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ハクジラ亜目 : ウィキペディア日本語版
ハクジラ亜目[はくじらあめ]

ハクジラ亜目(歯鯨亜目、Odontoceti)は鯨偶蹄目に属する分類群で、現生のクジラ類を2分する大グループの一つ。リンネ式の分類では亜目の階級が与えられているが、クジラ類が偶蹄目から分岐した系統であるためハクジラ類、ヒゲクジラ類の位置づけは変動する可能性が高い〔『鯨類学』 2頁〕。またイルカもハクジラ類に分類される。イルカは分類学的にはクジラと相違はなく、ハクジラ亜目の小型種の慣習的な呼び名である。
==形態==
現生のクジラ類は、ハクジラ亜目とヒゲクジラ亜目に大きく分けられる。現生のハクジラ類はその名の通り、顎に歯を持つクジラである。しかし、最初期のヒゲクジラは歯を持っており、歯の存在によってこの分類群が定義されている訳ではない〔『絶滅哺乳類図鑑』 126頁〕。通常の哺乳類の歯は異歯性〔異形歯性とも。生える場所により歯の形態が異なること。〕を示すが、ハクジラ類の歯は化石種を含めて大半が二次的に同形歯となっている。また歯の本数が真獣類の基本数である44本より多いものや大半が失われているものなど変異が多い。またアカボウクジラ科の一部の様に雄のみ下顎に一対の歯を持つものや、の様に伸びた歯を持つイッカクなど特異な形態を示すものも少なくない。〔『鯨類学』 14 - 15頁〕陸生の捕食者たちの歯は捕殺の道具として使用されるが、ハクジラ類の大半は魚体を捕捉するための罠として機能する。しかしシャチなど、丸呑みが出来ない大型のクジラやサメを狙うものは、捕らえた獲物を引き裂き、飲み込みやすい大きさにまで切り刻むために歯を使う。また、アカボウクジラ科の一部の種の雄は特異な歯をディスプレイとして使用していると推定される。〔『哺乳類の進化』 218頁〕
歯以外のヒゲクジラ類との差異としては、比較的頭部の比率が小さいこと(原クジラ類よりは大型化している)、噴気孔は一つであること、またマッコウクジラやアカボウクジラ科の一部、シャチなどを除き、ヒゲクジラよりも小型であること、などである。皮下の形態では、鼻腔内に発声唇と呼ばれる音を発するための器官と音を収束するメロンがあり、これらを使用した高周波エコロケーション能力を持つ。〔『鯨類学』 138 - 148頁〕
上顎骨鼻孔が頭頂部へ移動した事にともないテレスコーピングと呼ばれる形態を示すが、伸長した上顎骨は眼窩の上を通って(ヒゲクジラ類は下)眼窩後方に達し、「上眼窩突起」と呼ばれる筋肉の付着部を形成する。ここに付着する顔の筋肉及び発声唇を使用し高周波音が発せられると推定されている。〔
尚、鼻孔はヒゲクジラ類が二つ有するのに対して、ハクジラ類は一つである。
また現生群では頭骨の骨要素及び軟組織が左右非対称となっているが、これは高周波エコロケーションに特化した機能を持つためとされる。初期の化石種では頭骨が左右対称のものも存在するが、軟組織がいかなる状態であったかは不明である。〔『鯨類学』 44頁〕
現生のクジラ類では耳骨が頭骨から遊離しているが、ハクジラの耳骨は一部の種を除いて軟組織のみで頭骨に接しており、完全に骨による接続は断たれている。また、耳骨の構成要素、耳周骨蝸牛などを収めた骨)と鼓室胞耳小骨を収めた骨)も分離した状態にあるのも特徴的である(ヒゲクジラでは癒合)。〔『鯨類学』 11 - 13頁〕
これと関連して、ハクジラの下顎骨は縦方向に幅があり、後部に大きな開口部を持つ。この部分には脂肪組織が収まっており、下顎骨で受けたエコロケーションの反響などの音波を内耳に伝導する役割を果たしているとされる。こうした形態は高周波エコロケーションこそ行っていないもののムカシクジラ類にも存在しており、祖先から受け継いだものであると推定される。一方ヒゲクジラはこうした特徴は失っている。〔『鯨類学』 14頁〕
嗅覚に関しては、一部の種の発生段階を除いて嗅球、嗅神経も消失しており、嗅覚は完全に退化している。対してヒゲクジラは僅かながら嗅覚を残している。〔『鯨類学』 55, 176頁〕

ファイル:SpermWhaleLyd3.jpg|マッコウクジラの全身骨格図
ファイル:Eurhinodelphis longirostris.jpg|エウリノデルフィス骨格
ファイル:Dolphin Anatomy.svg|イルカの骨格及び主要器官


抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「ハクジラ亜目」の詳細全文を読む



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