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薬物依存症[やくぶついそんしょう, やくぶついぞんしょう]

薬物依存症(やくぶついそんしょう、やくぶついぞんしょう、)とは、同量の薬物を摂取した場合の薬物の効果が薄れる薬物耐性が形成され、薬物に対する渇望が存在し、薬物の摂取量が減った離脱時に離脱症状を呈するといったいくつかの診断基準を満たした精神疾患である。以上のような身体症状を示す身体的依存を含まない場合は、単に薬物乱用の状態である。しかしながら、ともに生活の支障や身体への害を認識しているにもかかわらず、薬物使用の抑制が困難になっている病態である。薬物依存症は、すべての精神疾患の頻度の高い要因である〔。
国際的に「刑罰ではなく治療へ」というのが主流であるが、日本では精神医療の専門家でさえ厳罰化を唱えることがあり〔、日本では依存症の治療施設が少なく〔、鎮静剤による依存が増加している〔。1度の使用で依存が形成されることはなく、依存は継続的に使用された場合に形成される。依存症者は本来、意思が弱い・ろくでなしということではなく、治療が必要な病人である。道徳教育や、刑罰が有効であることは示されていない。日本での覚醒剤乱用者は、高い再犯率を維持していることから、刑罰が依存症に効果を上げていないという指摘がある〔。ヤキを入れるといった行為も、すでに依存状態に陥り自信を失っている依存症者自身のさらなる失望につながり、自傷行為的な自暴自棄な薬物使用を誘うとされる。周囲に必要とされるのは、一貫して、敬意を保ち、裁かない態度である。
依存の対象となる薬物は、精神に活性を及ぼす向精神薬が多い。1961年の麻薬に関する単一条約からはじまる国際条約において、医療用途がないスケジュールIと、医療用途があり乱用の危険度によりスケジュールII以下で分類される物質が乱用の危険性がある物質であり、規制の対象となる。その中に身体的依存を示す物質と示さない物質とが含まれる。各国は国際条約に批准しているため、アメリカでは規制物質法、イギリスでは1971年薬物乱用法、日本では麻薬及び向精神薬取締法をはじめとした薬物四法で規制されている。そのほかに例外化されているタバコアルコールは、最も公衆衛生上の被害をもたらしている薬物依存症の原因となる物質である。
薬物依存症の症状としては、渇望のような精神的依存と、離脱症状を伴う身体的依存がある。薬物からの離脱において、アルコールや睡眠薬からの離脱のように離脱症状が致命的となる可能性があるため、場合により医学的監視が必要な薬物と、タバコの禁煙のように比較的安全なため医学的監視が必要でないものとがある。科学的根拠に基づけば、依存性薬物からの解毒(離脱)には急速な断薬は推奨されず、離脱を制御しやすいほかの交叉耐性を持つ同種の薬物に置き換えた後に、徐々に漸減することが多い。
1980年代にはLSDのような、身体的依存や渇望を起こさず、単に意識を変容させるための好奇心から乱用される薬物についての議論が持ち上がり、嗜癖()という言葉で区別されたが、依存と嗜癖の用語は一般的には混同される。#依存性節で示されるが、一般的に幻覚剤には強い依存性はない。さらに幻覚剤は他の薬物の依存症の治療に良好な結果が見られるものもある。
== 依存 ==
薬物依存症は、意志や人格に問題があるというより、依存に陥りやすい脳内麻薬分泌を正常に制御できない状況が引き起こした「病気」である。「まだ大丈夫」と問題性を否認しているうちに、肉体・精神・実生活を徐々に破壊していく。家族などの周囲をも巻きこみながら進行し、社会生活や生命の破滅にいたることも稀でない。
また、精神疾患の強迫性障害に伴う気分変調を紛らわすという目的で薬物に依存し、アルコール依存症などに陥る場合もある。
それだけでなく、ニコチンに対する依存症である喫煙のように、依存者自身やその周囲にいる他者へ受動喫煙として悪影響を与えることで、生活習慣病や重大な死因、気管支の疾患や胎児へ影響し、健康に対する影響が社会的に甚大である薬物もある。アルコールへの依存も、未成年者の脳の発育や胎児、生活習慣病や肝臓の疾患に影響する。これらを日本での社会的な費用に換算すると、喫煙は社会全体で約4兆円の損失、アルコールは社会全体で医療費や収入減などを含め約6兆6千億円になるとされる〔健康日本21 〕。
2008年には、日本の薬物の治療施設において鎮静剤の患者第2位となり急増しており、医療観察法によって入院となった者でも入院前に依存・乱用が気付かれていた者はその3分の1である。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「薬物依存症」の詳細全文を読む

英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Substance dependence 」があります。



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