|
ダウンズ法とは、溶融させた塩化ナトリウムを「Downs cell」と呼ばれる特殊な装置において電気分解することで金属ナトリウムを商業生産する、電気化学的な手法である。 == 方法 == ダウンズ法では、アノードには炭素電極が、カソードには鉄電極が、電解質には加熱されて溶融した液体の塩化ナトリウムが用いられる。塩化ナトリウムの結晶は電気伝導性が低いが、溶融してナトリウムイオンと塩化物イオンに分離すると、それらが荷電キャリアとして働くため電流を伝導できるようになる。塩化カルシウムもしくは塩化バリウム、塩化ストロンチウム、フッ化ナトリウム〔 〕を電解質に添加することで、電解質の溶融温度を維持するための温度を低下させることができる(凝固点降下)。塩化ナトリウムの融点は通常801であるが、これらの塩を添加することによって600でも溶融状態を維持することができる。 アノードでは以下の半反応が起こる。 :2Cl– → Cl2 + 2e– また、カソードでは以下の半反応が起こる。 :2Na+ + 2e– → 2Na したがって、全体としては以下の反応となる。 :2Na+ + 2Cl– → 2Na + Cl2 カルシウムの酸化還元電位は2.87 eVであり、ナトリウムの酸化還元電位である2.71 eVよりも高いため、この反応系においてナトリウムイオンはカルシウムイオンよりも優先して還元され、金属ナトリウムを形成する。電解質からナトリウムが消費し尽くされてカルシウムのみになると、カソード側の生成物として金属カルシウムが生成されてしまう(それは金属カルシウムの製法でもある)。 電気分解によって生成される金属ナトリウムおよび塩素ガスは共に電解質より低比重であるため、溶融している電解質の液面に浮上してくる。細孔の開けられた鉄製の邪魔板をカソードとアノードの間に配置することで、金属ナトリウムと塩素ガスはお互いに接触し合うことなしに別々の部屋へと誘導される(右図参照)〔Pauling, Linus, ''General Chemistry'', 1970 ed. Dover Publications, pp 539-540〕。 ナトリウムの分解電圧は2.6Vと測定されているが、電流密度を上げてセルの生産性を上げるため最大5.7~6Vの過電圧を加える。この過電圧により発生する熱エネルギーはNaCl-CaCl2溶融塩の溶液状態を維持するために使われる。 フランスのMAAS社とアメリカのDuPount社がこの方法で金属ナトリウムを生産している。 ダウンズ法は副生成物として塩素を産出するが、この方法で生産される塩素の量は他の方法によって商業的に生産されている塩素の内のほんのわずかでしかない〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ダウンズ法」の詳細全文を読む スポンサード リンク
|