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バラの騎士 : ウィキペディア日本語版
ばらの騎士[ばらのきし]

ばらの騎士』(薔薇の騎士、原語:''Der Rosenkavalier'')作品59は、リヒャルト・シュトラウスの作曲したオペラである。この作品はワーグナーの後期のオペラに比肩する長大な作品規模と大掛かりな管弦楽ゆえにしばしば楽劇と呼ばれるが、これはシュトラウス自身の命名ではない。出版時のタイトルは ''Komödie für Musik in drei Aufzügen:Der Rosenkavalier''(3幕の音楽のための劇『ばらの騎士』)とあるに過ぎない。台本はフーゴ・フォン・ホーフマンスタールによる(日本語訳は下記を参照)。


== 概要 ==
シュトラウスは、ホーフマンスタールと既に『エレクトラ』で共作していたが、それは既に上演された舞台戯曲にシュトラウスが曲をつけただけであった。それゆえこの『ばらの騎士』こそがシュトラウスとホーフマンスタールの2人の大家による長年の実り豊かな作品の実質的に最初の共同作業となった。作曲は1909年初めから1910年にかけて行われた。当初ホーフマンスタールの発案で男装の女性歌手を起用した軽い喜劇的な作品として計画されたが、2人の夥しい数の往復書簡(下記の日本語訳文献に詳しい)を中心とした議論の末、最終的に現在の形としてまとめられた。タイトルの「ばらの騎士」とは、ウィーンの貴族が婚約の申込みの儀式に際して立てる使者のことで、婚約の印として銀のばらの花を届けることから、このように呼ばれる。物語当時の貴族の間で行われている慣習という設定であるが、実際にはホーフマンスタールの創作である(「このオペラでは一見本物に見えるものが実は虚構なのです」とホーフマンスタールは言っている)。
音楽内容的には、「モーツァルト・オペラ」を目指したものである。物語の舞台はマリア・テレジア治世下のウィーンに置かれ、ロココの香りを漂わせつつ、遊戯と真実を対比させた作品として仕上げられた。プロットが『フィガロの結婚』と似ているのはこのためである。物語に即して『サロメ』、や『エレクトラ』(部分的には無調ですらあった)の激しいオーケストレーションや前衛的な和声はすっかり影を潜め、概して親しみやすい平明な作風で書かれている。声楽パートも「吼える二匹のケモノのような」(とホーフマンスタールが揶揄した)ワーグナーのドラマティックなものから、モーツァルト的な、リリックな歌唱スタイルになっている。
カット無しの演奏時間は、約3時間20分(第1幕75分、第2幕60分、第3幕65分)。このオペラは筋立ては貴族達の恋愛がテーマのコメディ作品でありながら、全3幕からなる非常に大規模で演奏困難なオペラである。第1幕・第2幕はウィーンの貴族の屋敷内に、第3幕は居酒屋・宿屋に設定されている。作品の主要な人物4名のうち3名が第1幕で登場し、残る1名が第2幕で登場、第3幕では最後に全員が揃い、物語の完結を迎える。バレエは当初挿入される予定であったが外され、合唱も大きな役割は持たない。主要な4人に次ぐ役が3、4人おり(ただし比重は4人に比べて格段に低い)、ソロ又は重唱で歌う役は名の無い役も含め28人を数える。そのほかに黙役のオックス男爵の庶子等も必要である。1幕に登場するテノール歌手は端役ではあるが、場合によっては特別にスター歌手を呼び舞台に華を添える事もある。
このオペラは長大で難しいため、上演のみならず録音でもしばしば慣習的にカットが行われている。これはシュトラウス自身が認めていたものである。なお、ほとんどが重唱曲でアリアは一切なく、テノールは第1幕でかなり揶揄的な扱いで登場するのみであるなど、シュトラウスのイタリアオペラ嫌いがかなり反映されている。また、2人の小悪党がイタリア人として設定され、オクタヴィアンもロフラーノという姓からイタリア系貴族であることが暗示されており、オックスが怒りのあまりイタリア人差別的な言葉をわめき散らした後、2人がオクタヴィアン側に寝返る伏線となっている(基本的には金で転んだのだが)。これらは、ハプスブルク帝国が中東欧や北イタリアへ支配を広げた結果、イタリアをふくむ非ドイツ系貴族の一部がドイツ風の名乗りでオーストリア宮廷に仕えていた当時の状況を反映している。なお、シュトラウスのイタリアオペラ批判は、後年、自ら台本にも加わった最後のオペラ『カプリッチョ』で、より徹底的な形で(擁護的な立場も取り入れる一方、揶揄の描写としては遥かに痛烈に)繰り返されることになる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Der Rosenkavalier 」があります。



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