)に由来する。日本語ではザミンダーリー制度とも表記される。1793年インド総督チャールズ・コーンウォリスによってベンガル管区に導入され、1802年には北サルカールにも適用された。
ザミーンダーリー制度による弊害への批判は、後に南インドで施行されるライーヤトワーリー制度(ライヤットワーリー制度)が考案される一因となった〔〔佐藤、中里、水島『ムガル帝国から英領インドへ』、336-337頁〕〔D.メトカーフ、R.メトカーフ『インドの歴史』、115-117頁〕〔水島「イギリス東インド会社のインド支配」『南アジア史』2、304頁〕。
== 背景と制度の概略 ==
ベンガル地方を中心とする北インドに足がかりを築いたイギリス東インド会社は、地税の徴収にあたって徴税機構の設置、税査定、土地所有権の確定という問題に直面する〔水島「イギリス東インド会社のインド支配」『南アジア史』2、299-300頁〕。一連の問題を解決するため、初代インド総督ウォーレン・ヘースティングズは現地のザミーンダール(徴税請負人)を対象とした税額の競売を開き、最高額の入札者に徴税を委任した。東インド会社と入札者の間には5年の契約期間が締結されたがザミーンダールが税を払えずに破産する例が続発し〔水島「イギリス東インド会社のインド支配」『南アジア史』2、301頁〕、加えて1770年に起きた大飢饉によってベンガルの人口の約4分の1が減少した〔。税の徴収額は安定せず、翌年の税額と徴税者が不確かな状況で、ザミーンダールと農民(ライーヤト)の間に土地開発の気運は起こらなかった〔チャンドラ『近代インドの歴史』、102頁〕。18世紀までにイギリスでは個人の土地保有が社会の安定と進歩の条件になっていると考えられるようになり、またフランスでは重農主義が唱えられていたため、インドにおける土地所有権の見直しが始められる〔。
1776年にベンガル総督参事会委員フィリップ・フランシスは、ベンガル管区において個人の土地所有権の確立による税収と生産力の維持を提案する、土地の権利法案を提出した。1793年にホイッグ党に所属するコーンウォリスによって、地税の永代定額制度(Permanent Settlement、永代ザミーンダーリー制度、ベンガル永代土地制度)が導入された。制度の制定の背景には、インドのザミーンダールはイギリスのジェントリ(郷紳)と同等の存在であるというイギリスの誤解と、彼らに大土地の所有を認めれば、本国のジェントリと同じようにザミーンダールの経営意欲を刺激できるという計算が合った〔。地租の定額化と開発によって得られた増収の獲得を保証することで農工業の発達が進展し、その先にあるザミーンダールが蓄えた資本を元手とした商工業の発達、農業投資の活性化、小作人化した農民たちの工業労働力への転換をコーンウォリスたちは予期していた〔。ほか、イギリスは自国の支持者を生み出すためにイギリスへの依存の度合いが強い特権階級を作り出し、インドの民衆とイギリス本国の緩衝材にする意図があったと考えられている〔チャンドラ『近代インドの歴史』、103-104頁〕。
永代ザミーンダーリー制度の概略は、以下のように規定される〔重松「ザミーンダーリー制度」『南アジアを知る事典』新版、314-315頁〕。
* 旧来北インドに存在していたザミーンダールをヒンドゥー、ムスリムの宗教、土地の規模に関係なく一括して「地主」と規定
* ザミーンダール毎によって異なる土地所有の実態に関係無く、独占的な地主的所有権を法律によって承認
* イギリス東インド会社は、個々のザミーンダールと地税徴収の契約を結ぶ
* 税額は固定され、開墾・土地改良により地価と税収の上昇は考慮しない
永代ザミーンダーリー制度の下でザミーンダール達が有していた封建的諸特権は廃止され、近代法的な意味での土地所有権が付与される〔高畠「ザミーンダーリー・セットゥルメント」『アジア歴史事典』4巻、59-60頁〕。ザミーンダール達が貢納する地租は徴収額の11分の10であり、残りを自分の取り分とすることができた〔。永代定額制度によって、東インド会社は年28,600,000ルピーの収入を確保する〔。
旧来のインドでは一つの土地には複数の権利者がおり、ザミーンダールはあくまでも徴税権を有する一権利者でしかなく、農民、その他の利害関係者も土地に権利を有していたが、土地の権利はザミーンダールの元に一本化される〔〔。ザミーンダール達から守られていた中核的農民層の土地所有権は撤廃され、農民は一括して小作人として扱われた〔〔〔。また、制度の実施に伴って村落共同体内での栽培作物の種類の制限も取り払われ、土地は競売によって入札者の手に渡る投機の対象となった。農民が失った権利には、以下のものが挙げられる〔。
* 放牧地、灌漑施設、森林地の使用権
* 漁業権
* 住宅地の使用権
* 地代の引き上げに対する保護

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Permanent Settlement 」があります。



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