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パレスチナの世界遺産 : ウィキペディア日本語版
パレスチナの世界遺産[ぱれすちなのせかいいさん]
パレスチナの世界遺産(パレスチナのせかいいさん)について述べる。パレスチナユネスコ世界遺産リストに2件の文化遺産を登録しているが、いずれも危機にさらされている世界遺産(危機遺産)リストに登録されている。パレスチナのユネスコ加盟や世界遺産条約への参加は、自らの国家としての地位や領土の国際的承認と結びついているとしばしば指摘されており、対立するイスラエルが世界遺産制度の政治利用として批判しているほか、アメリカ合衆国世界遺産基金の分担金拠出を停止するなど、国際的な影響を及ぼしている。以下は第38回世界遺産委員会(2014年)終了時点の情報である。
== 世界遺産条約批准と過去の世界遺産推薦 ==
パレスチナ国際連合では正式な加盟国になれていないが、ユネスコでは2011年10月31日に、総会での採決(賛成107か国、反対14か国、棄権52か国)を経て正式な加盟国として承認された〔「ユネスコ パレスチナ加盟を承認 / 米は反発、拠出金凍結も」『朝日新聞』2011年11月1日朝刊1面〕〔「パレスチナ承認 沸く会場 / ユネスコ加盟 米、封じ込め失敗」『朝日新聞』2011年11月1日朝刊13面〕〔「ユネスコ パレスチナを『加盟国』に / 主要国連機関で初承認」『読売新聞』2011年11月1日朝刊2面〕。そして、世界遺産条約を2011年12月8日に批准した〔Palestine - World Heritage Centre 〕。
パレスチナの場合、ヨルダン川西岸地域の文化財などを世界遺産として登録することで、その物件の所在地の領有権を国際的に承認させるという狙いがあるとされ〔〔「ユネスコ加盟 パレスチナ外交戦術奏功 / 西岸の聖地 世界遺産目指す」『読売新聞』2011年11月1日朝刊7面〕、ユネスコ加盟直後にはパレスチナの高官が早速ベツレヘム聖誕教会を皮切りに、次々と文化遺産を推薦する意向を表明していた〔。
そして、その発言どおり、翌年の3月8日に聖誕教会を中心とする文化遺産「イエス生誕の地 : ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路」を世界遺産の暫定リストに記載した。通常、世界遺産リストへの推薦は毎年2月1日までに行われ、それを踏まえて翌年の半ば頃に開催の世界遺産委員会で審議されるのが普通である。聖誕教会はそれと異なる手続き、すなわち「緊急案件」として推薦された〔対外代表権の都合で、実際の推薦はパレスチナ自治政府ではなくパレスチナ解放機構が行なったという(『読売新聞』2012年6月30日朝刊7面)。〕。緊急案件としての推薦は、過去にバーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群アフガニスタンの世界遺産)、バムとその文化的景観イランの世界遺産)などで適用されたことがある。パレスチナが緊急案件として推薦した理由は、緊急に対処が必要な破損状況が生じていることなどであった。
この推薦を受け、世界遺産委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議 (ICOMOS) は、世界遺産としての顕著な普遍的価値を持つ可能性を認めつつも、「不登録」を勧告した。これは、緊急性を否定し、通常の手続きで再推薦するように求めたものだった〔。聖誕教会と同じ年には、フランスのショーヴェ=ポン・ダルク洞窟も緊急案件として推薦され、こちらも同様の「不登録」勧告を受けており、フランスの場合、勧告を踏まえて取り下げていた(2年後に通常の手続きで正式登録)。パレスチナも取り下げるという事前の予想もあったが、実際にはそのまま第36回世界遺産委員会の審議に臨んだ。その審議では、顕著な普遍的価値があるかどうかは争点とならず、緊急案件として妥当かどうかだけが争点となった〔。委員会では秘密投票に持ち込まれ、賛成13票、反対6票、棄権2票となり〔「聖誕教会が世界遺産 パレスチナ申請受け / 『キリスト生誕の地』米、イスラエル反発」『読売新聞』2012年6月30日朝刊7面〕、規定にある21委員国の有効投票(19票)の3分の2以上を満たしたことで、登録が承認された。なお、投票内容は公表されていない〔『読売新聞』ではアメリカとイスラエルが反対票を投じたとAP通信の孫引きとして報道されたが(2012年6月30日朝刊7面)、これら2国は第36回世界遺産委員会の委員国ではなく(cf. )、登録に関わる投票をできる立場にない。なお、では、『エルサレム・ポスト』が報じたという投票の内訳予測が紹介されているが、当然そこにもアメリカとイスラエルは含まれていない。〕。同時に危機遺産リストにも登録された。
聖誕教会の登録を受け、アメリカの代表は失望を表明し、イスラエルの代表も決定を批判した〔。イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフも声明を発表し、その決定が政治的なものであるとして非難した〔「パレスチナ初 世界遺産登録 / イスラエル反発」『朝日新聞』2012年6月30日夕刊1面〕。パレスチナのユネスコ加盟によって、アメリカは国内法に基づいて、ユネスコの分担金支払いや世界遺産基金への拠出を停止しており、この世界遺産では、そうした予算面の対応についても話し合われた〔。
パレスチナは聖誕教会の登録を受けて、当初の予定通り、それに続く文化遺産群の推薦を目指していく意向を示していた〔。そして、2014年1月30日にエルサレムの南にあるの農業景観を推薦した。パレスチナは、イスラエルが建設を進めているテロ対策名目の分離壁の拡大計画によって、長い伝統を持つバティルの段々畑も破壊される懸念があるとして、緊急案件での審議を求めた〔段々畑の景観、世界遺産 パレスチナ、フェンス計画 産経新聞、2014年6月21日)(2014年7月26日閲覧)〕〔パレスチナの段々畑が世界遺産に イスラエルは分離壁を計画 CNN.co.jp, 2014年6月22日)(2014年7月26日閲覧)〕。これに対するICOMOSの勧告は、顕著な普遍的価値の証明自体が不十分である上に、緊急性が認められないとして「不登録」を勧告するものだった。
パレスチナは2年前と同じように「不登録」勧告を受けても取り下げず、審議に臨んだ。そして、第38回世界遺産委員会ではまたも投票に持ち込まれたが〔、登録が認められ、危機遺産にも同時登録された〔Palestine: Land of Olives and Vines - Cultural Landscape of Southern Jerusalem, Battir, inscribed on World Heritage List and on List of World Heritage in Danger 世界遺産センター、2014年6月20日)(2014年7月26日閲覧)〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「パレスチナの世界遺産」の詳細全文を読む



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