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ドルジェル伯の舞踏会[どるじぇるはくのぶとうかい]
『ドルジェル伯の舞踏会』(ドルジェルはくのぶとうかい、Le Bal du comte d'Orgel)は、フランスの作家・レイモン・ラディゲ(Raymond Radiguet)の長編小説。頽廃的な社交界を舞台に、貞淑な人妻の伯爵夫人が夫への貞潔と、青年への情熱との板ばさみに苦悩する三角関係の恋愛心理の物語〔 塩谷真由美「『クレーヴの奥方』から『ドルジェル伯の舞踏会』へ : ロマネスクの構造をめぐって」(関西フランス語フランス文学、1996年3月)〕。フランス伝統の心理小説に連なる傑作とされている〔 安藤元雄「悲劇の分析」(『ドルジェル伯の舞踏会―現代日本の翻訳』(講談社文芸文庫、1996年)〕。処女作『肉体の悪魔』に続く2作目の小説で、20歳で夭折したラディゲの遺作である。 ある日知り合った青年へ恋心を抱き、その燃え上がる情熱を自制しようと苦悩する貞淑な夫人の感情の動きと、仮装の社交界で孤独を感じる青年の一途な慕情との絡み合いを中心に、人工的感情の仮面をつけた様々な人物がそれと意識せずに弄する心の軌跡を、盤上のチェス駒を動かすかのような端麗なる筆致と硬質な文体で細密画のように美しく描いている〔「カバー解説」(文庫版『ドルジェル伯の舞踏会』)(新潮文庫、1953年。改版1970年)〕〔生島遼一「解説」(文庫版『ドルジェル伯の舞踏会』)(新潮文庫、1953年。改版1970年)〕〔三島由紀夫「ドルジェル伯の舞踏会」(世界文学 1948年5月号に掲載)〕。「心理がロマネスクであるところの小説」、「もっとも純潔でない小説と同じくらいにみだらな貞潔な恋愛小説」を企図した作品で〔レイモン・ラディゲ「ノオト」(ジャン・コクトー「序」、訳:生島遼一)(文庫版『ドルジェル伯の舞踏会』)(新潮文庫、1953年。改版1970年)〕、簡素な三角関係の筋立てながらも格調高く、夫人の秘めやかで熾烈な恋を通じて、結末で古典劇のヒロインのような壮大な姿に化身する小説的美学が示されている〔三島由紀夫「一冊の本――ラディゲ『ドルジェル伯の舞踏会』」(朝日新聞 1963年12月1日号に掲載)〕〔。 == 発表経過 == ラディゲは『ドルジェル伯の舞踏会』を18歳から20歳(1921年から1923年9月末)にかけて書き上げたが〔ジャン・コクトー「序」(文庫版『ドルジェル伯の舞踏会』)(新潮文庫、1953年。改版1970年)〕、その後1923年11月末頃に突如、体調を崩して腸チフスと診断され、パリのピッシニ街の病院に入院し、病床で校正刷をチェックしながら治療に専念していた〔三島由紀夫「ラディゲの死」(中央公論 1953年10月号「秋季増刊文芸特集号」に掲載)。『ラディゲの死』(新潮社、1955年)〕。しかし快方には向かわずに、そのまま12月12日に20歳の短い生涯を閉じた。『ドルジェル伯の舞踏会』はラディゲの遺作となり、死後の1924年にBernard Grassetより書き下ろし出版された。翻訳版は現在まで世界各国で行われている。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ドルジェル伯の舞踏会」の詳細全文を読む
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