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デスモドロミック : ウィキペディア日本語版
デスモドロミック

デスモドロミック(''Desmodromic'' )とは、レシプロエンジンの吸排気弁をバルブスプリングに依らず、カムとロッカーアームの機構によって閉じる機構である。確動カム機構ともいう。
== 概要 ==
1つのバルブにつき2組のカムロッカーアームを設けてバルブの押下と引上を分担させ、バルブスプリングに頼ることなく強制的にバルブを閉じることで、高回転時におけるバルブタイミングを正確に管理する機構である。古くは1930年代にメルセデス・ベンツレーシングカーに使用したという記録があり、市販車ではドゥカティオートバイに採用されるなど、主に4ストロークガソリンエンジンで用いられている。
一般的なレシプロエンジンで用いられるバルブスプリングを利用したバルブ機構では、エンジンの回転速度が速くなると設計されたタイミングにバルブが完全に閉じることができなくなるバルブサージングと呼ばれる現象が発生する。また、バルブを急速に開閉させようとすると、開く際にバルブが弾かれるバルブジャンプと呼ばれる現象や、閉じる際にバルブシートとの衝突でバウンドするバルブバウンスと呼ばれる現象が発生する。いずれの現象も燃焼室内の圧縮効率を低下させるため、エンジンの回転速度やバルブの開閉速度を制限する要素となるが、デスモドロミックはこれらの現象を回避してエンジンの高回転化やバルブ開閉の高効率化、バルブタイミングの厳密な管理といった点で有利となる。
デスモドロミックではバルブを閉じる際の抵抗(メカニカルロス)は、閉じるためのロッカーアーム(クローズロッカーアーム)の慣性とバルブの密閉を補助するトーションバー・スプリング(リターンスプリング)の荷重によって発生するが、バルブスプリング方式のスプリングによる抵抗と比較すると小さい。また、スプリングを収容するためのスペースが不要であるため、バルブステムを短く軽量に作ることができ、シリンダーヘッドの高さを抑えることができる。
一方、部品点数がスプリングバルブ方式に比べて多いため、製造コストや整備コストが高くなり、シリンダーヘッドの重量も大きくなりやすい。また、バルブを開くロッカーアームだけでなく、閉じ側のクローズロッカーアームのバルブクリアランス調整も必要となる。
デスモドロミックのようにバルブスプリング方式の欠点を補う機構を市販車に採用しているのは近年ではドゥカティだけであり、2007年現在では二輪・四輪を問わず唯一量産自動車にデスモドロミックを採用するメーカーであり、デスモドロミックは同社の代名詞ともなっている。ただし他社のレース用車両においては、共振周波数を高められるねじりばねニューマチックスプリングをバルブスプリングに採用して、より単純な構造でバルブサージングを抑制して高回転を可能にしているものがある。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「デスモドロミック」の詳細全文を読む



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