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ミラー・ニューロン : ウィキペディア日本語版
ミラーニューロン
ミラーニューロン()は霊長類などの高等動物内で、自ら行動するときと、他の個体が行動するのを見ている状態の、両方で活動電位を発生させる神経細胞である。他の個体の行動を見て、まるで自身が同じ行動をとっているかのように"鏡"のような反応をすることから名付けられた。他人がしていることを見て、我がことのように感じる共感(エンパシー)能力を司っていると考えられている。このようなニューロンは、マカクザルで直接観察され、ヒトやいくつかの鳥類においてその存在が信じられている。ヒトにおいては、前運動野下頭頂葉においてミラーニューロンと一致した脳の活動が観測されている。
ミラーニューロンは、神経科学におけるこの10年で最も重要な発見の1つであると考える研究者も存在する。その中でも、ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン〔V.S. Ramachandran, 〕は模倣が言語獲得において重要な役割を持つと考えている。しかし、その分野での認知度にも関わらず、ミラーニューロンの活動が模倣などの認知活動において、どのような役割を果たすのかという疑問に答える神経モデルや計算モデルは、現時点では存在しない〔。
加えて、1つの神経細胞がある現象を引き起こすとは一般的には考えられていない。むしろ、神経細胞のネットワーク(神経細胞群(neuronal assembly))全体が、ある活動を行う際に活性化していると考えられている。
ミラーニューロンの機能については多くの説がある。このようなニューロンは、他人の行動を理解したり、模倣によって新たな技能を修得する際に重要であるといえるかもしれない。この鏡のようなシステムによって観察した行動をシミュレートすることが、私たちの持つ心の理論の能力に寄与していると考える研究者も存在する〔Christian Keysers and Valeria Gazzola, Progress in Brain Research, 2006, ''''〕〔Michael Arbib, ''The Mirror System Hypothesis. Linking Language to Theory of Mind '', 2005, retrieved 2006-02-17〕。また、ミラーニューロンが言語能力と関連しているとする研究者も存在する〔Hugo Theoret, Alvaro Pascual-Leone, ''Language Acquisition: Do As You Hear '', Current Biology, Vol. 12, No. 21, pp. R736-R737, 2002-10-29〕。さらに、ミラーニューロンの障害が、特に自閉症などの認知障害を引き起こすという研究も存在する〔Oberman LM, Hubbard EM, McCleery JP, Altschuler EL, Ramachandran VS, Pineda JA., ''EEG evidence for mirror neuron dysfunction in autism spectral disorders '', Brain Res Cogn Brain Res.; 24(2):190-8, 2005-06〕〔Mirella Dapretto, ''Understanding emotions in others: mirror neuron dysfunction in children with autism spectrum disorders'', Nature Neuroscience, Vol. 9, No. 1, pp. 28-30, 2006-01〕。しかし、ミラーニューロンの障害と自閉症との関係は憶測の域を出ておらず、ミラーニューロンが自閉症の持つ重要な特徴の多くと関連しているとは考えにくい〔


==ミラーニューロンの発見 ==

ミラーニューロンはイタリアにあるパルマ大学のジャコーモ・リッツォラッティ(Giacomo Rizzolatti)らによって、1996年に発見された。彼らは手の運動、例えば対象物をつかんだり操作したりする行動に特化した神経細胞を研究するために、マカクザルの下前頭皮質に電極を設置した。この実験において、彼らはマカクザルがエサを取ろうとする際の、特定の動きに関わる神経細胞の活動を記録していた〔Giacomo Rizzolatti et al. (1996) ''Premotor cortex and the recognition of motor actions'', Cognitive Brain Research 3 131-141〕。その際に彼らは、実験者がエサを拾い上げた時に、マカクザル自身がエサを取るときと同様の活動を示すニューロンを発見した。その後、さらなる実験によってサルの下前頭皮質と下頭頂皮質の約10%のニューロンが、この'鏡'の能力を持ち、自身の手の動きと観察した動きの両方で同様の反応を示すことが分かった。
この研究が論文として発表され〔Gallese et al, ''Action recognition in the premotor cortex'', Brain, 1996〕、さらに追試による検証が行われ〔Fogassi et al, ''Parietal Lobe: From Action Organization to Intention Understanding'', Science, 2005〕ミラーニューロンは脳における下前頭皮質と下頭頂皮質の両方に存在することが分かった。最近になって、機能的核磁気共鳴画像法 (fMRI)、経頭蓋磁気刺激法(TMS)、脳波計(EEG)や行動実験によって、実際の行動とその観察との両方に反応するシステムの存在がヒトにおいても強く支持されている。また、そのような脳領域とマカクザルで発見された領域には類似が見られた〔Rizzolatti G., Craighero L., ''The mirror-neuron system '', Annual Review of Neuroscience. 2004;27:169-92〕。
より最近になって、カイザース(Keysers)らはヒトとサルの両方で、この鏡のようなシステムが行動の音にも反応することを示した〔 Kohler et al., Science, 2002 ''''〕〔 Gazzola et al., Current Biology, 2006 ''''〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Mirror neuron 」があります。



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