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ロンドン地下鉄S7・S8形電車は2010年から営業運転に投入されているロンドン地下鉄半地表各線〔英:Sub-surface lines。サークル線、ハマースミス&シティー線、ディストリクト線、メトロポリタン線のロンドン地下鉄では大型の車両を使う4線を指す。〕用の電車である。ロンドン地下鉄の2種類ある車両サイズのうち、大きいほうのサイズの車両群に属する。S7形とS8形では編成両数、座席レイアウトに差があるが、両者を総称してS形電車と呼ぶ〔こともある。ロンドン地下鉄で初めて車両間が貫通幌でつながれるとともに、冷房装置を装備したことが特筆され、総数1,395両の発注は単一契約としては英国の鉄道史上最大のものである〔。 ==概要== S形電車はボンバルディア・トランスポーテーションのモヴィアと呼ばれる地下鉄用車両シリーズに属し、全車が同社で製造される。ボンバルディアは信号システムの更新、就役後の車両保守を一括して受注し〔、メトロポリタン線用A60・A62形電車(A形電車)、サークル、ハマースミス&シティー、ディストリクトの各線で運用されているC69・C77形電車(C形電車)、ディストリクト線用D78形電車(D形電車)全177編成を、S7形電車7両133編成、S8形電車8両58編成、合計191編成1395両で2015年までに置き換える計画となっている。ロンドン交通局はS形電車投入の費用を15億ポンドと発表している〔。半地表各線で運用されている電車は編成両数、車両全長、扉配置、座席レイアウトなどがばらばらで〔A形電車が16 m級8両編成両開き4扉クロスシート、C形電車が電動車16 m級、付随車15 m級6両編成両開き4扉ロングシート、D形電車が18 m級6両編成、片開き4扉セミクロスシート。〕、車両の融通ができないなどの問題があり、これを共通設計の電車で置き換えることで運用の自由度を高め、保守の効率化を図ることも投入の目的とされている〔。S8形電車はメトロポリタン線用で、最長一時間を超える乗車時間に配慮して8両編成の一部にボックスシートを備える一方、都心部の路線を中心に運用されるS7形電車はプラットホーム有効長の制約から7両編成となり、短時間の乗車が多いと想定されることから全席ロングシートとなった。 ロンドン地下鉄の半地表線用電車の形式名がその電車が運用される路線にちなんだものとされる伝統に従い、形式名の''S''は''sub-surface''(半地表)の頭文字で、半地表各線で運用される車両であることを示している〔同様に、 A 形電車は、メトロポリタン線アマーシャム(Amersham)電化にちなみ、C 形電車はサークル線(Circle line)で主に運用される車両であることを、D 形電車はディストリクト線(District line)で運用される電車であることを示している。〕。1930年代にもS形電車と呼ばれていた車両が存在し、2010年投入開始のS形電車は2代目となる。 半地表路線ではトンネル内でも車両とトンネル内壁の隙間が狭いシールドトンネル各線〔英:Deep-level tube lines。シールドトンネルで構築された半地表路線以外の路線を指す。 〕と異なって冷房使用時の排熱が拡散できる〔こと、半地表各線の地下区間は全体の1/3程度であることから同時期に製造されたヴィクトリア線用2009形電車が非冷房とされた一方、S形電車には冷房装置が装備された〔〔。回生ブレーキの使用により使用電力が20 %削減できる〔ことに加え、加速性能も従来車に対して向上しているが、最高速度はA形電車より12 km/h低い100 km/hに抑えられている〔A形電車もS形電車に置き換えが始まったころのダイヤでは最高速度は100km/hとなっていたうえ、S形電車の最高速度はC形電車、D形電車より向上している。〕。従来車と平行して運用される間は信号の制約と、新型車の列車が旧型車の列車に追いついてしまうことを防ぐため、性能は旧型車並みに抑えられている。半地表各線の電源電圧は空調や全軸駆動による消費電力の増加に対応し、630Vから750Vに昇圧される予定である。昇圧により、車両性能がさらに向上するとともに、回生ブレーキの効率が向上すると想定されている〔。 本文中の車両形式略号などはロンドン地下鉄の車両形式および車両番号の付与方法を参照のこと。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ロンドン地下鉄S7・S8形電車」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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