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『ユダヤ人と彼らの嘘について』(ユダヤじんとかれらのうそについて、、現代ドイツ語では)は、ドイツの宗教改革家・マルティン・ルターが1543年に上梓した反セム主義の論文。同論文の中でルターは、ユダヤ人を「下劣な偶像崇拝者、つまり神の子ではなく己が家系や割礼を誇りにし、法を汚らわしい物と見なしている連中」と言い切り〔Luther , Martin. ''On the Jews and Their Lies'', 154, 167, 229, cited in Michael, Robert. ''Holy Hatred: Christianity, Antisemitism, and the Holocaust''. New York: Palgrave Macmillan, 2006, p. 111.〕、シナゴーグに至っては「救い難い邪悪な売春婦」とまで形容している〔Michael, Robert. ''Holy Hatred: Christianity, Antisemitism, and the Holocaust''. New York: Palgrave Macmillan, 2006, p. 112.〕。本論文の最初の十節では、ユダヤ人並びにユダヤ教に係る自らの見解や、クリスチャン及びキリスト教との比較について、かなりの分量を割いており、それ以後はクリスチャンに対し、以下の7項目を実践するよう説いている〔Luther, Martin. ''On the Jews and Their Lies,'' Trans. Martin H. Bertram, in ''Luther's Works''. (Philadelphia: Fortress Press, 1971).〕。 # シナゴーグやイェシーバーを、跡形残らず徹底的に焼き払うべし # 更にユダヤ人の所有する家をも打ち壊し、所有者を田舎に住まわせるべし # 宗教書を取り上げるべし # ラビの伝道を禁じ、従わないようであれば処刑すべし # ユダヤ人を撲滅するための方途を穏便に実行すべし # 高利貸しを禁じ、金銀を悉く没収し、保管すべし # ユダヤ人を農奴として働かせるべし 第二次世界大戦以降、学問の分野で支配的となった見解〔Wallmann, Johannes. "The Reception of Luther's Writings on the Jews from the Reformation to the End of the 19th Century", ''Lutheran Quarterly'', n.s. 1 (Spring 1987) 1:72-97等〕は、本論文が宗教改革からホロコーストまでの数世紀において、ユダヤ人に対するドイツ人の態度に少なからぬ影響を与えた、というものであった。しかし、この見解に対して神学者のヨハネス・ヴォルマンは、ドイツ国内では影響力を持ち得ず、現に18世紀から19世紀までの間、見向きもされなかったと指摘〔Wallmann, Johannes. "The Reception of Luther's Writings on the Jews from the Reformation to the End of the 19th Century", ''Lutheran Quarterly'', n.s. 1, Spring 1987, 1:72-97.〕。また、ハンス・ヒレルブラントも、国内の反セム主義の展開におけるルターの役割に焦点を当てれば、却って「ドイツ史というより大きな特色」を過小評価することになるとしている〔Hillerbrand, Hans J. "Martin Luther," Encyclopædia Britannica, 2007.〕。 なお1980年代以降、ルター派教会の中には、ユダヤ人差別を煽動するルターの書物を、公式に非難するものも存在している。とりわけ水晶の夜事件から60年が経過した1998年11月、バイエルン州のルター派教会が「マルティン・ルターの作品や伝統の恩恵とともに、彼の反ユダヤ的な発言を深く受け止め、神学上に果たした役割を認識し、それらがどのような結果を齎したか、ということを知ることは、ルター派教会にとって避けて通れない問題である。ルターの神学理論における、反ユダヤ主義の如何なる言明からも、距離を置かなければならない」との声明を発表した〔"Christians and Jews: A Declaration of the Lutheran Church of Bavaria" , November 24, 1998, also printed in ''Freiburger Rundbrief'', 6:3 (1999), pp.191-197. For other statements from Lutheran bodies, see: *"Q&A: Luther's Anti-Semitism" , Lutheran Church - Missouri Synod; *"Declaration of the Evangelical Lutheran Church in America to the Jewish Community ", Evangelical Lutheran Church in America, April 18, 1994; *"Statement by the Evangelical Lutheran Church in Canada to the Jewish Communities in Canada" , Evangelical Lutheran Church in Canada, July 12–16, 1995; *"Time to Turn" , The Evangelical Churches in Austria and the Jews. Declaration of the General Synod of the Evangelical Church A.B. and H.B., October 28, 1998.〕。 == ルターの見解の変遷 == ルターの生涯において、ユダヤ人に対する態度は様々な形を取っている。前半生、就中1537年頃までは、ユダヤ人をキリスト教に改宗したがっていたが、後半生、とりわけ晩年の9年間はユダヤ人を非難し、迫害を促していたという〔"Luther, Martin" , ''JewishEncyclopedia.com''. See also the note ''supra'' referring to Robert Michael.〕。以下、ルターのユダヤ人観の変遷を見てゆく。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ユダヤ人と彼らの嘘について」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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