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ナンセンス小説 : ウィキペディア日本語版
ナンセンス文学[なんせんすぶんがく]

ナンセンス文学(ナンセンスぶんがく)あるいはノンセンス文学とは、有意味なものと無意味なものとを組み合わせて言葉を使う上での常識的な約束事や論理性を無視し、壊そうとするような文学の総称である。特に知られている歴史的な形式はナンセンス詩Noncence verse)だが、今日においては詩に限らず様々な形式の文学作品で表現されている。
「ナンセンス」の文学的な効果は、一般には意味の欠如よりも、しばしば意味の過剰によってもたらされる。「ナンセンス」の多くは本質的にはユーモアに属するが、それは「意味を成す」ことによって面白みが引き出される大多数のユーモアとは反対に、「意味を成さないこと」によって成立するユーモアである〔Tigges, ''Anatomy'', p. 255.〕。
== 歴史 ==
ナンセンス文学の起源は二つの流れに辿ることができる。より古い方の一方は民謡や童謡、民話や民衆劇、言葉遊びといった口承を起源とするもので〔Heyman, ''Boshen'', pp. 2-4.〕、今日においても学校歌として広く扱われているマザー・グースの歌などにその形を留めている。口承におけるそれらの役割は、あることを記憶するための手段であったり、またはパロディや風刺であったりと様々である。もう一方の流れは宮廷詩人や学者といった知識人による、より知的な作品を起源とするものである。これらの内容は古典文学のパロディや宗教的な滑稽詩、政治的な風刺詩などで、しばしば洗練された新たなナンセンスの形式が作り出されていった〔Malcolm, p. 4.〕。今日のナンセンス文学はこの二つの流れが合わさるところに成立している〔Malcolm, pp. 6-7.〕。
ナンセンス文学の古典はイギリスに集中している〔英文学者の高橋康也は、『マザーグース』『アリス』『ナンセンスの絵本』を「ノンセンス文学の三大古典」としている。 高橋, p. 16.〕。上述したマザー・グースの童謡集もそうだが、エドワード・リアはその『ナンセンスの絵本』(1846年)を初めとする著作で発表された多数のリメリック詩によって、上記の二つの流れを合わせた近代的なナンセンス文学の大衆化を促進した。この流れを引き継いだのがルイス・キャロルであり、彼の児童文学作品『不思議の国のアリス』(1865年)『鏡の国のアリス』(1871年)はナンセンス文学を世界的な現象にした。特に後者の作品に登場する「ジャバウォックの詩」は、しばしばナンセンス文学の精髄と見なされている〔Malcolm, p. 14.〕。
20世紀以降の文学においても、例えばT・S・エリオットの詩〔高橋, pp. 285-287.〕やジェイムズ・ジョイスの小説〔高橋, p. 261.〕にもナンセンス文学の要素が認められるし、ベケット〔高橋, pp. 287-296.〕やイヨネスコ〔高橋, pp. 302-306.〕の不条理演劇はナンセンスのより現代的な形とみなすことができる。日本においては井上ひさし〔高橋, pp. 351-355.〕、筒井康隆などがナンセンス文学の書き手である。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Literary nonsense 」があります。



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