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ドレスデンの祭壇画 : ウィキペディア日本語版
ドレスデンの祭壇画[どれすでんのさいだんが]

ドレスデンの祭壇画』(ドレスデンのさいだんが(、))、または『聖母の三連祭壇画』(せいぼのさんれんさいだんが)は、初期フランドル派の画家ヤン・ファン・エイクが1437年に描いた絵画。オーク板に油彩に描かれた小さな三連祭壇画で、左翼が33.1cm x 13.6cm、中央パネルが33.1cm x 27.5cm、右翼が33.1cm x 13.6cm の大きさとなっている。
現在はドレスデンアルテ・マイスター絵画館が所蔵する『ドレスデンの祭壇画』は、ファン・エイクが制作した現存する唯一の三連祭壇画であり、肖像画以外の絵画作品として、署名とファン・エイクの座右の銘である「 (我に能うる限り)」が記された唯一の作品である。制作当時のままの額装の三枚のパネル内面はブロンズを模して彩色されたフレームに囲まれ、その縁には主として聖母被昇天に関する文言が記されている。また、両翼のフレームには、描かれている二人の聖人への献辞が記されている。
また、両翼内面のフレームには紋章が描かれており、損傷しているもののイタリアの有力一族ジュスティニアニ家 (:en:Giustiniani) のものだと考えられている。ジュスティニアニ家は14世紀半ばごろから、ブルッヘとの交易で財と地位をなした一族だった。ただし『ドレスデンの祭壇画』の依頼主が、具体的にジュスティニアニ家の誰であるのかは確定していない。また、個人的な祈祷用として制作されたのか、あるいは各地を行脚する聖職者の携帯用祭壇画として制作されたのかも分かっていない。
== 外観 ==

=== 内面パネル===

『ドレスデンの聖母』の中央パネル内面には教会の身廊のような場所の玉座にすわる聖母子が描かれ、聖母子の前には高価なペルシア絨毯が敷かれている。玉座とその両脇のアーチには、『旧約聖書』のイサクダヴィデゴリアテなどの人物彫刻が表現されている〔Dhanens (1980), p.248〕。この作品は深い奥行きを感じさせる構成で描かれており、中央パネルでは両横の柱が聖母子の背後へと延びて行き、玉座の上に描かれているバルコニーでひとつにまとまっている〔Harbison (1991), p.151〕。ファン・エイクが前年に完成させた『ファン・デル・パーレの聖母子』などの比較的平坦な構成に比べると、『ドレスデンの祭壇画』の奥行き表現には技術的な進歩が見られる。奥行き表現の進歩は両翼パネル外面に描かれた二体の彫刻でも顕著である。『ドレスデンの祭壇画』のパネル外面と、1436年にファン・エイクが描いた『受胎告知のディプティク』のパネル外面]には同じような大天使ガブリエルと聖母マリアが描かれている。この両作品を比較すると『ドレスデンの祭壇画』では奥行きがより深く表現されており、マリアをさらに奥部に配置することによって、マリアがよりつつましくこの世ならざる者であるかのように描写されている〔Pächt (1999), 83〕。
『ドレスデンの祭壇画』に描かれているマリアの位置は極めて象徴性を帯びている。マリアとキリストが座しているのは、通常であれば主祭壇が置かれている場所であり〔Borchert (2008), p.56〕、マリアが着用する豪奢な刺繍がほどこされたガウンは主祭壇を飾る金襴の天蓋 (:en:Baldachin) の役割を果たしている〔Purtle, Carol J. Review of "The Marian Paintings of Jan van Eyck", by Goodgal, Dana. ''Renaissance Quarterly'', Volume 36, No. 4, Winter, 1983. pp.590 - 594〕。美術史家シャーリー・ブラムは『ファン・デル・パーレの聖母子』でもマリアが主祭壇の位置に描かれていることを指摘し、これらの作品におけるマリアは「天界の主祭壇であり、俗界の教会における主祭壇の原型といえる。マリアはまさしくキリストの血肉の聖櫃なのである」としている〔Shirley (1969)〕。
『ドレスデンの祭壇画』の右翼には聖カタリナが、左翼には大天使ミカエルが、それぞれ教会の通路あるいは回廊に立ち姿で描かれている〔Campbell (2004), p.23〕。ミカエルは、ゆったりとした緑色の外套(ウプランド)をまとったこの祭壇画の制作依頼主とともに描かれ (:en:Donor portrait) ている〔。ウプランドは当時のブルゴーニュ公国における流行最先端の衣服であり、聖母マリアに跪いて祈りを捧げる姿で描かれているこの制作依頼主が、高い社会的地位を持つ一族の出身であることを示唆している。ファン・エイクが最終的に教会に奉納する目的で個人から依頼されて描いたほかの作品に比べると、『ドレスデンの祭壇画』に描かれている依頼主は、聖人の幻に遭遇したかのような驚愕表現は見うけられず、また、三連祭壇画の一翼にマリアよりも小さく描かれている〔Harbison (1991), p.61〕。『ドレスデンの祭壇画』が描かれた当時の記録は残っておらず、左翼の依頼主が誰なのかは謎となっている〔Borchert (2008), p.61〕。依頼主が描かれている左翼のフレームには「 (これは天使の軍を率いる大天使ミカエルである)」と記されている〔。右翼に描かれている聖カタリナは、ほどいた金髪に宝冠を被っている。青色のドレスは白いアーミンの毛皮で覆われ、右手に剣、左手に本を持ち、足元にはカタリナの象徴である車輪が置かれている。このカタリナが描かれている右翼のフレームには「 (この賢明な乙女は輝かしい玉座を待ち望んでいた)」と記されている〔。中央パネルに描かれた幼児キリストは裸体で、『マタイによる福音書』 (11:29) の「 (わたしに学びなさい、わたしは柔和で心のへりくだった者だから)」と記された小旗 (:en:banderole) を握りしめている〔。
『ドレスデンの祭壇画』には署名と制作年が記されているため、ファン・エイクが描いたほかの絵画作品の制作年を判断する基準として用いられることがある。ステンドグラスの描写やアーケード周辺の表現など、多くの点で作風の進展が見られることから、ほかの絵画作品の描写と比較したときに、この『ドレスデンの祭壇画』より以前に描かれた作品であるということが判断できる〔Harbison (1991), p.152〕。両翼の外面にはグリザイユの「受胎告知」が描かれている。左翼外面には大天使ガブリエルが、右翼外面には聖母マリアが、それぞれ八角形の台座に乗った立ち姿で彫刻として表現されている。左翼の聖カタリナの背後には風景画が描かれているが、『ドレスデンの祭壇画』自体が非常に小さな作品であるために、至近で見ないと分からない。非常に微細な風景画であるにもかかわらず、遠くの風景と近景の建物が素晴らしい筆使いで描かれている〔Borchert (2008), p.60〕。
ファン・エイクが描いた聖母子像である『ファン・デル・パーレの聖母子』(1436年)と『教会の聖母子』(1438年 - 1440年ごろ)と同じく、『ドレスデンの祭壇画』のマリアも、周囲と調和しない非現実的な身体の大きさで描かれている。美術史家ローン・キャンベル (:en:Lorne Campbell (art historian)) は、マリアがあたかも「玉座から立ち上がり、ミカエルとカタリナと同じ場所へと至り、さらにはこの二人を超えて、教会の柱をも超越する」ようだとしている〔。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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