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パッサカリアとフーガ : ウィキペディア日本語版
パッサカリアとフーガ

パッサカリアとフーガ ハ短調Passacaglia und Fuga c-mollBWV582は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ1710年頃に作曲したと推定されるオルガン曲の一つ。20回にわたって8小節の変奏を繰り返す曲である。パッサカリアの低音主題の前半はフランスの作曲家アンドレ・レゾン(1650年以前 - 1719年)が1688年に出版した「オルガン曲集第1巻」に載った「第2旋法によるオルガン・ミサ」中の『パッサカリアによるトリオ』と『シャコンヌによるトリオ』の低音主題と同じである。また、この主題の最初の10音は、ニ短調に移調すれば聖霊降臨後第10主日ミサの聖体拝領唱Acceptabis sacrificium(Liber Usualis p.1023)の冒頭と一致する。124小節にも及ぶ終盤のフーガを第21変奏と見なして、単に「パッサカリア」と呼ぶこともある(以下「パッサカリア」と表記)。
この作品はバッハ自身の手ではなく、兄による筆写譜で伝承されている。当時著名だったオルガン奏者の代表曲に加えて、有名な「小フーガ ト短調」(BWV578)やパッサカリアなどゼバスティアンの初期作品15曲を含むクリストフの筆写譜は、のちにゼバスティアンの甥ヨハン・アンドレアスが所有したため「アンドレアス・バッハ本」と呼ばれている。フィリップ・シュピッタはパッサカリアの成立年代を、ヴァイマル時代の中でも円熟期といえる1714年頃と想定した。しかし20世紀の学者は、同じくクリストフが1705年-1713年に筆写した「メラー手稿譜」と比較検討した結果、パッサカリアを書いたクリストフの筆跡が「メラー手稿譜」後期と酷似することから、シュピッタの予想より早いヴァイマル初期の1710年頃に筆写したものと判断した。
レゾンの主題は4小節だが、バッハは8小節に拡張した。パッサカリアの伝統にのっとり、アウフタクトで始まる3/4拍子の主題をペダルに置いた。
序盤から中盤にかけての168小節にわたる主題提示と20変奏を要約すると、5変奏ごとに4つの節に分けられ、次のようになる。
==構成==

===パッサカリア===

*0.主題提示。おおむね慣例により手鍵盤のユニゾンを付加する。

*1.シンコペーションをともなう和声で装飾する。上昇音形で明るい和音からなる。
*2.同じリズムパターンだが、逆に下降音形、こもる和音からなる。
*3.八分音符の上昇・下降が連続する走句。
*4.八分・十六分・十六分音符の躍動するリズムパターンによる上昇音形の連続。
*5.主題の弱拍が十六分・十六分の跳躍に変形し、第1節を締めくくる。装飾は十六分・十六分・八分音符のロンバルディア・リズム。

*6.再び主題が原型に戻り、第2節に移る。装飾は十六分音符の上昇走句が呼応する。
*7.第1・2変奏と同様、第6変奏とペアを組む。逆に下降走句の呼応。
*8.走句の下に同時進行する副旋律が付随する
*9.主題の弱拍が十六分休符+十六分音符3個に変形。装飾のリズムパターンも同様に倣い、呼応する。
*10.第2節の締めくくり。主題の弱拍に休符が入る。装飾は走句で上昇下降を繰り返す。

*11.第3節では主題がペダルから離れる。ソプラノに移動し、アルトが下降走句で下から装飾する。
*12.主題はソプラノのまま、装飾はアウフタクトで呼応しつつ、半音を多用して和声を重ねる。
*13.主題はアルトへ。十六分音符4個を頭に置いたリズムパターンが呼応する。多くの演奏家はこの変奏から弱音に切り替える。
*14.主題はアルトのままだが、音価を起点とした走句に変形する。これに装飾が走句でエコーを作る。
*15.主題を変形する第3節を締めくくる。主題を上下反転し、これを起点とした上昇アルペジオとなる。

*16.最後の第4節は主題がペダルに戻り、多くの演奏家がフォルテに切り替える。十六分音符が重なり合う和声的な進行。
*17.三連符の走句が呼応しあう、最も華やかな変奏。
*18.主題の弱拍の頭に八分休符が入る。装飾も付点四分+十六分2個の厳しいリズムで和声を連ねる。
*19.三声での和音と走句の応酬
*20.さらに四声となり、重厚な和音と走句を重ねて変奏を終える。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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