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ドデカヘドラン : ウィキペディア日本語版
ドデカヘドラン

ドデカヘドラン(dodecahedrane、化学式: C20H20)は、有機化合物の1つで、1982年にオハイオ州立大学のにより、主に「十二面体の対称性を審美的に探求した」結果として初めて合成された。
この分子では〔IUPAC name: hexadecahydro-5,2,1,6,3,4-butanediyldiylidenedipentalenopentalene CAS number: 4493-23-6〕、各頂点が炭素原子でそれぞれ3つの隣接する炭素原子と結合している。各正五角形の角は、理想的なsp3混成軌道の成す角と近い。各炭素原子は水素原子にも結合している。この分子はフラーレンとおなじIh対称性をもち、そのことはですべての水素原子がの化学シフトのみを示すことからもわかる。ドデカヘドランはキュバンやなどと同様にの1つで、自然界には存在しない。
== 全合成 ==
30年余りにわたって、いくつかの研究グループが活発にドデカヘドランの全合成を追求した。1978年に発表されたレビュー論文にはその時点で存在したいくつかの戦略について述べられている。最初の試みは1964年にウッドワードにより、ドデカヘドランに単純に二量体化できると考えられていた合成から始まった。初めてドデカヘドランを合成したのはパケットのグループだが、のグループによりパゴダンを経由するより汎用的な合成経路(後述)が発見された。イートンやらなどの他のグループも競合していたが、頂点を極めたのはパケットとプリンツバッハのチームであった。
のグループは1981年に1,16-ジメチルドデカヘドランの合成に成功し、翌1982年にシクロペンタジエン2分子(10炭素原子)、 アセチレンジカルボン酸ジメチル(4炭素原子)、アリルトリメチルシラン2分子(6炭素原子)を出発物質とする29段階の有機合成により無置換のドデカヘドランを合成した。
合成の第一歩として、シクロペンタジエン2分子1ナトリウムシクロペンタジエニル錯体を形成する)とヨウ素存在下でカップリングさせ、2を得る。次にディールス・アルダー反応によりアセチレンジカルボン酸ジメチル3ペンタジエン・アセチレン・ペンタジエンの順に反応させ、対称な付加体4を得る。この反応時には等量のペンタジエン・ペンタジエン・アセチレンの順に反応した非対称な化合物 (4b) も生じるのでこれを除去する。
次に、ヨウ素を一時的ににより導入し、二酸4をジラクトン5に転換する。エステル結合が次にメタノールにより切断され、6を生じる。アルコール部をジョーンズ酸化によりケトン化し7が得られ、ヨード基をにより還元し8を得る。
最後の6つの炭素を、アリルトリメチルシラン9''n''-ブチルリチウムから生じるカルバニオン10をケトン基に求核付加反応させることにより導入する。次に、11酢酸中の過酢酸とさせてジラクトン12を得て、五酸化二リンにより分子内フリーデル・クラフツ反応でジケトン13にする。この分子は必要な20の炭素原子を全て持っており、残り5つの炭素-炭素結合の生成に有利な対称性を持っている。
化合物13二重結合パラジウム炭素による水素化により還元し14を得、ケト基を水素化ホウ素ナトリウムによりアルコール化して15を得る。このとき生じたヒドロキシ基を、ジラクトン化16したのち、塩化トシルを用いて求核置換反応により塩素に置換して17を得る。最初のC-C結合生成反応はバーチ還元の一種(リチウムアンモニア)で、生成物は即座にに捕獲される。化合物17の残りの塩素原子は単純に還元される。このように一時的に置換基を追加することで後のステップでエノール化が起こることを防ぐ。新たに形成されたケト基は、光化学ノリッシュ反応によるさらなるC-C結合生成反応を受け19となり、生じたヒドロキシ基はTsOHによって脱離アルケン20を得る。
二重結合をヒドラジン水素化ジイソブチルアルミニウムにより還元し21クロロクロム酸ピリジニウムで酸化してアルデヒド22を得る。2度目のノリッシュ反応によりもう1つのC-C結合を形成し、アルコール23を得たのち、フェノキシ末端を次のような段階を踏んで取り除く。まず、バーチ還元によりジオール24を得たのち、クロロクロム酸ピリジニウムを用いた酸化によりケトアルデヒド25を得る。さらに逆クライゼン縮合によりケトン26を得る。3回目のノリッシュ反応によりアルコール27が得られ、2回目の脱水反応により28、さらに還元して29を得る。この時点で、官能基以外の合成は終了である。残りのC-C結合は、圧縮水素雰囲気およびパラジウム炭素触媒下脱水素反応で生成し、ドデカヘドラン30を得る。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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