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ボルガル遺跡(ボルガルいせき)は、ヴォルガ川とカマ川の合流点付近でかつて栄えたヴォルガ・ブルガール王国の首都ブルガールの遺跡である。ヴォルガ・ブルガールは中世にイスラームを国教とした国家の中で最北にあたり、ボルガル遺跡は今も地域のムスリムの巡礼地となっている。 ロシア連邦タタールスタン共和国に残るその遺跡は、近隣の小さな町ボルガルとともに、1991年以降タタール語の発音に準じてその名前で呼ばれている。ボルガル遺跡はUNESCOの世界遺産リストへの登録を巡り、世界遺産委員会と諮問機関の判断がそれぞれ二転三転する紆余曲折を経たものの、2014年に「ボルガルの歴史的考古学的遺産群」の名称で正式登録を果たした。 == 歴史 == ヴォルガ川流域にブルガール人が進出した時期については、7世紀半ばから9世紀初頭まで諸説があり、確定していない。初期のヴォルガ・ブルガール王は、夏と冬にそれぞれ居留地を定めており、このうち夏の居留地が西暦925年ごろに都市ブルガール(以下「ブルガール市」と表記)になった。 ヴォルガ・ブルガールは当初ハザール王国に臣従していたが、アッバース朝との関係を深めてイスラームを積極的に受容し、独立を志向するようになった。現代では伝承に基づいて1989年にイスラーム受容1100周年が祝われたものの、ヴォルガ・ブルガールが公式に受容したのは922年のこととされる〔。その年にアッバース朝から派遣された使節の一人がイブン・ファドラーンであり、彼の『報告書』(邦題『ヴォルガ・ブルガール旅行記』)は、ブルガール市が成立する直前、西暦922年の夏営地に3ヶ月滞在したときの記録である。 その後、ブルガール市は東ヨーロッパと中央アジアを結ぶ交易の要衝として栄え、皮革工業をはじめとする手工業も発達した。数多くの物資の集散地であったブルガール市は広大な広場を備え、その周囲に数多くの手工業者の住宅が存在していた。ビリャルに遷都した後もブルガールの交易上の地位は変わらなかったが、モンゴルのヴォルガ・ブルガール侵攻によって1236年に攻囲され、炎上した〔。しかし、1242年にブルガール市がジョチ・ウルス(金帳汗国)の最初の首都とされると、かえって13世紀後半には再興を果たし、サライに遷都した後にもブルガールには各種建造物群が築かれ、それらが(部分的なものも含めて)現在まで伝存している〔。 ジョチ・ウルスが弱体化した後、ブルガールはカザン・ハン国の一部となった。その時期にもやはり交易上の要衝としての地位は保ち、地域のイスラーム信仰の点でも中心的地位を占めた。16世紀以降、ムスリムたちの巡礼地としても機能している。しかし、カザン・ハン国の滅亡に伴い、16世紀にはロシアに編入され、ブルガール市はスパスクと改称された。18世紀にはロシア正教会の修道院が置かれていた時期もある(1712年 - 1770年代)。 1722年に行幸中だったピョートル1世はスパスクの遺跡を視察し、その保存と調査を命じた。これはボルガル遺跡保存のための最初期の命令とされており、ロシア全体で見ても遺跡保存の必要性を為政者が打ち出した例としては最も早い部類に属する〔。その一方、そうした命令にもかかわらず、ロシア領となった16世紀から19世紀までの間、新しい市街のための石切り場として、いくらかの遺跡が破壊されていたことも事実である。 ソビエト連邦成立後に、スパスクはさらにスパスク・タタールスキー(1926年)、さらにクイビシェフ(1935年)と名前を変えた。それから間もなく、いわゆるブルガール論争が加熱し、出自をめぐる関心がボルガル遺跡の調査を後押しした〔。1969年にはタタール自治ソビエト社会主義共和国により国立ボルガル歴史建築博物館保護区が設定され、ボルガル遺跡およびスヴィヤジシクがこれに含まれた〔。なお、1950年代半ばのクイビシェフ・ダムの完成による河川水位上昇の影響を受け、クイビシェフ(ボルガル)の市街地は遺跡から離れた場所に移転した〔。 ソ連時代末期のペレストロイカ以降、タタールスタンでは民族史再考の機運が盛り上がり、ボルガル遺跡はタタール人にとっての「父祖の土地」および地域のイスラームの拠点と位置づけられるようになり、1989年にはイスラーム受容1100周年を記念して「聖ボルガルの集い」が催行された。この催事は後に国の公式行事化し、タタールスタン共和国大統領らも列席し、地域にとってのメッカとなることが志向されている。2010年の参加者は約1万人、2011年のそれは約26,000人となっている。 ソ連崩壊以降、タタールスタン共和国では自国を「多民族・多宗教の共存の場」とアピールしており、その象徴となる遺跡の一つとして、ボルガル遺跡が挙げられている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ボルガル遺跡」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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