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ニコランジル : ウィキペディア日本語版
ニコランジル

ニコランジル(Nicorandil、商品名:シグマート)は血管拡張薬の一つで、狭心症の治療に用いられる。欧州、インド、アジアで入手できるが、米国では販売されていない。
狭心症は心筋の一時的な虚血発作であり、通常胸痛を伴う。これは、アテローム性動脈硬化症冠動脈疾患大動脈弁狭窄症等の疾患に因り引き起こされ得る。狭心症は、一般的には動脈硬化・プラークの進展による冠動脈内腔の狭窄から起こるが、ときに冠動脈の血管攣縮から生じる。この平滑筋収縮は、活性の亢進等、幾つかの機序に因る。Rho-キナーゼが活性化すると、ミオシンホスファターゼ活性が抑制され、カルシウム感受性が増加して過剰収縮が齎される。Rho-キナーゼは一酸化窒素合成酵素の活性をも抑制するので、一酸化窒素濃度が低下する。一酸化窒素の減少に因り、冠動脈の攣縮が惹起される。痙攣を起こす平滑筋細胞ではL型カルシウムチャネルの発現が増加しており、細胞内へのカルシウム流入が過剰となり、収縮過剰が発生する。
ニコランジルは狭心症治療薬の一つであり、硝酸塩としての作用とATP依存型カリウムチャネル開口薬としての作用を併せ持つ。ヒトでは、ニコランジルは低濃度で太い冠動脈に対して硝酸塩作用を発揮する〔。高濃度では、カリウムATPチャネルを開く事で冠動脈の抵抗性を減少させる。〔
==作用機序==
硝酸塩作用:
:ニコランジルは グアニル酸シクラーゼを作動させて環状GMP(cGMP)の生成を増加させる。cGMPはプロテインキナーゼG(PKG)を活性化させて、GTPアーゼRhoAをリン酸化して活性を阻害し、Rhoキナーゼ活性を阻害する〔。Rhoキナーゼ活性が低下する事で平滑筋のカルシウム感受性が低下する〔。PKGは筋鞘のカルシウムポンプを駆動し、カルシウムを細胞外に放出する。PKGはカリウムチャネルに作用してカリウム流出を促進し、過分極とする事で電位依存性カルシウムチャネルを遮断する〔。最終的に、これらの作用に依って平滑筋が弛緩し、冠血管が拡張する。
カリウムATPチャネル開口作用:
:ニコランジルはカリウムATPチャネルを開口し、カリウム流出を促進させる。細胞が過分極となり、電位依存性カルシウムチャネルが閉じる事で細胞内カルシウムイオン濃度が低下する〔。
ニコランジルの血管拡張作用は主として硝酸塩作用に基づく〔が、ニトログリセリン等の硝酸塩が無効の場合にも奏効する事が有る〔。カリウムATPチャネル開口作用が薬理学的心筋虚血耐性(プレコンディショニング)を齎し、虚血状態に対する心筋保護作用を発揮する〔。ニコランジルは心筋細胞のミトコンドリア内のカリウムATPチャネルを活性化し、それが心保護作用に繋がっているようであるが、詳細な作用機序は未だ明らかではない。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「ニコランジル」の詳細全文を読む



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